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八王子市子安町
再開発直前の八王子駅南口
Visited in November 2007
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
再開発直前の八王子駅南口
八王子駅南口の再開発工事がいよいよ着工されるようだ。2007年11月中旬から工事が始まるというので、再開発前の風景を写真に残しておきたいと思い、工事着工直前の11月上旬、八王子駅南口付近を歩いた。
再開発直前の八王子駅南口
八王子駅南口はあまり高いビルも無く、どことなく地方の町の主要駅とでも言うような雰囲気が漂っている。駅前にはバスターミナルを兼ねたロータリーがあり、周辺には飲食店なども数多く建ち並んでいるが、喧噪感はあまり無く、ちょっとのんびりとした空気感がある。

そのロータリーの西側に、フェンスに囲まれて空き地がある。空き地のほぼ真ん中に印象的に樹木が枝を広げている。空き地は、再開発のために確保した用地なのだろう。

その空き地に「建築計画のお知らせ」の標識が立てられたのは2007年(平成19年)夏のことだ。「建築計画のお知らせ」は、この「空き地」に建てられるビルの建築計画の概要を報せるものだ。

それに依れば建築物の名称は「八王子駅南口地区第一種市街地再開発事業施設建築物」というらしい。地上41階、地下2階、塔屋2階からなる建物は最高高さ157.5mという高層のもので、共同住宅、店舗、事務所、ホール、駐車場に使われると記されている。いわゆる「複合ビル」だ。

駅側にはビルの完成予想図を描いたパネルが設置されており、それに依れば高層ビルを中心に種々の建物が駅南口に建てられ、駅からはベデストリアンデッキで繋がれる予定のようだ。それに併せてロータリーも一新される予定のようで、すべてが完成すれば八王子駅南口は一変し、今の姿を思い出すことも難しくなるだろう。

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「空き地」の周辺、特に南側の「南大通り」に面した辺りにはまだ住宅が残っている。これも取り壊される予定のようだ。廃屋になって久しい建物もあるが、つい最近までこれらの民家のいくつかには住む人があったように記憶している。

しかしその人たちもすでに退去されたらしく、今ではすべてが空き家のようだ。空き家になって時を経た建物は蔦が絡み、金属部分が錆び、木造の部分は腐り、時の流れが染み込むように朽ちてゆく。このような廃屋の姿にはなぜかフォトジェニックなものを感じてついカメラを向けてしまう。世の中には廃墟や廃屋を訪ねることを趣味にする人もあるようだが、それもわかる気がする。

再開発直前の八王子駅南口
「空き地」と線路の間には、あまり広い道ではないが、「野猿街道」が通っており、その道脇にはコインパーキングが並んでいたのだが、これもすでに撤去されている。「空き地」の一部を利用して設けられていた駐輪場もすでに無い。着々と再開発工事着工の準備が進んでいるようだ。

ロータリーにはバスターミナルがあり、めじろ台駅や西八王子駅、南大沢駅方面へのバスが発着している。再開発工事が終わればバスターミナルの形も変わるのだろう。ロータリーの一部は駐輪場として使われ、自転車が雑然と置かれているが、これもすっかり変わってしまうだろう。

八王子駅南口の再開発事業がいつ頃から計画されていたものか、詳しくは知らない。駅前の「空き地」はずいぶんと昔からあったように記憶しているから、再開発事業の計画もかなり以前からあったのだろう。

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古い町並みが姿を消し、新しい姿に生まれ変わることには賛否があるに違いない。闇雲に新しいものに変えてゆくだけでは寂しいが、古いままで衰退してゆくのも寂しい。街の再開発というものには、ひとつの「思想」のようなものが重要だという気がする。八王子駅南口の再開発には「思想」があるだろうか。
駅前の「空き地」も、周囲に残る廃屋も、ロータリー横で営業を続けていた八百屋や菓子店も、実物を見ることができるのはおそらくこれで最後だろう。感傷というほどの感慨はないが、今のこの風景をせめて記憶にとどめておきたいと思いながら、再開発工事着工直前の八王子駅南口を後にしたのだった。
【追記】
八王子駅南口の再開発工事は2007年11月下旬から始まり、2010年12月初めに終了した。駅前にはペデストリアンデッキが設けられ、整然として現代的な風景に一変した。かつて「空き地」だった部分には「サザンスカイタワー八王子」が聳え立っている。
再開発直前の八王子駅南口