佳景探訪
「雁木の町」高田
新潟県上越市の高田は「雁木の町」として知られる。その総延長は約16km、日本一の長さだという。雪国の暮らしの中で考案された雁木が独特の景観を見せる。雪の無い九月、上越市高田を訪ねた。



「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田

「雁木の町」高田
新潟県上越市の高田地区は「雁木の町」である。高田に残る「雁木」の総延長は約16km、日本一だという。

「雁木」とは、通り沿いの町屋の軒先を延ばし、あたかもアーケードを設けた歩道のような空間としたもののことだ。これによって積雪時にも往来が確保されるわけである。公道上に設けられたアーケードと決定的に異なるのは、基本的に「雁木」はすべて私有地だということだ。通りに並ぶ民家や店がそれぞれの軒先を延ばして「雁木」を設け、私有地の一部を公共の往来の利便のために供しているのだ。

だから、アーケードとは異なり、「雁木」は不揃いだ。「造り込み式」や「落とし式」といった構造の違いがあるのはもちろん、その高さも、形状も、そしておそらく造られた時期も、それぞれ違う。江戸時代に建てられた重厚な佇まいの店舗に設けられた「造り込み式雁木」、昭和の時代に建てられたであろう民家の、文字通り軒を延ばしたような「落とし式雁木」、あるいはアーケードの一部であるかのような、現代的意匠の雁木など、多様な雁木が連なっている。一説には少しずつ重なり合って連なる景観が群れを成して飛ぶ雁の姿を思わせたことから「雁木」の名が生まれたともいう。

さまざまな高さと形状で連なる雁木だが、雁木によって生じた通路の幅は、ほぼ同じだ。多少広かったり狭かったりもするが、基本的に人のすれ違いが可能な幅を確保することが不可欠との共通認識があるのだろう。通路部分は今ではコンクリート敷きに改修されているものも多いが、昔ながらの石畳も少なからず残り、風情ある景観を見せている。


高田は、豪雪地帯である。江戸時代には町そのものが雪に埋もれてしまい、「この下に高田あり」という立て札が立てられたという逸話も残る。雁木は、そうした雪深い地域の暮らしの中で生まれたものだ。上越市制作のリーフレットの記述によれば、高田で雁木が造られたのは1600年代の頃だろうという。

高田は1614年(慶長19年)に松平忠輝が築城した高田城の城下町として発展した。1624年(寛永元年)に松平光長が26万石を与えられて高田藩を立藩したが、光長が幼少であったため家老の小栗美作らが藩政を担い、殖産振興や新田開発に尽力したという。1665年(寛文5年)、記録的な豪雪に見舞われた高田を、さらに大地震が襲う。積雪の重みもあって城下は壊滅、高田城本丸も崩壊した。死傷者も多数に上り、家老二名も亡くなっている。小栗美作は幕府から資金を借り受けて城下を復興した。この時、城下に雁木が完備されたのだという。

高田の城下町は高田城を囲むように北側、西側、南側に「凹」の字状に広がっている。今では高田城跡の西方約1.5kmに位置する「えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン」の高田駅周辺が町の中心と言っていいが、かつての高田城下の町並みに延びる通りに、往時を偲ばせる光景で雁木が残されている。最盛期には雁木の総延長は18km近くにもなったそうだ。やがて時代が下ると町並みの近代化のために雁木を無くそうという意見もあったようだが、それでも大雪の度に雁木の意義が見直されてきたという。高田駅前と本町三丁目〜五丁目の商店街は、敢えて現代的なアーケードへと姿を変えているが、それを含めると約16kmの雁木が今も現役で使われている。

雁木はもちろん本来は大雪の際の往来の確保が役割の第一義だが、当然のことながら雨の日にも濡れずに通りを歩くことができるし、車道から隔てられて安全な“歩道”としての意義も無視できない。雁木は今も現役の設備として人々の暮らしに寄り添っている。


観光として高田の町を訪れた立場であれば、やはり昔ながらの雁木を残す町並みの景観の風情が魅力だ。高田の町は、江戸時代の城下町の町並みがそのままに残っているというわけではない。一部には江戸時代後期に建てられたという建物も現存しているが、町並みそのものは城下町の風情を残したものではない。どちらかと言えば“昭和レトロ”的な味わいのある町並みと言っていい。その町並みに、雁木が特徴的な景観を添える。

雁木の下は道路の歩道としての役割も兼ねているから、町並み散策の際には当然のことながら雁木の下を歩くことになる。雁木の下の通路は、現代の商店街のアーケードに比べれば狭い。人とすれ違う際には互いに脇に寄って気を遣う必要があるが、それもまた雁木の味わいというものだろう。

雁木は不揃いだ。形状も高さも造られた時期も、雁木を支える柱も、家々によって異なる。それらが通り沿いに連なって“雁木の町並み”を形作っている。その、不揃いの雁木が連なる光景が、何とも風趣に富んでいる。雁木の下の通路を歩くのも、歩きながら道路反対側の家並みの雁木を見てゆくのも楽しい。この雁木はいつ頃造られたものだろうかと想像しながら、それぞれの雁木を見学してゆけば飽きることがなく、ついつい散策の足を延ばしてしまう。

