佳景探訪
国営昭和記念公園
東京都立川市の西部から昭島市の東部に跨って国営昭和記念公園が横たわっている。かつての米軍立川基地跡地を利用して造られた、広大な公園だ。新緑の眩しい五月の半ば、昭和記念公園を訪ねた。



国営昭和記念公園

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国営昭和記念公園はその名が示すように国によって運営される公園で、計画面積180haほど(2013年現在で165haほどが開園)という広大なものだ。園内は「みどりの文化ゾーン」、「展示施設ゾーン」、「水のゾーン」、「広場ゾーン」、「森のゾーン」というエリアに分けられ、それらのエリア内にゾーンのテーマに沿って広大な原っぱや池、林地、プールやバーベキュー場などの施設が設けられている。その規模と充実した施設は公園というものに求められる要素のほぼ全てを満たしていると言っても過言ではない。

大規模災害発生時の避難所の機能も持たせて設計されたという昭和記念公園はとにかく広い。圧倒的な広さだと言っていい。160ha超という面積は数字を見ても実感しにくいが、例えば立川口のゲートから公園の中心部を一周するように設けられたメインの園路を辿って戻ってくるだけでも4kmを超える距離になり、ただ歩くだけで1時間ほどを要する。それほどの広さだ。そのような広大な公園が、東京都内の、JR中央線の駅から徒歩圏内に存在することは驚くべきことかもしれない。

この立地で、何故これほどの広大な敷地が確保できたのか。実は、昭和記念公園の造られた場所はかつての米軍立川基地の跡地なのだ。この場所は、そもそもは昭和初期に立川陸軍飛行場のあったところで、戦後、米軍によって接収され、米空軍立川基地として使用されてきた。1955年(昭和30年)から1957年(昭和32年)にかけての頃、滑走路の拡張計画に対する地元地権者の反対運動が起こった。1957年(昭和32年)、測量を強行しようとする政府側と反対派のデモ隊が衝突、デモ隊の一部が基地内に立ち入ったとして起訴される事態に至る。いわゆる「砂川事件」として知られるものだが、これもすでに歴史のひとこまか。この後、立川基地の拡張計画は停滞、米軍側は基地機能を横田飛行場へ順次移転させてゆく。やがて立川基地は飛行場としては使用されなくなり、宿舎や病院施設などを残すのみとなったが、それらも横田へ移転、1977年(昭和52年)に全面返還を迎えている。

その立川基地跡地の一部を使用して、昭和天皇御在位50年記念事業の一環として造られたのが国営昭和記念公園だ。立川基地跡地の180haを使用して公園を建設することが閣議決定されたのは1979年(昭和54年)、翌年には建設工事が始まり、開園したのは1983年(昭和58年)のことだ。昭和天皇御臨席のもとで開園式典が執り行われた。開園時は「みんなの原っぱ」や「花木園」など、70haほどの面積だったという。その後、順次規模を拡張、施設を充実させながら現在に至っている。

広大な園内は木々が茂って緑に溢れ、開放感に富んだ草はらがあり、ボート遊びの楽しめる池もある。端正に整備された園内の風景も美しく、四季折々の花々も楽しめる。当然のことながら人気は高く、特に行楽シーズンの週末休日には大勢の来園者で賑わう。学校や幼稚園、保育園などの遠足の場所として使われることも多く、遠方からバスで来園する学校なども少なくないようだ。家族やグループでお弁当を持ってピクニック感覚で、あるいはそれぞれの花の見頃にカメラやスケッチブックを携えて、そしてまた一人でゆったりとした時間を過ごすために、昭和記念公園はさまざまな愉しみ方に応えてくれる。

広大な園内はそのすべてを一日で愉しむのは不可能と言ってよく、一度訪れると何度も足を運びたくなる。何度訪れても新しい発見があり、飽きることがない。初夏の新緑の頃が最も魅力的だと思えるが、春の桜や秋の紅葉も美しく、冬の公園にも興趣があり、それぞれの季節に訪れて、その表情を愉しむのがお勧めだろう。公園のメイン部分は入園料が必要だが、支払った入園料に見合った以上の魅力に溢れ、充実したひとときを提供してくれる、素晴らしい公園である。
カナール(展示施設ゾーン)
立川駅から「みどりの文化ゾーン」を抜け、立川口のゲートから本園部分に入園すれば、出迎えてくれるのがカナールだ。

