埼玉県ときがわ町、町役場近くの都幾川河岸に「ときがわ花菖蒲園」が設けられている。六月には花菖蒲が河岸を彩り、多くの来園者を迎えて賑わう。花菖蒲が見頃となった六月半ば、ときがわ花菖蒲園を訪ねた。
「ときがわ花菖蒲園」は2024年(令和6年)を最後に閉園となった。「ときがわ花菖蒲園」を維持管理していた地元の有志団体「花菖蒲を育てる会」の会員数の減少や会員の高齢化によって継続が困難との判断となったようだ。「ときがわ花菖蒲まつり」も2024年(令和6年)の第22回開催をもって終了した。本頁の内容は、2013年(平成25年)に「ときがわ花菖蒲園」を訪ねたときのものである。花菖蒲の名所として多くの人が訪れていた頃の記録、あるいは想い出として、このまま公開しておきたい。
ときがわ花菖蒲園
ときがわ花菖蒲園
埼玉県ときがわ町は2006年(平成18年)に埼玉県比企郡の都幾川村と玉川村とが合併して誕生した。新町名は両村を都幾川(ときがわ)が流れていたことに由来するようだが、「都幾川」が難読なため、ひらがな表記になったものらしい。現在のときがわ町役場は旧玉川村役場で、町域の東端に近い都幾川の河畔に建っている。

役場の西側は都幾川左岸の低地で、本来は農地だが、その遊休地を利用して「ときがわ花菖蒲園」が設けられている。ときがわ花菖蒲園は地域活性化と町おこしのため、町民の有志グループ「花菖蒲を育てる会」によって始められたものらしい。2013年現在、8800平方メートルほどの面積に8000株ほどの花菖蒲が育成されているという。花菖蒲が見頃を迎える6月には、多くの観賞客が訪れる。6月中旬の日曜日には「花菖蒲まつり」も開催され、太鼓演奏や踊りなども披露され、大いに賑わうという。「花菖蒲まつり」は2013年で第11回を迎えるそうだ。
ときがわ花菖蒲園
ときがわ花菖蒲園
ときがわ花菖蒲園は、都幾川の河岸という立地がいい。本来は河岸の低地に広がる水田だったのだろう。花菖蒲園の周囲には今でも耕作される水田が残っており、ちょうど田植えを終えたばかりで、若い苗が風に揺れている。河岸の農地の南側は一段高くなって住宅などが建ち並んでいるが、両者の間には木々が茂って隔てられている。北には都幾川が流れ、対岸には鬱蒼と木々が茂るばかりだ。役場の裏手に設けられた花菖蒲園の入口に立って眺めれば、緑の木々に囲まれるようにして横たわる河岸の農地の全体像がよくわかる。その向こうに見える山は愛宕山だろう。そのような景観の中、花菖蒲園はしっとりとした風情を漂わせている。
ときがわ花菖蒲園
ときがわ花菖蒲園
菖蒲田には、その中を縫うように木道が設置されている。木道を辿れば花菖蒲を間近に観賞でき、その美しさを存分に堪能することができる。進むにつれて花菖蒲園の見せる景観は表情を変え、その変化も楽しい。入口から離れた西側では、育成中なのか、花の疎らなところもあったが、入口近くの東側では菖蒲田を埋め尽くして咲き誇る花菖蒲の圧巻の景観を楽しむことができた。“花菖蒲の咲く景観”として楽しむなら、やはり人工物が視界に入らない角度で眺めるのがいい。花菖蒲園の南東側の端に立って、都幾川対岸の木々や愛宕山の姿を背景に眺めれば、緑濃い風景の中に咲き誇る花菖蒲の景観がたいへんに美しい。
ときがわ花菖蒲園
ときがわ花菖蒲園
今回(2013年6月)、時間を作って平日に訪ねたので、比較的来園者も少なく、のんびりと花菖蒲を楽しむことができた。「花菖蒲まつり」に合わせて訪ねれば来園者も多く、さまざまなイベントが行われて賑わうのだろう。そうした賑わいの中で花菖蒲を楽しむのもまたよいものだろう。
ときがわ花菖蒲園
都幾川が花菖蒲園のすぐ北側を流れている。緑濃い風景の中を流れる都幾川の姿が美しい。都幾川はちょうど花菖蒲園の横で大きく蛇行している。その蛇行の様子も興趣のある風景だ。川原があり、瀬があり、川床を深く抉った淵があり、そこを河岸に茂った木々が覆う。そんな川の風景は、現在の特に都市圏では見られなくなってしまった。少しばかり懐かしさも感じる、川の風景だ。
ときがわ花菖蒲園
ときがわ花菖蒲園
都幾川の堤防道を歩けば、北には都幾川が流れ、南には花菖蒲園が横たわる。その双方の景観を楽しみながらの散策も一興というものだろう。堤防道にはテーブルも置かれているから、都幾川と花菖蒲とが織り成す風景を楽しみながらひとときのんびりと時を過ごすのもいい。お弁当を持参してランチタイムを楽しむのもお勧めだ。
花菖蒲散歩
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