佳景探訪
白米の千枚田
石川県輪島市白米町に「千枚田」と呼ばれる有名な棚田がある。海を見下ろす斜面に小さな田圃が雛壇状に並ぶ景観はたいへんに美しく、国の名勝にも指定されている。残暑の続く九月の初旬、白米の千枚田を訪ねた。



白米の千枚田

白米の千枚田

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白米の千枚田

白米の千枚田

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白米の千枚田

白米の千枚田

白米の千枚田
“能登の千枚田”といえば数ある棚田の中でも屈指の知名度があるのではないかと思う。傾斜地を利用して造られた雛壇状に並ぶ水田のことを「棚田」と呼ぶが、その中でも一枚の水田の面積が狭く、枚数の多いもののことを特に「千枚田」と呼ぶことが少なくない。千枚田を名乗る棚田は全国各地にあるが、その中でも“能登の千枚田”は「千枚田」というものの代名詞のようによく知られたものなのではないだろうか。

“能登の千枚田”と記したが、正確には「白米の千枚田」といい、石川県輪島市白米町、能登半島の北側の海岸に位置している。現在のような形になったのは17世紀から19世紀にかけてのことらしい。歴史的な文化遺産としての価値も評価されており、2001年(平成13年)には国の名勝に指定されている。当然のことながら「日本の棚田百選」のひとつでもある。

通常は「千枚田」の「千枚」は数が多いことを象徴した形容であって、実際には田の数が千枚に満たなくても「千枚田」と呼ぶことが少なくない。しかし、この「白米の千枚田」は文字通り千枚を超える数の水田があるらしい。国の指定部分で1004枚というから指定外のものも含めればもっと多いのだろう。耕地全体の面積は2ha足らず、そこに千枚を超える水田が並ぶわけだから一枚当たりの面積は当然狭く、最も小さいものは0.2平方メートルしかないそうだ。「狭い田」が転じて「千枚田」となったとする説もあるらしい。

こうした棚田は海から離れた山深いところに築かれるのが一般的だが、「白米の千枚田」は日本海に面した北向きの海岸の傾斜地、海へと落ちる山肌の斜面に築かれている。棚田の最も低いところへ行ってみると、そこはもう海岸で、すぐ目の前で磯辺の岩々が波に洗われている。このような立地の棚田は全国的にも珍しいのではないだろうか。上側から棚田を見下ろせば、その向こうには日本海の海原が広がり、畦畔の小径を辿れば棚田と海との織りなす景観がさまざまな表情を見せる。どの表情もたいへんに美しく、それも国の名勝に指定された一因であるようだ。

今回訪れたのは(2010年)9月の初旬だったが、「白米の千枚田」ではすでに稲刈りが始まっていた。こうした棚田はその地形上の問題から機械化を阻み、すべての農作業を人力に頼らざるを得ない。訪れたときにも農作業の人たちがそれぞれに狭い田に入って稲を刈り取っておられた。その横を挨拶を交わしつつ、作業の邪魔にならないように気を遣いながら歩かせていただいた。

実際に棚田の中を歩いてみると、上から見下ろすよりさらに一枚一枚の田が狭いことを実感する。しかも平たい斜面ではなく水平方向にも曲面となった斜面なので、一枚の田は水平方向に長く狭く曲がっており、それらが等高線を描くように斜面に並ぶ。その畦が描く模様がたいへんに美しいわけだが、農作業の困難さの代償として得られた美しさだと考えることもできるかもしれない。

多くの棚田がそうであるように「白米の千枚田」でも後継者不足は深刻で、棚田の保全と稲作の継続のためにオーナー制度が取り入れられているようだ。年度ごとにオーナー会員や企業会員などが募集されているから興味のある人は問い合わせてみるといい。