「カナール」は原語では「canal」と書き、運河や人工の水路を意味する英語だが、特に造園用語としては静水の水路のことを指す。平坦地に造られた幾何学式西洋庭園、いわゆるフランス式庭園で多用され、有名なものではフランスのヴェルサイユ宮殿の庭園に造られたグラン・カナルなどがある。

昭和記念公園のカナールは全長200m、直線を基調にデザインされた景観が端正な美しさを見せる。水路脇には舗道が延び、さらにその外側にはそれぞれ二列のイチョウ並木が沿っている。立川口ゲート側からカナールを見れば、水路や舗道、イチョウ並木の描くラインが奥の大噴水へ向けて収束してゆく。その景観が一点透視法で描かれた絵画のようだ。

カナールに沿ったイチョウ並木は秋の黄葉の見事さが広く知られているが、新緑の季節の景観も素晴らしい。若葉の萌えるイチョウ並木を、木漏れ日を浴びながら歩くのは何とも爽やかな気分がする。このイチョウ並木は上部を切り詰めたように背が低く、独特の景観を見せる。これは北側に隣接する陸上自衛隊立川駐屯地に離発着するヘリコプターの飛行空域との干渉を防ぐために樹高が抑えられているからだ。

陽光を浴びる大噴水の姿も美しく、このカナールはまさに昭和記念公園のメインエントランスを担うに相応しい施設だろう。晩秋から初冬、クリスマス前の季節になればカナールを舞台にクリスマス・イルミネーションが施され、これも多くの観賞客を迎えている。
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ふれあい広場(展示施設ゾーン)
カナールの大噴水の傍らを抜けて西へ進むと、なだらかな起伏を伴った草はらが広がる。「ふれあい広場」と名付けられた一角だ。草はらの広場には随所に大きく枝を張った樹木が植栽され、その木々を縫うように舗装された園路が優美な曲線を描いて延びる。木々の樹形も美しく、穏やかな空気感に満ちた広場だ。

広場の一角にはレストランが建っている。白い外観のレストランは建物の意匠も洒落たもので、広場の景観のアクセントになっていると言っていい。レストランで食事やお茶を愉しみつつ、広場の景観を眺めて過ごすのも素敵なひとときだ。
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水鳥の池(水のゾーン)
「ふれあい広場」から「ふれあい橋」で残堀川を渡ると、目の前に「水鳥の池」と名付けられた、大きな池が横たわっている。その名の通り、野鳥のオアシスとでも言うべき水辺を成しており、池の北西側の岸辺にはバードサンクチュアリも設けられている。公園自体が広いから池も広く、水面の面積だけで5haほどもあるという。自然溢れる景観からは公園が造られる以前からこの場所に池があったのではないかと思ってしまうが、実は人工の池で、防水シートを張って雨水を溜めたものという。

池の東側には「ふれあい橋」からまっすぐに延びてきた園路の延長上の岸辺に広場が設けられ、池のほぼ全景を見渡すことができる。そこから北へ岸辺を辿れば池の岸辺に花木園やハーブ園などの施設が設けられている。池の南側にも岸辺を辿る園路があり、池の風景を眺めながらの散策が楽しめる。池の周囲には木々が茂り、木々の緑と池とが織り成す風景はたいへんに美しい。池は複雑な形状をしており、島もあり、そのために岸辺を辿れば池はさまざまに表情を変え、景観に飽きることがない。

池の南側には西立川口ゲートが設けられており、JR青梅線西立川駅や西立川口駐車場を利用して来園する人たちは西立川口ゲートを利用して入園することになる。ゲートから入園してまっすぐに進むと「水鳥の池」の岸辺で、入園してまず「水鳥の池」に出迎えられるというのも、公園のエントランスとして魅力的なのではないかと思える。

