公園内に設置された彫刻作品の中でも最も印象的なものが広場の北側の散策路脇に設置された作品だろう。ベンチに並んで座り、顔を向き合わせて話をする若い女性ふたりを象ったものだが、遠目に見ると本当に人が座っているのかと思ってしまうのも楽しい。
これは朝倉響子による1993年の作品で、「アンとミッシェル(Anne & Michelle)」と題されたものだ。朝倉響子は1925年、彫刻家である朝倉文夫の次女として生まれた。1948年から1951年まで4回連続の日展特選という経歴を持つ。特に女性像に定評があり、欧米女性をモデルにしたすらりとして上品な女性像は他の日本人彫刻家の女性像とは一線を画すものがある。木々の緑を背景に観る朝倉響子の「アンとミッシェル(Anne & Michelle)」は、府中の森公園の気品ある象徴のひとつと言っていいのではないかと思う。