山梨県富士河口湖町の富士本栖湖リゾートで、四月下旬から「富士芝桜まつり」が開催される。芝桜と富士山とが織り成す景観が人気を集め、多くの観光客が訪れる。風薫る五月の初め、「富士芝桜まつり」を訪ねた。
富士芝桜まつり
富士芝桜まつり
山梨県富士河口湖町の富士本栖湖リゾートを会場に開催される「富士芝桜まつり」は2008年(平成20年)から始まったものだそうだ。歴史はまだ浅いが、その見事さが評判を呼んで知名度は高い。会場を埋め尽くすように咲き誇る芝桜は約80万株、関東最大級の規模だという。会場からは富士山の姿が間近に見え、芝桜と富士山とが織り成す景観を楽しめるとあって観光客の人気を集めている。

「富士芝桜まつり」は例年四月の下旬から五月末頃までの期間で開催され、五月の上旬から中旬にかけて見頃を迎えるようだ。今回(2014年)、五月初めの連休に訪れたのだが、残念なことに芝桜はまだ三分咲きという状況だった。二月の大雪や四月に気温の低い日が続いたことの影響で開花が遅れたものらしい。三分咲きと言うことで“会場を埋め尽くすような”芝桜の景観を見ることはかなわなかったのだが、それでも区画によっては芝桜が咲き揃っているところもあり、天候にも恵まれ、富士山を背景にして芝桜を見るという美しい景観は充分に堪能することができた。
富士芝桜まつり
富士芝桜まつり
富士芝桜まつり
「富士芝桜まつり」会場は敷地面積約2.4haだそうだ。敷地内には幾何学的な曲線を描いて芝桜が植え込まれ、それを一望する展望所も設けられている。芝桜が描く模様はこの地域の龍神伝説に因んで、龍神を象ったものだそうだ。芝桜が咲き誇る横には「龍神の池」という池があり、景観にアクセントと潤いを与えている。緩やかな傾斜を伴った敷地は西側が少しばかり高くなっており、西端部に立てば一面の芝桜が眼前に広がり、その向こうに池が横たわる。展望所に上がればさらに開放感のある景観が広がる。

会場内から東へと視線を向ければ富士山の姿を望める。特に展望所からの景観は見事で、芝桜畑を眼下に一望し、その向こうに富士山が聳える。芝桜越しに富士山を望む、この風景は「富士芝桜まつり」の象徴と言ってよく、ポスターや観光案内パンフレットなどで多く目にするが、やはり実際に目の当たりにするとその素晴らしさに息をのむ。会場敷地の起伏と方角を考慮して巧みに設計された賜物だろう。今回訪れたときは幸い天候にも恵まれ、はっきりと富士山の姿を見ることができ、その美しい景観を充分に堪能することができた。芝桜が満開のときであれば、その感動もさらに増すのに違いない。
富士芝桜まつり
富士芝桜まつり 富士芝桜まつり
会場周辺は富士山麓の自然豊かなところで、視界の中に高いビルなどの人工物が入らないのもいい。西側にも山地が迫り、その丘を背景に見る芝桜も美しい。芝桜畑の中を縫うように設けられた遊歩道を辿ればさまざまに表情を変える景観を楽しむことができ、なかなか飽きない。西側の展望所前には富士山を象った小山が造られ、その表面にも芝桜が植えられている。その小山と本物の富士山を重ねて眺めるのも楽しい。「龍神の池」の岸辺を辿って池越しに見る芝桜もいい。通路脇にはムスカリを植え込んだ花壇もあり、芝桜以外の花々も愉しむことができる。
富士芝桜まつり
富士芝桜まつり
会場内、北西側の一角には多数の露店が設営され、軽食などを販売している。他にも「展望カフェ」や「展望足湯」といった施設も用意されており、まさに「おまつり」気分で楽しむことができる。一般車駐車場は会場の南側に設けられており、少しばかり離れているが、会場と駐車場を繋ぐ林の中の小径脇ではコテンバザクラやフジザクラといった桜を見ることができ、方角によっては正面に富士山の姿を望めて退屈しない。

芝桜が満開を迎えた時期の、美しい富士山の姿を望める天候の日を選んで訪れるのが「富士芝桜まつり」のお勧めだが、遠方から訪れる場合はなかなかうまくいかないことも少なくない。特に富士山の姿は天候次第、晴れていても山頂が雲に隠れていたり、天候が急変したり、“運任せ”のような側面もあるだろう。今回、芝桜は三分咲きだったが、見事な富士山の姿を見ることができたのは幸運だったかもしれない。
参考情報
交通
富士芝桜まつり会場は本栖湖の南東側に位置し、鉄道の駅からはかなり離れている。電車で訪れる場合は富士急行線河口湖駅やJRの新富士駅や富士宮駅から「芝桜ライナー」と呼ばれる直通バスを利用するのが便利だ。詳しくは富士芝桜まつり公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

車で訪れる場合は中央自動車道河口湖ICから国道139号を西進、あるいは東名高速道路富士IC、新東名高速道路新富士ICから国道139号を北上するのがわかりやすい。中央自動車道からは20km超、東名高速道路からは30km超というところだ。芝桜が見頃の時期の休日にはこれらのルートは大変に混雑し、渋滞が免れないようだ。主催者側でも公共の交通機関の利用を呼びかけている。

かなり広い駐車場が用意されているが、見頃の時期の休日にはそれでも足りなくなることがあるようだ。周辺に臨時駐車場が設けられ、シャトルバスが運行するとのことだ。現地の案内に従えばいいだろう。

飲食
会場にはさまざまな露店が出ており、軽食などを販売しているから、簡単に食事を済ますこともできなくはない。会場内にはシートを敷いてお弁当を広げるスペースは設けられていない。

本格的な食事を楽しみたいのなら富士芝桜まつり会場を出て、場所を変えるのがいいが、周辺にはほとんど飲食店がない。本栖湖畔やさらに河口湖周辺へ移動して飲食店を探すのが賢明だろう。あるいは南へ、道の駅朝霧高原へと移動するのも選択肢のひとつだ。道の駅には「あさぎりフードパーク」という施設が隣接しており、施設内には朝霧乳業の工房やビュッフェレストランなどがある。

周辺
富士芝桜まつり会場から国道139号を3kmほど北上すれば本栖湖だ。観光地ではあるが、あまり訪れる人は多くないようで、静かな湖畔散策が楽しめる。車で訪れたなら本栖湖西岸へと移動し、本栖湖越しの富士山も堪能しておきたい。

本栖湖から国道139号を数km北上すれば精進湖だ。さらに河口湖方面へと辿れば沿道に風穴や氷穴などの観光名所が点在している。

富士芝桜まつり会場から国道139号を4kmほど南下すると道の駅朝霧高原がある。高原の風景の中で富士山の姿を楽しむことができる。

道の駅朝霧公園の辺りから南へ、国道139号は朝霧高原の美しい風景の中を辿る。快適なドライヴが楽しめる。途中には駐車場も設けられているので、ひととき車を停めて高原の風景を楽しむといい。
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