池の西岸には貸ボート場があり、手漕ぎのボートや自転車のように足で漕ぐタイプのサイクルボートが用意されている。行楽シーズンの週末や休日にはボード遊びを楽しむ人の姿も多いが、平日ではほとんどいないようで、客を待つボードが岸辺に繋がれて浮かんでいる。その光景もなかなか興趣のあるものだ。

貸ボート場の横にはレイクサイドレストランが建っている。池を背景に貸ボート場やレストランを見れば、その風景は公園内の一角と言うより、どこか高原のリゾート地の湖畔を思わせる。レストラン前の木陰に用意されたテーブルで、池の風景やボート遊びを楽しむ人たちの姿を眺めながらお茶を楽しむのも素敵なひとときだろう。
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花木園菖蒲田(水のゾーン)
「水鳥の池」の北東側には花木園が設けられている。その一角には菖蒲田があり、六月には花菖蒲を楽しむことができるのだが、五月中旬には菖蒲田の池にスイレンが美しい花を咲かせている。菖蒲田の湿地には木道が辿っており、木道の上から間近にスイレンの花を楽しむことができるのが嬉しい。

菖蒲田は木々に包まれて周囲から隔てられ、ひっそりと落ち着いた佇まいが魅力の区画だ。園内が多くの来園者で賑わう季節だが、菖蒲田には散策を楽しむ人たちの姿がちらほらとあるくらいだ。スイレンの花を眺めながら、ひとときのんびりと時を過ごすのもよいものだ。
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レインボープールと水あそび広場(水のゾーン)
「水鳥の池」の西側にはレインボープールが設けられている。総面積63000平方メートルの敷地に9面のプールがあり、プールの水面積の合計は12000平方メートルを超えるそうだ。夏期のプール営業期間にはたいへんに賑わうが、五月ではまだプール開きの前、人の姿の無いプールが夏を待っている。

レインボープールの北東側には子どもたちのための「水あそび広場」も設けられている。レインボープールの営業期間中はその一部として入場料が必要のようだが、レインボープールの営業していない春と秋には無料で利用可能のようだ。汗ばむ陽気の五月、夏を待ちきれずに水遊びを楽しむ親子連れの姿がある。「水あそび広場」にはさまざまに趣向を凝らした水遊び用のプールが3面用意されているという。ナマズや巻き貝、魚などを象った噴水を設けたプールは幼児用のプールだそうだ。ナマズのとぼけた表情がユーモラスだ。
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みんなの原っぱ(広場のゾーン)
「水鳥の池」の東側を北へ辿り、花木園の脇を抜けて残堀川を渡り、さらに進むとその先には広々とした草はらが広がっている。「みんなの原っぱ」と名付けられた草はらは、昭和記念公園のほぼ中心に位置し、11haほどにもなる面積を有している。11haとはどれほどの広さなのか。11haは、すなわち110000平方メートル、100m×100mの正方形11個分の面積が11haである。「みんなの原っぱ」は実際には長円形に近い形をしており、東西に300メートルほど、南北には400メートル近い。初めて訪れたときにはその広さに驚く。広場の端に立てば、反対側の端は、大仰に言えば視界の遥か彼方だ。「みんなの原っぱ」はその広さを利用してさまざまなイベントの会場にもなるところだが、大規模災害発生時の一時避難所としての機能も持たせてあり、緊急時の飲料水を確保するための井戸も設けられているという。

「みんなの原っぱ」はほぼ平坦な草はらで、ところどころに大きな樹木が植えられている。その樹木が視界に収まることによって、さらに広さを実感する。印象的な姿で樹木の立つ広大な原っぱの景観は、昭和記念公園を象徴するものと言っていい。当然のことながら「みんなの原っぱ」を利用する人は多く、行楽シーズンの休日にもなれば、この広大な原っぱが来園者で埋め尽くされるほどだ。初夏の遠足シーズン、広場のあちこちに遠足で訪れたらしい団体の姿がある。中学生や小学生、幼稚園や保育園の親子遠足など、何組もの団体が遠足で訪れている。お弁当の時間になると、日差しを避けてそれぞれに樹木の木陰に集まっている。その光景が少しユーモラスだ。

