神奈川県葉山町の葉山しおさい公園は葉山御用邸付属邸跡地に開園した公園だ。美しい日本庭園と葉山の海岸の景観を楽しめる。新緑の美しい五月の初め、葉山しおさい公園を訪ねた。
葉山しおさい公園
葉山しおさい公園
そもそも皇族で初めて葉山に別邸を置いたのは有栖川宮家だという。1891年(明治24年)頃のことで、その有栖川宮別邸に英照皇太后や皇太子時代の大正天皇が滞在されて葉山の地を気に入られ、皇室侍医であったドイツ人医師エルヴィン・フォン・ベルツ博士の進言もあって、皇室の保養先として1894年(明治27年)に葉山御用邸が造営されたのだという。ちなみに旧有栖川宮別邸跡地は現在は神奈川県立近代美術館葉山館になっている。

葉山御用邸の北側には明治期に造営された岩倉具定や金子堅太郎、井上毅らの別荘があったが、それらを買い上げ、1919年(大正8年)に葉山御用邸付属邸が造られている。1926年(大正15年)12月25日、葉山御用邸付属邸で療養中だった大正天皇が崩御された。ただちに皇位継承の儀式が執り行われ、昭和天皇が即位されている。昭和の時代は葉山で始まったのである。

その葉山御用邸付属邸の跡地に、1987年(昭和62年)6月に開設されたのが「葉山しおさい公園」である。「葉山しおさい公園」は「大正天皇崩御・昭和天皇皇位継承の地」として葉山町の史跡に指定されている。
葉山しおさい公園
現在の「葉山しおさい公園」は池泉回遊式庭園として整備された日本庭園を中心に造られており、池を中心に置き、その岸辺を園路が辿る。池は東西に長く、東側部分で広く、西側部分では水路のような景観を見せている。池には錦鯉が泳ぎ、島が浮かび、岸辺の一角には玉石による州浜も設けられている。庭園は公園の北方に横たわる三ヶ岡山を借景としており、特に池の南側の園路から眺めれば雄大な景観を楽しむことができる。
葉山しおさい公園
池の北西側の岸辺に滝が設けられている。「噴井の滝(ふけいのたき)」という。落差3mだそうで、巧みな石組みに流れ落ちる水が飛沫を上げる様子が風趣に富んだ景観を見せる。涼やかな印象は初夏から夏にかけての観賞がお勧めかもしれない。
葉山しおさい公園
「葉山しおさい公園」の庭園は、景観を愛でながらのんびりと園路を巡るのがお勧めの楽しみ方だ。庭園の景観を楽しみながら園路を巡れば、場所によってさまざまな表情を見ることができて飽きることがない。どの場所に立っても、その場所ならではの美しい景観を楽しめる。日本庭園への造詣が無くても回遊式庭園としての魅力を存分に楽しむことができる。
葉山しおさい公園
庭園の南側には「葉山しおさい博物館」が設けられている。葉山しおさい博物館は葉山周辺の海に生息する魚類や貝類、海藻類などの標本が展示されており、昭和天皇から下賜された標本コレクションの展示も行われている。葉山しおさい公園を訪れた際にはぜひ見学しておきたい。
葉山しおさい公園
葉山しおさい博物館内の休憩室からは広い窓の向こうに日本庭園の景観を見ることができる。ちょうど南側から庭園を見ることになるので、庭園の向こうには借景の三ヶ岡山が横たわり、見事な景観である。この景色も堪能しておこう。
葉山しおさい公園
公園の西側部分、すなわち一色海岸に面した部分は黒松の林で、松の間を縫うように散策路が辿っている。潮の匂いを感じながらの散策は楽しいひとときだ。
葉山しおさい公園
黒松の林を海岸側へと抜けてゆくと、洋風に設えられたテラスがある。テラスからは眼前に一色海岸の浜辺を眺めることができる。このテラスの他にも公園内には浜辺を一望する芝生広場もあるから立ち寄ってみるといい。浜辺の風景を眺めながらのんびりと過ごすひとときは贅沢な気分のするものである。
葉山しおさい公園
葉山しおさい公園は美しい日本庭園がいちばんの魅力だと思うが、テラスや芝生広場から眺める一色海岸の風景も美しく、葉山しおさい博物館で見学できる昭和天皇のコレクションの数々も興味深いものだ。葉山ならではの魅力を存分に楽しむことのできる公園と言っていい。新緑の頃の清々しい空気感も魅力だが、早春の梅や初夏の紫陽花、秋の紅葉も美しい。四季折々に訪ねてみたい公園だ。
葉山しおさい公園
葉山しおさい公園
葉山しおさい公園
参考情報
葉山しおさい公園は入園料が必要だ。葉山しおさい博物館の入館には別料金は必要ない。開園日や開園時間など、詳細は公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
「葉山しおさい公園」へはJR横須賀線逗子駅や京浜急行逗子線逗子・葉山駅からバスを利用しなくてはならない。バス便などの詳細については葉山町公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)などを参照されたい。

「葉山しおさい公園」には20台分ほどの来園者駐車場が用意されており、園内見学中は利用できる。周辺の散策も予定している場合は近隣の民間駐車場を利用すべきだろう。

遠方から車で訪れる場合は、横浜横須賀道路を逗子ICで降りて逗葉新道から国道134号を経由するか、横浜横須賀道路を横須賀ICで降りて県道28号から県道27号を経由するのがわかりやすい。行楽シーズンの休日にはたいへん混雑するので余裕を持って出かけよう。

飲食
「葉山しおさい公園」にはレストランなどは併設されていない。公園周辺に素敵なレストランが点在しているので、気に入ったお店で食事を楽しもう。

周辺
「葉山しおさい公園」を訪ねたなら周辺の散策も楽しむのがお勧めだ。一色海岸を散策したり、一色の町の“こみち”巡りを楽しんだりと、一日楽しむことができる。「神奈川県立近代美術館葉山館」にもぜひ立ち寄っておきたい。

海岸沿いに南へ辿って神奈川県立葉山公園や長者ヶ崎へと散策の足を延ばすのもお勧めだ。
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