福島県会津若松市、市街地の東に「会津武家屋敷」という施設がある。会津藩家老を務めた西郷頼母邸を中心に、種々の歴史的建造物や歴史資料などを展示している。残暑の九月上旬、会津武家屋敷を訪ねた。
会津武家屋敷
会津武家屋敷
「会津武家屋敷」は会津若松市の市街地東方、市街中心部から東方温泉へと向かう県道325号沿いに設けられている。会津藩家老を務めた西郷頼母邸を中心に、旧中畑陣屋や藩米精米所などの歴史的建造物、種々の歴史資料などを展示する施設で、一種のミュージアムと言っていい。ゆっくりと見学しながら、往時の暮らしぶりを想像してみるのも楽しいひとときだ。
家老屋敷(西郷頼母邸)
会津武家屋敷のメインとなる施設が「家老屋敷(西郷頼母邸)」だ。会津藩家老西郷頼母邸を復元したものという。
会津武家屋敷/家老屋敷
西郷家は会津藩松平家譜代の家臣で、代々家老を務めた家柄という。西郷頼母(たのも)は幕末の西郷家当主である。時局を読んで和議恭順論を説き、京都守護職に反対し、辞退を進言するも受け入れられず、家老職を解かれている。1868年(慶応4年)1月、戊辰戦争の勃発に際して家老職に復帰、白河口の戦いで指揮を執るが敗戦、城に戻った頼母は再び和議恭順を主張したが、周囲の反発を受けて城を去っている。その後、榎本武揚に合流し、函館で終戦を迎えたという。新政府軍に捕らえられたものの数年後に赦免、宮司職などを務め、晩年は会津若松に戻り、1903年(明治36年)、十軒長屋で亡くなっている。74年の生涯だった。
会津武家屋敷/家老屋敷
会津武家屋敷/家老屋敷
1868年(慶応4年)8月、頼母の母と妻、二人の妹、五人の娘は、親戚12人と共に頼母の登城後に自邸で自刃した。「敵のはずかしめをうけず」の覚悟からだったという。ちなみに、頼母の妻、千重子は白虎隊でただ一人生き残った飯沼貞吉の実の叔母だそうである。
会津武家屋敷/家老屋敷
屋敷は江戸時代中期の和様建築の粋を集めた壮大なもので、敷地面積2400坪、建築面積280坪に及ぶ。室内には調度品などが展示されている他、往時の様子を再現して人形も置かれるなど、趣向を凝らした演出がなされているのも楽しい。その様子から会津藩家老の家の暮らしぶりを思い浮かべるのも一興だろう。添えられた解説に目を通しつつ、順路に沿って見学してゆけば興味は尽きない。時間をかけて丁寧に見ておきたい施設だ。
会津武家屋敷/家老屋敷
会津武家屋敷/家老屋敷
藩米精米所
「藩米精米所」は水車を使用した精米所で、白河藩で使われていたものを移築復元したものという。水車の回転を巧みに杵の上下運動に変換する構造が興味深い。水車は今も回っている。
会津武家屋敷/藩米精米所
旧中畑陣屋
「旧中畑陣屋」は旗本松平氏の代官陣屋として天保年間(1833〜1844年)に、西白河郡矢吹町中畑に建てられたものという。明治維新後に陣屋が廃止されると、同地の岡崎家に譲渡され、住居として使われていたが、1974年(昭和49年)に岡崎家から「会津武家屋敷」に譲渡されて現在地に復元移築されている。
会津武家屋敷/旧中畑陣屋
建物は簡素でありながらも書院造りの形態をとどめ、地域農民住居の手法も残したものだという。こうした陣屋の建物は明治以降に多くが失われた。「旧中畑陣屋」は五千石の旗本陣屋として保存状態もよく、貴重なものだという。福島県の重要文化財(建築物)の指定を受けている。
会津武家屋敷/旧中畑陣屋
「会津武家屋敷」の中では「家老屋敷(西郷頼母邸)」と共に見応えのあるものだと言っていい。外部の形態から内部の造作まで丁寧に見てゆけば興味深く、その様子に直参旗本の代官として暮らしぶりを想像するのも一興だろう。
会津武家屋敷/旧中畑陣屋
会津武家屋敷/旧中畑陣屋
茶室(嶺南庵)
「茶室(嶺南庵)」は会津藩主蒲生氏郷(がもううじさと)の庇護を受けた、千利休の次男である少庵(しょうあん)が鶴ヶ城本丸に造った茶室「麟閣」を再現したものという。再現されたものとは言え、その佇まいは往時を偲ぶには充分だ。これも江戸時代の建築物や当時の文化などに興味のある人には見逃せない施設だろう。
会津武家屋敷/茶室(嶺南庵)
会津武家屋敷/茶室(嶺南庵)
会津武家屋敷
会津武家屋敷
「会津武家屋敷」は歴史的建築物を保存、展示しつつ、敷地内には手作り体験館や資料館、美術館、工芸品の販売所、食事処などを併設し、会津の観光名所のひとつとしての役割を担っている。展示された建物を見学した後は地元の工芸品などを見て回るのも楽しい。お土産物を買い求めるのもいいだろう。のんびりと食事を楽しむのもお勧めだ。
参考情報
会津武家屋敷は入場料が必要だ。開園時間や入場料など、詳細は会津武家屋敷公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
会津武家屋敷はJR会津若松駅から4kmほど離れている。駅前から会津バスのまちなか周遊バス「あかべぇ」を利用すれば10分ほどで着く。まちなか周遊バス「ハイカラさん」はルートが「あかべぇ」とは反対回りで、会津若松駅前から会津武家屋敷まで40分ほどを要するので注意されたい。

会津武家屋敷には来訪者用の無料駐車場が用意されており、車での来訪も可能だ。100台分ほどの駐車スペースがあるとのことだ。

遠方から車で訪れる場合は磐越自動車道会津若松ICを利用するのが近い。会津若松市街に入って国道118号や県道64号を経由し、県道325号を東山温泉へ向かって行けばいい。「奴郎ヶ前」交差点を過ぎて数百メートルほどだ。

飲食
会津武家屋敷には「九曜亭」という食事処が併設されており、会津の郷土料理などが楽しめる。

周辺にも数は少ないながら飲食店が点在しているが、市街地中心部へ移動すればさらに選択肢が増えるだろう。

周辺
会津武家屋敷から西へ1km強で御薬園だ。御薬園からさらに西へ向かえば鶴ヶ城、鶴ヶ城から北へ向かうと市街中心部、古い建物の並ぶ七日町通りの散策などがお勧めだ。北へ3kmほど辿れば飯盛山がある。御薬園へは徒歩で20分ほどだが、他は距離があり、車でない場合は周遊バスなどを使うのが便利だ。

会津若松市街の観光地巡りには会津バスのまちなか周遊バスを利用するのが便利だ。フリー乗車券を購入すれば当日は何度でも乗れる。車で会津若松市に訪れた場合も駅近くの駐車場に車を置き、まちなか周遊バスを使って市内を巡るのが気軽でお勧めだ。フリー乗車券は「会津バス駅前観光案内所」などで購入できる。詳細は会津バスのサイトを参照されたい。

車で訪れたなら、猪苗代湖畔へ足を延ばすのもいい。国道49号を東へ辿って、会津若松市街から30分ほどで湖畔に着く。
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