「みんなの原っぱ」は、何と言ってもその広さによる開放感が最大の魅力だ。広場の中に立つと、空の広さというものを実感する。のんびりと散策したり、木陰にシートを敷いて寝転んだり、その広さがもたらす開放感を充分に堪能するのが「みんなの原っぱ」のお勧めの愉しみ方だろう。
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原っぱ西花畑(広場のゾーン)
今回訪れたのは(2013年)5月中旬、「みんなの原っぱ」南西側に設けられた花畑ではポピーが見頃を迎えていた。昭和記念公園では4月初めから5月の終わり頃までポピーの花を楽しめる。5月中旬になればそろそろアイスランドポピーは見頃の時期を過ぎ、代わってシャーレーポピーが見頃を迎える。

花畑の立地はほぼ平坦だが、その中にもわずかな起伏があり、その起伏が花畑に表情を与えて美しい景観を見せてくれる。花畑の中を縫って辿る小径を歩けば、眼前に広がる花畑の光景を存分に堪能することができる。花畑は「みんなの原っぱ」の端に位置しているから、視点によってさまざまな表情を楽しめるのも嬉しい。広々とした原っぱを背景に花畑を眺めるのもよく、あるいは原っぱ側から緑の木々を背景にした花畑を眺めるのも美しい。初夏の陽光の下、青い空と緑の木々、そして色彩豊かな花畑とが織り成す風景はどの表情も美しくフォトジェニックだ。

花畑は中を辿る小径によって“区画”に分けられた形で、アイスランドポピーがまだまだ見頃の場所もあれば、アイスランドポピーが終わった後にシャーレーポピーとジャーマンカモミールが咲いている場所もある。どの花もそれぞれに美しく、それらの花々の見せてくれる風景は、明るい陽光の下でありながら少し夢想的な味わいがあって、その中に身を置いていると時の経つのを忘れる。

花畑は、その中を辿る小径を巡って楽しむのがお勧めだが、花畑から少し離れて「みんなの原っぱ」の中から花畑を眺めるのも悪くない。原っぱにシートを広げてくつろぐ人たちの背景に緑の木々と鮮やかな花畑が見えるのも、なかなかドリーミーで素敵な風景だ。
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渓流広場(広場のゾーン)
「みんなの原っぱ」の西側には木立を縫って流れる小川がある。「渓流広場」の名で呼ばれるところだ。「渓流広場」は総延長700mだそうだ。小川は南北に長く、南端部では池が設けられて周辺も広々としているが、北へ行くほど山間部の渓流を彷彿とさせる風景だ。小川にはところどころに橋が架けられ、あるいは飛び石が設けられて東西の行き来が可能になっている。木々に包まれた小川の風景はしっとりと落ち着いていて潤いがあり、木漏れ日を浴びながらの散策は心安らぐひとときだ。

南端部に設けられた池の周辺には多くの花壇が設けられている。この花壇には春にはチューリップが植えられて見事な景観となる。チューリップが見頃を迎える時期には、これを目当てに来園する人も少なくないほどだ。
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トンボの湿地(広場のゾーン)
「みんな原っぱ」の北西側の林の中、「トンボの湿地」と名付けられた池がある。池は、面積1000平方m、外周長約140mだそうだ。もちろん人工の池だが、自然に近い景観が見事に再現されている。その名から容易に推測できるが、トンボやアメンボ、ミズスマシなどの水生昆虫類が自然発生できるような環境が造られているという。湿地には木道が設けられ、水辺の様子を間近に観察できるのが嬉しい。
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こどもの森(森のゾーン)
小学生くらいの年頃の子どもたちにとって、昭和記念公園内で最も魅力的なところは、おそらく「こどもの森」だろう。木々の茂った区画内にはさまざまに工夫を凝らした遊具設備が設けられている。広場の中に各種の遊具を設置しただけ、といった安易なものではなく、それぞれに特徴のある遊具設備が「こどもの森」の中に巧みに配置され、全体でひとつの大きな“遊びの空間”を成しているという印象だ。