「白米の千枚田」が見せてくれる景観はまさに国の名勝の名に恥じない。斜面に並ぶ小さな田圃とその畦が描く模様、ところどころで印象的な姿で立つ木々、周辺に広がる緑の山々、そして青く広がる日本海、それらが織りなす景観は見事という他に無い。訪れたときには、上から眺めるだけでなく、耕地の中の小径を辿って(くれぐれも農作業の邪魔にならないように)棚田の様子を間近に見学させてもらうのがお勧めだ。場所によって「白米の千枚田」はさまざまに表情を変えてそれぞれの美しさを見せてくれる。下方から見上げる景観も悪くないが、やはり棚田とともに海が視界に収まる景観が素晴らしい。

そしてまた、水田は季節によっても表情を変える。初夏の田植えの季節には水を張った田圃が景色を映し、夏には青々と茂った稲が日差しを弾く。秋には黄金に実った稲穂が陽光に輝く。冬の雪景色も素晴らしいものだろう。朝、昼、夕と、時刻によっても表情は変わる。それぞれの季節の、それぞれの時刻の景観をすべて見てみたいと思わせてくれる、「白米の千枚田」である。




道の駅千枚田ポケットパーク

道の駅千枚田ポケットパーク
白米の千枚田のすぐ西側、千枚田を見下ろす国道脇に「道の駅千枚田ポケットパーク」が設けられている。「ポケットパーク」と名付けられているように「道の駅」としては小規模だが、千枚田へ観光に訪れた人の利便のために設けられた側面もあるのだろう。敷地内には地域の物産を販売するレストハウスや緑地スペース、千枚田を見下ろす展望台などが設けられている。飲食や喫茶の可能な店は併設されていないが、千枚田観光のためには必要不可欠な施設と言っていい。

「道の駅千枚田ポケットパーク」は海を見下ろす丘の上の立地で、北側は斜面となった山肌が海に落ちている。敷地の端に立てば眼下に日本海が広がり、雄大な景色を望める。千枚田と共に、この景観も楽しんでおきたい。
追記 「道の駅千枚田ポケットパーク」は2013年11月にリニューアルオープン、駐車場が以前より広くなり、売店も規模を拡大、飲食コーナーも設けられている。
参考情報
交通

奥能登には鉄道路線が通っていないため、訪れるときは車が便利だ。輪島市へは金沢市方面から国道249号線を北上、あるいは「のと里山海道(旧能登有料道路)」から県道1号線を経由して北上するのがわかりやすい。高岡市方面からなら国道160号線を北上、七尾市街を経由して「のと里山海道(旧能登有料道路)」へと辿るか、氷見市から国道415号線で能登半島の“付け根”を横断、「のと里山海道(旧能登有料道路)」へと辿るのがわかりやすいだろう。遠方の人は空路で能登空港まで来て、能登空港からレンタカーを利用するのも一案だ。

白米の千枚田は輪島市中心部から国道249号線を東へ10kmほど辿ったところにある。駐車場は「道の駅千枚田ポケットパーク」を利用すればよい。2013年にリニューアルされて普通車50台分の駐車場が用意されているが、行楽シーズンには混み合うかもしれない。

飲食

「道の駅千枚田ポケットパーク」は2013年11月にリニューアルオープンを迎え、土産物などを販売する売店の他、飲食コーナーも設けられ、軽食も可能となったようだ。

周辺にはほとんど飲食店がない。東へ辿って曽々木海岸辺りまで行けば数軒の飲食店が建っているが数は少ない。国道249号線を東へ辿って珠洲市街まで行くか、あるいは国道249号線を西へ辿って輪島市街まで行けば多くの飲食店がある。

周辺

西へ10kmほど行けば輪島市の中心部だ。輪島市街を散策するのも悪くない。東へ10kmほど行けば曽々木海岸、荒々しい磯辺の景観が見事だ。曽々木海岸からさらに東へ辿れば珠洲市、「すず塩田村」や禄剛崎などを巡りながら、能登半島の輪郭をなぞるようにドライヴを楽しむのもお勧めだ。
白米の千枚田

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