埼玉県日高市、彼岸花の群生地として知られる巾着田の堤防沿いには紫陽花が植栽されており、六月には美しい景観を見せる。紫陽花が見頃の六月下旬、巾着田を訪ねた。
紫陽花の咲く巾着田
埼玉県日高市の「巾着田」は彼岸花の群生地として広く知られ、初秋の花期には多くの観光客を集める。高麗川の流れが大きく蛇行し、その形状が“巾着”を思わせることからその名で呼ばれるようになったものという。巾着田は季節を問わず散策の楽しいところだが、六月になれば堤防沿いに植えられた紫陽花が咲き、緑濃い風景に美しい色彩を添えてくれる。
紫陽花の咲く巾着田
巾着田の紫陽花は“巾着”の南側半分、堤防の内側斜面に植えられている。約700mの距離に600本ほどの紫陽花が植えられているという。2004年(平成16年)に植栽されたものだそうだ。特筆すべきなのは、巾着田に植えられた紫陽花はそのほとんどすべてがガクアジサイだということだ。一般的な西洋アジサイの姿もあるが、ほんの数えるほどだ。これほどガクアジサイに特化して植栽されたところはなかなか類例がないのではないか。日本情緒漂うガクアジサイの姿が巾着田の風景によく似合っている。
紫陽花の咲く巾着田
紫陽花の咲く巾着田
言うまでもないことだが、蛇行を描く川の堤防だから緩やかに曲がっており、紫陽花の列も優美な曲線を描く。緑濃い風景の中に描かれた紫陽花の帯がとても美しく、壮観ですらある。堤防の上を歩けば足元に紫陽花を見下ろし、視界の奥へと堤防に沿って紫陽花の帯が延びる。進んでゆけばその表情はさまざまに変わってゆき、飽きることがない。堤防の斜面下も歩けるように整備されているから、そこを辿れば紫陽花を間近に眺めながらの散策も楽しめる。堤防上から見下ろす紫陽花とはまた違った風景で、紫陽花を間近に観賞できるのが楽しい。紫陽花の並ぶ堤防に沿って一往復、往路と復路で堤防上と堤防下との双方を歩いて楽しむのがお勧めだろう。
紫陽花の咲く巾着田
堤防の斜面にほぼ等間隔に植えられた紫陽花は少しばかり整然としすぎているような印象もあり、山里に自生する紫陽花のような風趣には欠けるかもしれない。しかし自然豊かな風景の中、弧を描いて延びる薄紫の紫陽花の帯は“紫陽花の咲く風景”として充分に楽しめるものだ。ゆっくりと時間をかけて散策し、“紫陽花の帯”が見せるさまざまな景観を楽しむのがお勧めだ。
紫陽花の咲く巾着田
紫陽花の咲く巾着田
巾着田の南東側には堤防脇に小さな池が設けられているところがある。蓮の栽培が行われているらしい。六月下旬、蓮はこれから花期を迎えるところだろう。花数は多くはないが、少しばかり咲いている蓮に出会うことができた。アサザの育つ池もあった。アサザも花期は夏だが、すでにかなりの数が咲いていた。水面に顔を出すようにして、小さな黄色い花が咲いている。その姿が可憐で美しい。紫陽花と共にそれらの花々も楽しんでおきたい。
紫陽花の咲く巾着田
紫陽花の咲く巾着田
巾着田の西側、駐車場脇の河原にはバーベキューを楽しむ人たちの姿がある。家族連れで訪れる人たちが多いようだ。大人たちがバーベキューの準備をする間、子どもたちは川遊びだ。自然豊かな高麗川の河原でのバーベキューと川遊びは楽しいひとときだろう。梅雨の晴れ間の一日、一足早く夏を楽しむ人たちの姿もなかなか素敵な光景である。
参考情報
本欄の内容は巾着田関連ページ共通です
巾着田は通常期なら入場料などは必要ない。彼岸花の開花期には彼岸花群生地への入場料金が必要となる。有料期間や料金については巾着田公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
巾着田へは西武池袋線の高麗駅が近く、徒歩で15分ほどで着く。あるいはJR八高線高麗川駅からバスを利用すればよい。

車で来訪する場合は圏央道の圏央鶴ヶ島ICや狭山日高ICを利用するのが便利だ。圏央鶴ヶ島ICから国道407号を南下、県道15号へ逸れて西進、あるいは狭山日高ICから県道262号を北上、県道15号へ逸れて西進するルートがわかりやすい。

彼岸花の見頃の時期には巾着田周辺道路が混み合い、渋滞しがちなようだ。余裕を持って出かけることをお勧めする。

巾着田には西側河岸に来訪者用の有料駐車場が用意されており、駐車台数にも比較的余裕があるが、行楽シーズンには混み合うようだ。彼岸花の見頃の時期には臨時駐車場も設けられ、巾着田の中は一方通行などの通行制限が行われるが、要所に係員が立って誘導してくれるのでそれに従うといい。駐車料金については巾着田公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

飲食
巾着田の中には飲食店などはない。陽気の良い季節であればお弁当持参で訪れて、河原の木陰などにシートを広げてアウトドアランチを楽しむのがお薦めだ。

春から夏にかけての行楽シーズンは、駐車場脇の川原でバーベキューを楽しむ人たちも多い。直火は禁止とのことなので、バーベキュー用の道具を持参しよう。ちなみに9月から10月にかけての彼岸花開花期には河原でのバーベキューは禁止されている。

彼岸花の開花期には広場に露店が並び、地元の物産の販売の他に軽食を扱う店もあったが、本格的な食事は他に探した方が賢明だろう。

都道15号沿いには飲食店が点在しているので、お弁当持参でない人は利用するといい。ただし彼岸花のシーズンにはそれらの店も混み合うことは必至だ。

周辺
巾着田の北側には日和田山の山裾に長閑な里山風景が広がっている。散策の足を延ばしてみるのも悪くない。少し距離があるが、聖天院や高麗神社などを訪ねてみるのもいい。
紫陽花散歩
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