「地底の泉」はすり鉢状の大きな穴で、その名が示すように穴の底には“泉”が設けられている。外縁部から底へと遊歩道が渦巻きを描き、少しばかり不思議な印象の空間だ。

アステカのピラミッドを彷彿とさせる巨大な構造物は、その名も「太陽のピラミッド」だ。天候に恵まれれば頂上から富士山も見えるという。

「虹のハンモック」は支柱を立ててネットを張った遊具だ。同様のものは他の公園でも見ることができるが、何しろ規模が大きい。小学校に上がる前くらいの年齢の子どもたちに人気の遊具だ。

大きな白い半球体が並ぶのは「雲の海」、空気で膨らんだドームがトランポリンのように弾み、その上で飛び跳ねて遊ぶ遊具だ。

口を開けた巨大なドラゴンの頭を象ったオブジェが置かれているのは「ドラゴンの砂山」、広場全体が砂場になっている。ドラゴンの頭に乗ったり、口の中に入ったりして遊ぶ施設だ。

その他にも大型の複合遊具を置いた「森のとりで」や「空のすべり台」と名付けられた長いローラースライダーなど、さまざまな施設が設けられている。

それぞれの設備は木々に囲まれて独立した区画を与えられており、そのために周囲からはその存在に気付きにくく、初めて訪れたときには「この先には何があるのだろう」と思わせてくれる楽しさもある。それが子どもたちの“遊び心”をくすぐり、「こどもの森」を“探検する”という遊びも提供してくれるに違いない。
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こもれびの丘(森のゾーン)
昭和記念公園の北端部には「こもれびの丘」と名付けられた雑木林の丘が横たわっている。かつてこの地域にあった「武蔵野の雑木林」を再生する目的で設けられたものだそうだ。管理にはボランティアの人たちも参加し、“里山文化”の再生が図られているようだ。木々を縫って辿る散策路を歩けば、初夏には新緑が美しく、その名のように木漏れ日を浴びながらの散歩が楽しい。
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日本庭園(森のゾーン)
「みんなの原っぱ」から林地を挟んだ北側に「日本庭園」が設けられている。“公園内に設けられた日本庭園風の一角”といったものではなく、周囲から完全に独立して設置された本格的な日本庭園だ。1997年(平成9年)に完成したもので、首都圏で戦後造られたものとしては最大規模の日本庭園だそうだ。

約6ヘクタールという敷地面積が与えられた庭園は中央部に池を置き、その周囲を散策路が巡る、いわゆる回遊式泉水庭園として造られている。池には西側と北側、東側からそれぞれ流れが導かれ、特に北側の流れには小さな滝も設けられている。

池の岸辺には「歓楓亭」や「清池軒」といった建物をはじめ、「昌陽」、「涼暮亭」と名付けられた四阿も建ち、それらの建物の姿も日本庭園に調和して趣のある景観を生み出している。「歓楓亭」は茶会や句会などに使用できるのだそうだ。「清池軒」は池に張り出すように造られた休憩棟で、美しい庭園の眺めを堪能することができる。

庭園は深い緑に包まれ、静かで穏やかな空間を成している。多くの日本庭園ではカシやシイなどの常緑樹を多く用いるが、ここでは武蔵野の雑木林の植生に倣ってコナラやカエデなどの落葉樹が多いのだそうで、そのため晩秋には見事な紅葉の景観を見ることもできる。庭園を取り巻くように茂った木々は、外部の人工物が庭園内部から視界に入らないように工夫されているのだという。それでも広々と開放感を感じさせるのは、その広さがもたらす奥行き感によるものだろう。

池の周囲を巡る散策路を辿れば、庭園はさまざまに美しい表情を見せ、回遊式庭園の魅力を存分に堪能することができる。池の東側に架けられた橋も良い風情だ。早春の梅や水仙、春の桜やツツジ、夏の紫陽花や花菖蒲、秋には萩や紅葉と、四季折々に花々も楽しめる。新しく造られた庭園だが、日本庭園の古来の美意識に則って造られた見事な庭園と言っていいのではないか。

