埼玉県ときがわ町の東部に本郷という地区がある。都幾川左岸に広がる長閑な田園地帯だ。都幾川河岸には「ときがわ水辺の道」という散策ルートが整備されている。夏の暑さを感じるようになった六月末、ときがわ町本郷を訪ねた。
初夏の本郷
埼玉県ときがわ町本郷は町域の東部、JR八高線明覚駅の北西側の都幾川左岸に位置している。北側の丘陵地と南の都幾川に挟まれた立地で、緑濃い風景の中に家々が点在する、長閑な田園地帯だ。特に都幾川河岸には水田が広がり、美しい田園風景を見せる。都幾川河岸には「ときがわ水辺の道」という散策ルートが整備されており、都幾川の流れを間近に感じながらの散策が楽しめる。田園散歩の好きな人にはとても魅力的なところだ。
初夏の本郷
JR八高線明覚駅から北へ進み、交差点で県道172号を渡り、さらに進んで北西の方角へ向かっていけば、やがて川北橋で都幾川を渡る。川北橋を渡った先は本郷地区だ。

川北橋の袂に小公園のようなスペースが設けられ、四阿も建っている。「ときがわ水辺の道」整備の一環で設置された休憩所のようだ。
初夏の本郷
道はそのまま本郷地区の中を西へ辿り、1.4kmほど進んだところで県道30号飯能寄居線と交差する。交差点はちょうど県道30号が都幾川を跨ぐ本田橋の北側の袂だ。まずはこの辺りまで、この道を歩いて行こう。

沿道には長閑な田園風景が広がっている。丘陵地の裾に家々が点在する風景や、水田に囲まれるようにして建つ民家の姿がたいへんに美しい。そんな風景を楽しみながら西へ辿る。
初夏の本郷
家々の建ち並ぶ集落の中を抜けて、さらに進んでいけばやがて目の前に交差点が現れる。県道30号飯能寄居線との交差点だ。その交差点の手前に、南へ折れる道がある。少し下り坂になっている。降りてゆくと都幾川の河岸に出た。目の前に県道30号が都幾川を渡る本田橋が見えている。都幾川には小さな堰が設けられている。堰を流れ落ちる水の様子が涼しげだ。ここから都幾川の河岸に沿って下流側へと辿っていこう。
初夏の本郷
都幾川の北側の道を下流側に向かう。路面に「ときがわ水辺の道」のルート上であることを示すサインがある。この辺りでは道は河岸を辿るわけではないようで、道と都幾川の間には民家や事業所などが点在している。進んでいくと道の北側に水田の風景が広がる。水田は田植えを終えて、若い稲が根付いて風に揺れている。その上に初夏の空が広がっている。美しい風景だ。
初夏の本郷
少し進むと、河岸に沿った道を歩くことができるようになった。要するに“堤防道”だが、あまり“堤防”然としていなのがいい。道は舗装されていて歩きやすく、道脇の木々が茂って木陰を落としてくれるのも嬉しい。木々の間には都幾川の流れが見え隠れし、水音も聞こえてくる。
初夏の本郷
木々の間に見える都幾川の川面に、飛び石があるのに気付く。河岸の道から降りていけるように石段が設けられている。この飛び石も「ときがわ水辺の道」の整備に伴って設置されたものだろう。飛び石を渡れば都幾川の流れを間近に感じられる。暑さを感じる季節、水辺の涼しさが嬉しい。飛び石の上から見る都幾川の流れも美しい。
初夏の本郷
飛び石を楽しんだ後は、再び河岸の道を下流側に辿る。道脇にはヤブカンゾウが咲いている。鮮やかなオレンジ色が緑の風景にアクセントを添える。飛び石から300m近く辿ったところに距離標が設けられている。川北橋から1140mだそうだ。

