佳景探訪
牛天神
東京都文京区春日一丁目の北野神社は「牛天神」と呼ばれる。撫でると願いが叶うという「ねがい牛」発祥の地だそうだ。梅の名所としても知られる「牛天神」を、梅の咲く早春の日に参拝した。



牛天神

牛天神

牛天神「撫で牛」

牛天神
JR飯田橋駅から北へ向かい、都道434号線の「牛天神下」交差点から地図を頼りに北側へと入り込んでゆくと、住宅が並ぶ中に北野神社と記された石柱が建っており、その奥に細い石段が上っている。どうやらここが参道のようだ。参道を上ってゆくと、小高くなった丘の上に「牛天神」が建っている。

「牛天神」は北野神社であり、“天神様”であるから、当然のことながら菅原道真を祀っている。境内に設置された御由緒書によれば1184年(寿永3年、平安時代末期)、源頼朝が東国追討のためにこの地に立ち寄った際、牛に乗った菅原道真が夢に現れ、「二つの幸」があるだろうと告げられたという。夢から覚めると、ひとつの岩石があり、夢の中で菅原道真が乗っていた牛に似ていたという。夢の中の菅原道真のお告げ通り、その年、頼家が誕生、翌年には平家を滅ぼして国を平定する。源頼朝は報賽としてこの地に菅原道真の御霊を勧請して社を建立した。それが「牛天神」の始まりであるという。

「牛天神」の境内は決して広くはないが、樹齢百年という御神木のモッコクや水戸光圀から奉納されたうちの一本という桜の木、中島歌子の歌碑や筆塚などがあり、天鈿女命と猿田彦命を祀る太田神社と高木神社も建っている。のんびりと巡ってみるのも楽しい。今では周囲にビルの建ち並ぶ市街地だが、古社らしい風格が漂っている。ひとときのんびりと時を過ごし、源頼朝の夢に現れた菅原道真の姿に思いを馳せてみるのも一興かもしれない。

件の“牛に似た岩石”は現在も境内にあり、「撫で牛(ねがい牛)」と呼ばれている。撫でると願いが叶うという。撫で方にもそれなりの作法があるようだ。菅原道真を祀る天神社は学業成就の御利益で知られる。参拝したときは「撫で牛」を撫でて願掛けをしておくとよいかもしれない。
中島歌子歌碑


中島歌子歌碑
中島歌子の歌碑は中島歌子が亡くなって6年後の1909年(明治42年)に門下生によって建てられたものという。歌碑には「雪のうちに 根ざしかためて 若竹の 生出むとしの 光をぞ思ふ」の歌が刻まれている。中島歌子は1844年(弘化元年)、現在の埼玉県坂戸市に生まれ、幼い頃に江戸に出た。水戸天狗党の林忠左衛門と結婚して水戸に住むが、やがて夫は戦死、その後、江戸に戻った歌子は小石川安藤坂に歌塾「萩の舎」を開く。上流階級の子女に歌の指導を行い、全盛期には門下生が1000人を超えたそうだ。その中には若き日の樋口一葉もいたという。


牛天神

牛天神

牛天神
「牛天神」は東京都内の梅の名所としても知られている。規模の大きな梅林などがあるわけではないが、やはり天神様の境内に梅の花は欠かせない。今回訪れたのは三月上旬、境内の梅はやや盛りを過ぎていたようだったが、それでも充分に美しい梅の花を堪能することができた。本殿前、向かって右手の枝垂れの梅や、本殿右側の駐車場横に並ぶ紅梅など、なかなか見応えのあるものだった。参道の石段上部の脇にも梅が咲いており、参拝者を迎えてくれる。

「牛天神」では毎年、梅の花の時期に「紅梅祭り」が開催される。開催期間は「梅のつぼみが開くころ」だそうで、例年二月の上旬から中旬にかけての時期のようだ。「牛天神三大祭の一つ」とのことで、たいそう賑わうらしい。「紅梅祭り」に合わせて訪ねてみるのもよいかもしれない。
参考情報
交通

「牛天神」へは東京メトロ南北線後楽園駅や東京メトロ丸ノ内線後楽園駅、都営地下鉄三田線春日駅、JR中央線飯田橋駅、都営地下鉄大江戸線飯田橋駅、東京メトロ東西線飯田橋駅などが近い。どの駅からでも徒歩で10分程度だろう。「牛天神」は大きな通りから少し奥まったところにあって少しわかりにくい。訪れるときには地図などを携帯することをお薦めする。駅からのルートは「牛天神」の公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

「牛天神」には参拝者用の駐車場はあるようだがあまり広くはなく、駐車場入口へ至るルートも道路が狭く、わかりにくい。駐車場は地元の氏子の方々のためのものだろう。車での来訪はお薦めしない。

飲食

「牛天神」の近くにはあまり飲食店はないが、飯田橋や後楽園などの駅周辺にさまざまな飲食店がある。気に入るお店も見つかるだろう。

周辺

「牛天神」の南東側、都道434号線を越えれば小石川後楽園と東京ドームが並ぶ。梅の季節に訪れる機会があれば、小石川後楽園の梅も併せて楽しんでおきたい。

少し距離があるが、西へ辿って白山通りを越えれば本郷、菊坂の周辺は古い町並みの残るところで、樋口一葉旧居跡などもある。中島歌子から樋口一葉への繋がりで足を延ばしてみるのも楽しい。
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