日本庭園内北側の一角には「盆栽苑」が設けられている。日本初の公営盆栽展示施設だそうだ。社団法人日本盆栽協会の協力によって寄贈された名品が数十鉢以上展示されているという。興味のある人には見逃せない施設だろう。
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こもれびの里(森のゾーン)
昭和記念公園の北東端、砂川口の南側には「こもれびの里」という区画が設けられている。「こもれびの里」は「昭和」、「武蔵野」、「農業」をキーワードにして、昭和30年代の武蔵野の農村風景を再現することを目的としたものという。「こもれびの里」の中には畑地があり、水田があり、小川が流れ、池があり、丘があり、古民家や水車小屋なども建てられ、“古き佳き”農村の風景がうまく再現されていると言っていい。

古民家は幕末の頃に和泉村(現在の狛江市)で名主を務めていた石井家の住宅という。「こもれびの里」には石井家の主屋、長屋門、内蔵などが移築復元され、その外観や主屋の内部なども見学することができる。こうした建物に興味のある人にはお勧めのものだが、特に興味がなくてもそれらの佇まいの中に江戸時代末期の名主の暮らしぶりを想像してみるのは楽しい。

広い敷地が与えられているとはいえ、古来の農村風景をそのままに残したものとは違って、公園内の一角に新たに“造られた”ものだから、人々の暮らしの息づかいのようなものが感じられず、どこか箱庭的で展示物的な印象があるのは否めない。しかし丁寧に整備されて再現された農村風景は往時の武蔵野の風景を偲ぶには充分に魅力的なものだ。田圃の横を流れる小川や丘の上に広がる畑などが織り成す風景に懐かしさを覚える人も少なくないだろう。

「こもれびの里」では単に景観のみを再現するに留まらず、キーワードにもあるように農業そのものも再現する取り組みが行われているようだ。「こもれびの里クラブ」というボランティア団体が組織され、水田や畑での農作業、樹林地の整備管理、年中行事の開催など、さまざまな活動が行われているという。そうした活動に興味のある人は「こもれびの里クラブ」への参加を検討してみるのもよいかもしれない。

「こもれびの里」は2002年(平成14年)から「こもれびの里クラブ」による活動が始まり、畑地が造られ、水田が造られ、作業小屋が建てられ、徐々に整備が進んで、2007年(平成19年)10月に開園した。その行程を「こもれびの里」では「開拓」という言葉で表現している。それはまさに遠い昔に先人たちが荒れ野を開墾し、畑や田圃を造って作物を育て、暮らしを育んだ歴史に準えることのできるものだろう。やがて年月を重ねてゆくうちに、「こもれびの里」にも人々の営みの歴史が積み重なってゆき、その景観も少しずつ変わってゆくのに違いない。
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花の丘(森のゾーン)
「こもれびの里」の西側には小高い丘があり、その東側斜面、すなわち「こもれびの里」を見下ろす斜面は「花の丘」と呼ばれるところだ。五月の中旬、「花の丘」ではシャーレーポピーが見頃を迎えていた。シャーレーポピーは虞美人草(グビジンソウ)とも言い、いわゆる「雛芥子(ヒナゲシ)」の園芸品種だ。一輪一輪の花も可憐だが、やはり数多くが群生して咲く景観が美しく魅力的な花だと言えるだろう。

五月の陽光の下、「花の丘」の斜面を覆い尽くすように真っ赤なシャーレーポピーが咲き誇る。まさに圧巻の景観だ。丘の下の園路から見上げれば丘上の樹木や初夏の青空を背景にシャーレーポピーの赤い花が映えて、木々の緑と空の青、そしてシャーレーポピーの赤とが生み出す色彩のコントラスト阿がたいへんに美しい。

「花の丘」斜面に設けられた園路を辿れば咲き誇るシャーレーポピーに包まれるようにして観賞することができる。園路を辿ってゆけば景観の表情も変わり、さまざまな美しさを見せる「花の丘」に飽きることがない。どちらを向いてもフォトジェニックな風景の広がる「花の丘」だ。カメラを携えて訪れている人の姿も多く、園路のあちこちでシャーレーポピーにカメラを向ける人の姿があり、シャーレーポピーを背景に記念撮影を楽しむ人たちの姿も少なくない。

