佳景探訪
森戸海岸
神奈川県葉山町の森戸海岸は葉山を代表するビーチだ。夏になれば大勢の海水浴客で賑わう。南側には葉山の総鎮守である森戸大明神が鎮座する。夏の訪れを待つ六月下旬、森戸海岸を訪ねた。



森戸海岸

森戸海岸

森戸海岸

森戸海岸
神奈川県葉山町は美しい海岸を誇る町である。弧を描く浜辺と小さく海に突き出す岬、風情豊かなマリーナや漁港が織り成す海辺の風景はたいへんに美しく、葉山の町を象徴するイメージとして定着している。葉山の海岸は「葉山海岸」として「日本の渚百選」にも選出されているが、その中でも最も有名なビーチが森戸海岸だろう。

森戸海岸は森戸川河口部から北に延びる浜辺で、夏には森戸海岸海水浴場として大いに賑わうところだ。葉山の中でいちばん広い砂浜だそうである。浜辺に立って北に視線を向ければ葉山と逗子の境に横たわる尾根が緑濃く横たわり、さらにその向こうに逗子の大崎公園の辺りが見え、その西には稲村ヶ崎から七里ヶ浜、江の島へと続く。なかなか素敵な景観である。

六月、夏を待ちきれない様子の人たちが森戸海岸を訪れている。波打ち際や森戸川の河口部では子どもたちが水遊びに歓声を上げている。森戸川近くに設けられたバーベキュー場ではバーベキューを楽しむ家族連れやグループの姿も多い。沖にはマリンスポーツを楽しむ人の姿もあり、リゾート感漂う風景だ。そんな“夏を待つ浜辺”の風情を感じながらの散策が楽しい。




森戸神社

みそぎ橋

千貫松

名島の鳥居と裕次郎灯台

石原裕次郎祈念碑

森戸神社下の磯辺
森戸海岸の南側、森戸川を挟んで小さな岬に森戸神社(森戸大明神)が鎮座している。森戸川には「みそぎ橋」という小さな橋が架かって森戸海岸と森戸神社を繋いでいる。朱い姿が印象的な「みそぎ橋」は「かながわの名橋100選」のひとつ。森戸の浜辺で昔から“禊ぎ”が行われていたことから、神社から浜辺に通じる橋を「みそぎ橋」と呼ぶようになったものという。

森戸神社は大山祗命(おおやまつみのみこと)と事代主命(ことしろぬしのみこと)の二柱の神を祀る神社で、1180年(治承4年)、鎌倉を本拠として関東の制圧に成功した源頼朝が三嶋明神の分霊を勧請して建立したものという。以来、源氏はもとより、北条氏、足利氏、さらには徳川家からも篤い崇敬を受け、葉山の総鎮守として信仰されてきた神社だ。訪れたときにはぜひ参拝しておきたい。

森戸神社の社殿横を通り抜けると岬の突端部へ出ることができる。社殿のちょうど裏手辺り、磯辺の岩塊の上に松の木があり、横に「千貫松」と記された石碑が建っている。衣笠城へ向かう途中の源頼朝が森戸の浜で休憩し、その際に岩上の松を見て「如何にも珍しき松」と褒めたという。それに対して出迎えの和田義盛が「我等はこれを千貫の値ありとて千貫松と呼びて候」と答えたそうである。

岬の沖、800mほどのところには小さな島が浮かんでいる。名島(菜島)という。名島には鳥居が建っており、朱い鳥居が海に浮かぶ光景がなかなか印象的だ。

その手前、森戸神社から見れば左側の岩礁には葉山灯台が建っている。この葉山灯台は裕次郎灯台とも呼ばれる。裕次郎灯台は1989年(平成元年)、故石原裕次郎の三回忌に、兄の石原慎太郎氏が資金を集めて建造したものだ。森戸神社の境内地から磯辺へと降りる石段の脇に「石原裕次郎祈念碑」が建っている。今も裕次郎ファンが多く訪れるという。

何と言っても森戸の岬から見える風景、裕次郎灯台や名島の鳥居、海を往くヨットのシルエット、沖に霞む江の島の島影が織り成す風景が何とも美しい。さらに天候に恵まれれば遠く富士山の姿も見える。できれば夕刻、海の向こうに夕陽が沈む時刻が素晴らしい。「かながわの景勝50選」のひとつ、「森戸の夕照(もりとのせきしょう)」である。




真名瀬海岸

真名瀬海岸

真名瀬海岸

真名瀬海岸
森戸神社下の磯辺から南側へ回り込むと小さな砂浜が横たわっている。真名瀬(しんなぜ)海岸である。真名瀬海岸の砂浜はそれほど広くなく、ほとんどの人たちが森戸神社下の辺りで遊んでいる。真名瀬海岸からは裕次郎灯台や名島の鳥居が正面に見える。方向によっては磯遊びをする人たちの向こうに江の島の島影が見えて、なかなかフォトジェニックな風景である。