この辺りは都幾川が緩やかに蛇行するところで、その蛇行の弧の中に水田が広がっている。河岸の道を離れて、少しその風景の中を歩いてみよう。
初夏の本郷
大きく蛇行して弧を描く都幾川の流れに抱かれるようにして水田が横たわっている。水田は田植えを終えて青々と若い稲が育っている。北に目を向ければ丘陵が連なって初夏の空に稜線が浮かび、丘陵の裾に点在する民家の風景も長閑な風情を漂わせている。美しい田園風景だ。水田の中の農道を辿れば、風景はさまざまな表情を見せてくれて飽きることがない。田園散歩好きにとっては至福の時間である。
初夏の本郷
「川北橋より1140m」の距離標から100m近く下流側、岡前橋という小さな橋が架かっている。人道橋というわけではなさそうだが、幅員は狭い。渡った先は都幾川右岸の田中地区、ここも蛇行する都幾川の弧の内側に水田が築かれている。木々に囲まれてひっそりと“隠されている”ような印象が素敵だ。その立地のためか、耕地整理が行われていないようで、不規則な形状をした水田が並ぶ様子も美しい。
初夏の本郷
川北橋に戻ってまた都幾川の左岸を下流側へ辿ろう。大きく弧を描いて北へ蛇行していた川の流れは、今度は南へ向かって弧を描く。この辺りから左岸側は護岸工事が施されている。流れが大きく向きを変えるところだから、護岸工事が必要なのだろう。

やがて「川北橋より770m」の距離標を過ぎる。河岸には美しい田園風景が続いている。右岸側、川向こうには田中地区の水田が見え隠れする。その風景も美しい。
初夏の本郷
家々が集まって小集落を成しているところがあった。南北に道路が抜けており、南は市川橋で都幾川を跨いでいる。市川橋も人道橋ではなく、車両の通行も可能なようだが、こちらも幅員は狭く、歩行者優先だそうである。3tの重量制限もある。小さな橋の風情に惹かれて中程まで渡ってみる。振り返ると河岸の小集落の風景が美しかった。
初夏の本郷
市川橋を過ぎると都幾川は再び北へ向けて緩やかに弧を描く。左岸はここも水田風景だ。青々と稲の育つ水田が広がり、北側には緑の丘がこんもりと横たわっている。丘の裾には民家が点在し、それらが美しい風景を織り成している。

風景を楽しみながら歩いて行くと「川北橋より300m」の距離標が立っているのに気付く。川北橋も目の前だ。名残惜しい気分で残りの300mを歩こう。
初夏の本郷
今回は田植えが終わった時期を選んで本郷地区を訪ねた。都幾川の流れも河岸の田園風景も期待以上の美しさだった。水田の稲穂が黄金に実る頃にも歩いてみたい。田園散歩の好きな人にはお勧めのときがわ町本郷である。

「ときがわ水辺の道」は本田橋からさらに上流側へ、あるいは川北橋から下流側へと続いている。「ときがわ水辺の道」の散策へ足を延ばしてみるのもお勧めだ。
初夏の本郷
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参考情報
本欄の内容は2024年6月現在の状況です
交通
ときがわ町本郷地区はJR八高線明覚駅が最寄りだ。駅から北へ向かい、300mほどで本郷地区だ。

明覚駅の横手に無料駐車場が設けられており、利用が可能なようだ。十数台分の駐車スペースがある。

遠方から車で訪れる際には関越自動車道の坂戸西スマートICや東松山IC、嵐山小川ICなどを利用すればいい。ただしどのインターからも少しばかり距離がある。

飲食
明覚駅と川北橋との間に「とき川」という日本料理の店がある。また「明覚駅入口」交差点から県道172号を200mほど西へ行った辺りに「枇杏」という古民家カフェがある。また県道172号と県道30号との「田中」交差点の周辺にも飲食店が点在している。本郷地区内には飲食店はないようだ。

本郷地区内、「ときがわ水辺の道」のルート上にはお弁当を広げられるような場所は見つけられない。お弁当持参はお勧めしない。

周辺
本郷地区から少し東へ辿ればときがわ町中心部、役場のすぐ横の都幾川河岸には「ときがわ花菖蒲園」が設けられている。花の季節にはぜひ訪ねてみたい。

県道30号を北へ辿れば5kmほどで「雀川砂防ダム公園」、紫陽花の美しい公園だから車で訪れたなら立ち寄ってみるといい。周辺の田園風景を散策するのもお勧めだ。

ときがわ町中心部から南へと辿れば鳩山町の西端部にも意外に近い。役場前から鳩山町の「高野倉ふれあい自然公園」まで2km強、車なら数分で着く。高野倉地区は田園風景の美しいところだ。

県道173号を北へ辿っていけば嵐山町だ。嵐山渓谷や菅谷館跡、春の都幾川桜堤など、見所が多い。
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