東京都世田谷区の北西部、仙川の河岸に祖師谷公園という都立公園がある。テニスコートが設けられ、樹林地や原っぱもあり、地元の人たちに親しまれている。紫陽花の咲く六月半ば、祖師谷公園を訪ねた。
祖師谷公園
東京都世田谷区の西部を仙川という川が流れている。三鷹市方面から流れてきて調布市の北東部を抜け、世田谷区の西部を南に下って世田谷区鎌田で野川に合流する河川だ。調布市には仙川町という町があり、京王線の「仙川」駅も設けられているから、その名を知る人は多いに違いない。世田谷区上祖師谷の町の南部、その仙川の河岸に祖師谷公園という都立公園が設けられている。
祖師谷公園
祖師谷公園
祖師谷公園はそもそもは1943年(昭和18年)に「祖師谷緑地」として計画され、その後、計画面積53haほどの「祖師谷公園」として都市計画が決定されたものという。公園は計画区域内にあった旧教育大学農場跡地を中心に整備、9haほどの面積で開園したのが1975年(昭和50年)のことだそうだ。その後、公園はほとんど広がっていない。公園計画を進めるにはさまざまな問題もあるようで、計画の見直しを求める住民の声もあるようだ。

祖師谷公園は仙川の河岸、北は宮下橋から南は鞍橋までの地域に位置している。南北に500mほど、東西の幅は南端部で200mほど、“細長い”公園と言っていい。公園は仙川左岸(東側)の区域と右岸(西側)の区域から成り、さらに左岸部は車両通行可能な道路が南北に抜けているために、その道路によって東西に分割されている印象もある。
祖師谷公園
祖師谷公園
仙川左岸部(東側)は、運動施設や花壇などを中心にした区域だ。北端部にはサービスセンターと「エントランス広場」が置かれているから、ここが公園のメインエントランスという位置付けなのだろう。

「エントランス広場」の西側には「遊びの広場」と名付けられた一角がある。子どもたちの遊び場として造られた広場だが、池を模した造形(もちろん本当の池ではない)がおもしろい。池に見立てた低地と岸辺や島に見立てた部分とで構成され、段差を利用した滑り台や、太鼓橋も設けられている。子どもたちは下に降りたり上に登ったり、太鼓橋を渡ったり下をくぐったり、なかなか楽しそうだ。

「エントランス広場」の南側は「運動広場」やテニスコート、ゲートボール場などが設けられ、スポーツ施設としての役割を担っている。その南側は「花木広場」や「湿性植物園」、花壇などを設け、木々や花々に親しむことのできる一角になっている。仙川に面した部分には「親水テラス」が設けられており、川面近くまで降りて行けるのが楽しい。
祖師谷公園
祖師谷公園
祖師谷公園
「親水テラス」の脇で「せきれい橋」という橋が仙川を跨いで左岸部と右岸部とを繋いでいる。「せきれい橋」を渡った右岸部の南側には緩やかな斜面となった草はらが広がっている。それほど広いものではなく、周囲を木立が囲んでいるために開放感にも足りない印象だが、子どもたちが走り回って遊ぶには充分な原っぱだ。適度に木立があり、日差しの強い季節には木陰が嬉しい。

原っぱの北西側には「遊具広場」も設けられている。設置された遊具は幼児用の複合遊具やブランコなど、必要最小限といったところだが、近隣の子どもたちの遊び場として親しまれているようだ。

右岸部北側は樹林地だ。「ふれあいの森」と名付けられ、鬱蒼と木々が茂っている。仙川に向かって低くなった斜面で、河岸部の低地には湧水池や小川などもある。子どもたちの遊び場としてもよく、散策を楽しむにもいい。
祖師谷公園
祖師谷公園
今回、祖師谷公園を訪れたのは(2014年)6月中旬、左岸部の区域では随所で紫陽花が咲いていた。特にテニスコートや「運動広場」の周辺、北側のエントランス周辺に多いようだ。紫陽花の咲く季節、紫陽花を探しながらの公園散策も楽しい。
祖師谷公園
祖師谷公園
祖師谷公園 祖師谷公園
また「ゲートボール場」横や南端部の花壇など、園内にはさまざまな種類のユリが植えられ、ちょうど花の盛りのようだった。ユリの品種に詳しくない身では品種名がよくわからないが、ユリの栽培を趣味とする人などには魅力的なのではないだろうか。一般の公園の花壇にこれほどの数のユリが植えられているのは珍しいかもしれない。また花壇の一角では早々と向日葵が咲いていた。梅雨の直中の六月、曇りがちの空の下、向日葵の花に一足早い夏を感じるのも楽しい。これらの花壇の整備は地元の有志の方々のボランティアによるもののようだ。丹精込めて手入れされている様子が窺える花壇だ。
祖師谷公園
祖師谷公園
祖師谷公園
祖師谷公園は大きく仙川左岸部と右岸部の区画に二分できると言っていい。左岸部はテニスコートや「運動広場」、「花木園」、花壇などを中心とした区画で、スポーツを楽しむ場として、あるいは花々を愉しむ場としての役割を担っているだろう。右岸部や原っぱや樹林地を中心に構成され、子ども連れで訪れて愉しむことのできる区域だと考えていい。ひとつの公園としての統一感に欠ける印象もあるが、計画途中の完成されていない状態であることを思えば仕方のないところか。家族で訪れ、休日のひとときを公園で過ごそうというのなら、右岸部の区域だけでも充分にその目的に応えてくれるだろう。花々が目当ての人なら左岸部の花壇をゆっくりと見て回るといい。また、仙川の河岸部は桜の並木だ。春には美しい景観を見せてくれるだろう。
参考情報
交通
祖師谷公園は鉄道の駅から少し離れている。小田急線成城学園前駅や祖師ヶ谷大蔵駅、京王線仙川駅などが最も近いがどれも1.5km〜2kmほどの距離がある。成城学園前駅と千歳船橋駅、あるいは京王線千歳烏山駅とを結ぶバス路線を利用し、「駒大グランド前」バス停で下車すると近い。

祖師谷公園には来園者用駐車場も設けられているが、駐車可能台数は十数台分ほどと少なく、週末休日には満車状態が続くようだ。公園周辺に民間駐車場が数ヶ所点在しているが、どれも小規模なものだ。公園へ車で来る場合は環状八号千歳台交差点から都道118号を西進、あるいは国道20号仙川二丁目交差点から都道118号を東進すればよいが、公園周辺は道路の狭いところが多く、公園駐車場へのルートもわかりにくい。車での来園はお勧めしない。

飲食
公園内にはレストランも売店もない。公園でのんびりと半日を過ごすならお弁当持参がお勧めだ。

公園周辺にも飲食店はない。店を探すなら駅近辺まで移動した方がいい。

周辺
祖師谷公園の東方、環状八号線沿いに蘆花恒春園がある。徒歩で20分から30分ほどだろうか。少し離れているが、併せて訪ねてみるのも悪くない。
夏散歩
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