丘の上に立てば、眼下にシャーレーポピーに覆われた斜面が広がり、その向こうに「こもれびの里」の景観が重なり、さらにその向こうには立川市街の景観が望める。これもまた素晴らしい景観だ。この丘は盛土で造られた人造の丘だが、その頂上は立川市で最も標高の高いところだという。丘の西側は「こもれびの丘」に連なり、木々が鬱蒼と茂って“造られた”丘であることが信じられないほどだ。

シャーレーポピーの景観を堪能しつつ「花の丘」を巡っていると、ときおり丘下の園路をパークトレインが行き過ぎる。ゆっくりと行き過ぎるパークトレインの姿と「花の丘」の風景との取り合わせも、“公園の風景”としての興趣が感じられて良い風情だ。

「花の丘」は秋にはコスモスが植えられ、斜面を埋め尽くしてコスモスが咲き誇る。その景観もまた素晴らしい。花の好きな人、花の写真趣味の人にはお勧めの「花の丘」である。
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パークトレイン
昭和記念公園内には「パークトレイン」と呼ばれる園内バスが運行している。パークトレインは基本的には立川口と砂川口を繋いで園内外周路を運行している。「バス」とは言っても蒸気機関車を模して造られた電動車で、園路をのんびりと走る姿がなかなか可愛らしい。

パークトレインは曜日によって便数が異なるが、1時間に3便から5便ほどが運行し、要所に設けられた乗り場から利用することができる。もちろん入園料とは別に乗車料金が必要だが、一日フリーパスなども用意されている。

何しろ広大な公園だ。園内を巡っていると歩き疲れてしまうこともある。そんなときはパークトレインを利用するのも楽しい。特に小さな子ども連れなら“アトラクション感覚”で乗ってみるのも悪くない。パークトレインの上からのんびりと園内の風景を楽しむのも一興というものだろう。
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参考情報
本欄の内容は昭和記念公園関連ページ共通です
昭和記念公園は一部区画を除いて基本的に入園料が必要だ。入園料、開園日、開園時間等については昭和記念公園公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

昭和記念公園へはJR青梅線西立川駅が近い。西立川駅から北へ出れば公園の「西立川口」へ徒歩で二、三分と至近だ。JR中央線立川駅や多摩都市モノレールの立川北駅からなら南東側の「立川口」へ徒歩で十数分、JR青梅線東中神駅からは西側の「昭島口」へ徒歩で十分ほどと、これらも充分に歩ける距離だ。北側には「玉川上水口」と「砂川口」が設けられているから、訪れる手段に応じて便利な入口を利用するといい。

車で来訪する場合には、さまざまなルートが考えられるが、新奥多摩街道から北上する方法や、五日市街道から南下する方法などがわかりやすいだろう。遠方の人は中央高速道路を利用し、国立府中ICから向かうのが近い。

駐車場は「立川口」、「西立川口」、「砂川口」のそれぞれに用意されており、所定の駐車料金を支払えば一日駐車しておくことができる。全部で2000台分を超える駐車スペースが用意されているが、行楽シーズンの休日にはこれでも足りない。余裕を持って出かけた方がいい。

飲食

家族連れならやはりお弁当を用意し、広場でのアウトドアランチがお勧めだ。陽気の良い季節には爽やかなひとときを過ごすことができるだろう。立川駅方面から訪れる人なら駅周辺のお店でお弁当などを買い込んでから訪れてもいい。園内には三つのレストランがあるが、来園者の多いときには混み合うのは覚悟しておいた方がいい。軽食を販売する売店も園内随所にあるのでそれらを利用するのもいい。

周辺

公園の東南側には立川駅周辺の繁華街が近い。特に北口は米軍基地の跡地を再開発したエリアで、「ファーレ立川」の愛称で呼ばれ、町角に数多くのパブリックアート作品が展示されている。町歩きの好きな人は立ち寄ってみるといい。

春の桜の季節であれば根川緑道から残堀川の桜並木を訪ねてみるのもお勧めだ。多摩都市モノレールを利用すれば近いが、昭和記念公園西立川口から歩いても残堀川まで20分ほどだ。6月には柴崎体育館北側に設けられた花菖蒲園を訪ねてみるのもいい。
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