雁木の連なる町並みを見学するのであれば、やはり中心となるのは高田駅の東300mほどのところに位置する「本町5丁目」交差点から北へ、本町6丁目から7丁目にかけての「本町通り」、その西に位置する仲町5丁目から6丁目にかけての「仲町通り」、さらに本町の東に位置する大町5丁目周辺の「大町通り」の辺りだろう。本町6丁目には「町家交流館高田小町」という施設が建っている。明治時代に建てられた町家を再生・活用した交流施設で、観光案内所を兼ねている。高田観光の際には立ち寄ってみるのがお勧めだ。「町家交流館高田小町」の道を挟んで西側には「高田世界館」という古い映画館がある。ここも高田観光の際には欠かせないところだ。

高田駅前から「本町5丁目」交差点周辺、さらに交差点から南へ本町5丁目、4丁目、3丁目の「本町通り」は現代的なアーケードに姿を変えているが、高田で最も繁華な場所だ。飲食店なども多く、食事の際には足を運んでみるといい。本町3丁目の一角には旧第四銀行高田支店の建物が残っている。内部も自由に見学できるから、ここもぜひ立ち寄っておきたい。

高田の雁木は総延長約16km、できればそのすべてを歩いてみたいと思うが、なかなか難しい距離だ。中心部となる本町6丁目周辺だけでも充分に楽しめる。雁木の連なる町の風情を感じながら、のんびりと散策を楽しむのがお勧めだ。町歩きの好きな人ならぜひとも訪ねてみたい、高田の町である。
町家交流館高田小町
本町6丁目の一角、「本町通り」に面して「町家交流館高田小町」という施設が建っている。歴史を感じさせる建物は明治期に建てられた町家「旧小妻屋」を再生したものという。今は「町屋交流館」の名の通り、市民の交流サロンやギャラリー、茶会などに使用できる施設として活用されている他、観光案内所や休憩所を兼ねている。入館や見学に料金は不要で、気軽に利用することができる。

内部は高田の町家の特徴という吹き抜けや土蔵などを見学でき、歴史資料などの展示も行われている。高田観光の際にはぜひ立ち寄っておきたい施設だ。通りに面した外側には、もちろん立派な雁木が施されている。
町家交流館高田小町

町家交流館高田小町

町家交流館高田小町
旧第四銀行高田支店(旧百三十九銀行本店)
本町3丁目の一角、現代的なアーケードの延びる「本町通り」の西側に面して「旧第四銀行高田支店」の建物が残されている。この建物はそもそもは1931年(昭和6年)に百三十九銀行本店として建てられたもので、1943年(昭和18年)からは第四銀行高田支店として使われた。第四銀行高田支店は2009年(平成21年)まで営業を続けた後、現在は建物だけを残し、その一角に上越市文化振興課の事務所が置かれている。上越市内に残る数少ない昭和初期の洋風鉄筋コンクリート建築のひとつであるという。

建物の外観はアーケードに遮られて少し見にくいが、1階部分はルスチカ積み石張りにオレンジ色レンガタイル貼り、アーチ型枠の窓が設けられている。2階、3階部分はイオニア式石貼4連柱が重厚な佇まいを見せている。内部は漆喰仕上げ、玄関ホールは1階、2階吹き抜けで、6本のコリント風円柱が存在感を示してる。ホールの周囲に部屋が配置され、それらも見学することができる。各部屋の出入口の木製建具や階段、手摺り、廊下などは職人による人造石塗り研ぎ出し仕上げだそうで、当時の見事な職人技を見ることができる。

原則として土曜、日曜、祝日、年末年始は休館だが、開館していれば内部も自由に見学することができる。平日に高田の町を訪れる機会があったなら、ぜひ見学しておきたい。近代建築に興味のある人なら必見の建物である。
旧第四銀行高田支店(旧百三十九銀行本店)

旧第四銀行高田支店(旧百三十九銀行本店)

旧第四銀行高田支店(旧百三十九銀行本店)

旧第四銀行高田支店(旧百三十九銀行本店)

旧第四銀行高田支店(旧百三十九銀行本店)
参考情報
交通

鉄道で高田を訪れる場合は「えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン」を利用する。上越新幹線上越妙高駅から「えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン」に乗り換え、「直江津」方面へ約7分、あるいはJR信越本線直江津駅から「えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン」に乗り換え、「妙高高原」方面へ約9分で着く。

車で訪れる場合は上信越自動車道上越高田ICや北陸自動車道上越ICなどが近い。

観光用駐車場が「町家交流館高田小町」裏などに設けられており、その他、市街地中心部に時間貸し駐車場が点在しているから、それらを利用して車を置き、町中の散策を楽しむといい。

飲食

市街地中心部、特に高田駅東側に数多くの飲食店がある。好みの店を選んで食事を楽しもう。散策途中でカフェなどを見つけて立ち寄るのも楽しい。

上越観光コンベンション協会の発行する「高田まちなか回遊マップ」などを利用してお店を探すのもお勧めだ。

周辺

雁木通り散策の際には1911年(明治44年)に建てられた芝居小屋を利用して営業する映画館「高田世界館」にも立ち寄っておこう。レトロな建物は必見だ。

雁木通り散策を楽しんだら、高田公園や旧師団長官舎などへも足を延ばすのがお勧めだ。

上越を訪れた際には春日山城跡もぜひ訪ねておきたい。春日山城跡は高田の中心部から6km強、車で30分かからずに行ける。

「雁木の町」高田
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