横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市緑区北八朔町
北八朔公園
Visited in April 2001
北八朔公園
横浜市緑区の中央部北端、青葉区との区境の東名高速道路が通るあたりに北八朔公園がある。名の通り、緑区北八朔町に位置する。北八朔町は鶴見川流域の農耕地帯と緑豊かな丘陵が広がるのどかなところだったが、近年になって北側の青葉区に東名青葉インターもできて雰囲気はかなり変わってきたような気がする。北八朔町の北西側には東急田園都市線の青葉台駅を中心とした住宅街が広がっているが、その範囲も徐々に西八朔町や北八朔町にまで延びてきているようにも思える。そうした状況の中にこうした公園が整備されるのも、いわば当然の成り行きなのかもしれない。

北八朔公園
北八朔町は田園都市線沿線の住宅街に近かったにもかかわらず、東名高速道路によって隔てられていたためか、昔ながらの里山と谷戸の自然が多く残っていた地域だった。北八朔公園の谷戸もそうした場所のひとつで、しかし公園として整備される以前は放置されて荒れ果てていたのだという。1998年(平成10年)に緑区役所からの呼びかけで北八朔公園愛護会準備会が発足、自然環境の保全活動や整備などを経て、1999年(平成11年)の春に里山と谷戸の景観を残す公園として開園している。面積は7.7ヘクタールほどで決して広大な敷地というわけではないが、雑木林の丘に囲まれた谷戸の風情はどこか懐かしく心落ち着くものだ。公園の整備管理は地元有志による北八朔公園愛護会によって行われているという。園内は荒れた印象はまったくなく、愛護会の人々の公園に対する愛情を感じる。
道路に面した公園入口から園内に入ると広場が出迎えてくれる。疎らな木立とベンチなどを配した広場で、のんびりとした開放感が魅力だ。広場の横は駐車場で、39台分の駐車スペースが用意されている。駐車場は有料で、最初の1時間が200円、以後30分毎に100円の料金が必要だ。

北八朔公園
駐車場と広場の間を遊歩道が公園奥へ向かって延びる。駐車場脇の小さな池を左に見ながら遊歩道を進むと、やがて両脇に雑木林が迫り、眼前には昔ながらの里山を彷彿とさせる光景が広がる。遊歩道右手、雑木林の足下には池があるが、この池は公園として整備された時に併せて整備されたもののようだ。池の上流部分には湿地とせせらぎが続くが、訪れた時には水の流れをみることはできなかった。

左に逸れる遊歩道があり、それを辿ると公園間近に迫った住宅街に抜け出てしまう。その遊歩道の傍らは見事な竹林だ。季節柄筍が育っているが、やはりここにも筍掘り禁止の旨の注意書きがあるところなどは何とも情けないという気もする。

北八朔公園
竹林から戻ってさらに奥に進むとやがて谷戸は終わり、その向こうには造成された住宅街の景色が迫っている。引き返して途中から公園の北側部分を占める雑木林の中に歩を進める。雑木林はよく残されており、昔を偲ばせる小径の風情がいい。しかし残念なことにこの雑木林のすぐ北側には東名高速道路が通っており、しかも港北パーキングエリアが位置していて、低くくぐもったような車の騒音が絶えず響いている。雑木林の中の小径を北へ辿ると東名高速のすぐ傍らに抜け出て、東名高速を越える狭い橋の向こうに青葉区千草台の住宅街が広がっている。雑木林の小径を戻って東に辿ると、木立の間に池が見え隠れし、やがて池の傍ら、広場の端部分へと降りる。
北八朔公園
広場のすぐ北側には緑が丘中学校があり、訪れた日にも生徒たちが公園内でスケッチをする姿があった。こうして日常的に公園を利用しているのだろう。中学校の生徒たちはここが公園として整備される時にもボランティアとして手伝ったようだ。

特筆するほど規模の大きな公園ではなく、間近まで住宅街の迫る立地では少々興をそがれるところもあって、「里山の自然」といったものを期待して遠方から訪れるような性格の公園ではないだろう。しかしそれでも園内は雑木林に囲まれた谷戸の風情は充分に保っており、ひととき喧噪を忘れてゆったりとした散策を楽しむことができる。

この地域に暮らす人々にとってはきっと大切な場所であることだろう。公園としての整備からその維持に至る経緯は、半ば見捨てられ荒れ果てていたこの地を誰もが身近に自然に触れることのできる公園として蘇生させることであったと言うこともできるかもしれない。やがて周囲はさらに開発が進み、真新しい住宅が増えてゆくのだろうか。その時、この公園の存在はさらに貴重なものになるに違いない。
北八朔公園