真名瀬海岸に面して「デニーズ葉山森戸店」が建っている。相模湾を一望するテラス席が人気の店だ。のんびりと一休みするのもお勧めだ。
追記 「デニーズ葉山森戸店」は2019年(平成31年)1月31日18時をもって閉店した。建物の経年劣化など、諸般の事情という。

「デニーズ葉山森戸店」の北側と南側、海岸の家々の間を縫うように海岸に出る小径がある。この小径から真名瀬の海岸を眺める風景が、これもなかなかフォトジェニックだ。小径を抜けてゆけば浜辺に出る、というロケーションがリゾート感を誘って素敵だ。

真名瀬海岸の南側には真名瀬の漁港がある。浜辺から見る漁港の風景も風趣に富んでいる。のんびりと散策の足を延ばしてみるのも悪くない。





葉山海岸通り

葉山海岸通り

葉山海岸通り

葉山海岸通り
真名瀬海岸から森戸海岸にかけての辺りは葉山町堀内の町だ。海岸近くに家々が建ち並んでいる。その中を縫うように、海岸に沿って県道207号森戸海岸線が南北に延びる。県道にはバス路線も通っているが概して狭く、車で通る際には対向車とのすれ違いで気を遣う場面も多い。

この県道207号、特に森戸神社への入口辺りから北にかけて、道沿いにはお洒落なカフェやレストランが点在し、“海辺リゾートの町”としての葉山のイメージを象徴する景観が続く。その中に古い建物の店舗なども混じり、良い風情を漂わせる。町歩きの好きな人にはお勧めのところである。

道沿いに「葉山海岸通り」と記したネームプレートが立っている。葉山町商工会の地域活性化委員会による「葉山の通りに名前をつけようプロジェクト」が作ったプレートだそうである。濃い青のプレートに白い文字が葉山の雰囲気によく似合っていてお洒落だ。このプレート自体がフォトジェニック、プレートを背景に入れて記念撮影も楽しい。




あじさい公園

あじさい公園

あじさい公園

あじさい公園
森戸神社入口から県道207号を100mほど南へ辿り、東側(山側)へと家々の中の道を辿っていくと、県道から500mほどで「あじさい公園」に着く。「あじさい公園」は「はやま三ヶ岡山緑地」の北西側の斜面に設けられた公園で、「はやま三ヶ岡山緑地」内を辿るハイキングコースの入口も兼ねている。

「あじさい公園」はその名の通り、紫陽花の名所である。公園自体は面積2,300平方メートルを少し超える程度の小さな公園だが、そこに約3,000株の紫陽花が植えられている。「かながわ花の名所100選」のひとつでもある。

特筆すべきは園内の展望所からの眺望である。北西側に視界が開けた展望所からは堀内の町並みを見下ろし、その向こうに真名瀬から森戸の海岸を望む。さらにその向こうには相模湾が横たわり、遠く江の島の島影を見る。絶景である。

紫陽花の咲く季節ならぜひ足を延ばしたい公園だが、紫陽花の季節でなくても、その眺望だけで充分に楽しめる。森戸海岸周辺の散策の際には足を延ばしておきたい。
参考情報
交通

森戸海岸へはJR横須賀線逗子駅や京浜急行逗子線新逗子駅からバスを利用しなくてはならない。「海岸回り」の葉山町行きや葉山町福祉文化会館行きの路線を利用すればいい。

車で訪れる場合は県道207号沿いに点在する民間駐車場を利用しよう。

遠方から車で訪れる場合、横浜横須賀道路を利用するといい。逗子ICから逗葉新道経由で約7km、横須賀ICから県道27号経由で約9kmだ。行楽シーズンの休日には渋滞する。余裕を持って出かけよう。

飲食

森戸海岸周辺には県道207号沿いを中心にさまざまな飲食店がある。お洒落なカフェやレストラン、昔ながらの磯料理の店など、好みの店を見つけて食事を楽しむのがお勧めだ。

周辺

森戸海岸の北には有名な葉山マリーナがある。周辺をのんびりと散策するのも楽しい。さらに北へ辿れば市境を越えて逗子市、逗子海岸へと散策の足を延ばすのもお勧めだ。

森戸海岸の南側の浜辺は真名瀬海岸、真名瀬海岸から真名瀬漁港周辺をメインに据えて散策を楽しむのもいい。堀内の町を東へ入り込むと「あじさい公園」がある。県道207号から数百メートルの距離だ。紫陽花が見事な公園だが、園内からの眺望も素晴らしい。

「あじさい公園」は、その南側に横たわる「神奈川県立はやま三ヶ岡山緑地」のハイキングコースの入口でもある。時間と体力に余裕があれば、緑地のハイキングも楽しみたい。

「神奈川県立はやま三ヶ岡山緑地」の南側は一色の町、一色海から小磯の鼻、神奈川県立近代美術館葉山館、葉山しおさい公園など、散策の楽しいところだ。
森戸海岸

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