日南海岸風景
石波海岸
石波海岸
串間市の太平洋岸北部に市木という地区がある。かつては市木村だったところだ。市木は美しい砂浜を抱えている。海岸に沿った国道448号を少し北へ辿ると、砂浜を見下ろす道路脇に駐車帯と展望所が設けられているから、ひとときその景色を堪能するといい。見事な孤を描いて長く延びる石波の砂浜は「日本の渚百選」にも選ばれており(「日本の渚百選」には「日南海岸」の名で選ばれている)、日南海岸の数々の浜辺の中でも屈指の美しさと言っていい。

石波の海岸に沿って鬱蒼とした亜熱帯樹林が広がっている。「石波の海岸樹林」として国の天然記念物にも指定されているもので、全長は約2キロにも及ぶ。「石波」バス停を少し行き過ぎたあたりの道脇に、「串間市教育委員会」と「宮崎県南部森林管理署」の名で解説を記した案内板が設置されている。それによれば「石波の海岸樹林」は「標高約3mの砂礫地及び砂地に発達しているタブノキを主体とする海岸特有の暖帯性広葉樹林」であるという。イソヤマアオキ、ハカマカズラ、タチバナなど、250種を超える亜熱帯性植物群によって構成される海岸樹林で、全国でも他に類を見ない貴重なものであると記されている。
石波海岸
国道に沿って南へ辿り、石波の集落を過ぎると「幸島入口」と書かれた案内板が目に入る。案内に従って海岸方面へと入り込んでゆくと駐車場があり、小さな商店が一軒建っている。美しい石波の渚はここから見ると北へ向かって孤を描き、砂浜の向こうには緑の山々が連なっている。蒼い空と緑の山々を背景に、浜辺に打ち寄せる波の白さが映える。南側の高みから見下ろす景観も美しいものだが、ここから見る渚の美しさもそれに劣らず素晴らしい。

目の前には間近に幸島の姿が見える。幸島への瀬渡船もあり、有名な猿の姿を見ようと島に渡る人も少なくない。ここから見る幸島は手が届きそうなほど近く、昔はここからでも猿の姿を見つけることもあったほどだ。潮の流れのせいなのか、砂浜から幸島に向けて浅瀬が延び、引き潮の時には歩いて渡れるほどになる。台風などの影響もあって瀬の状態は年によって異なるが、昔は潮が引くと完全に島と地続きになり、歩いて島に渡ったことがあった。今ではあまり頻繁に訪れる機会もなく、詳しい様子もわからない。

砂浜には波打ち際で遊ぶ家族連れの姿もあり、商店脇に形ばかりのシャワーが一基備えてあるが、実はこの砂浜は海水浴場ではなく、遊泳禁止区域でさえある。入り江の形状と島の影響なのか、沖では潮の流れが複雑に入り組み、危険なのだと聞いたことがある。皮肉なことだがそのことによって、この渚は昔ながらの美しさを保ち続けているのだろう。
石波海岸 石波海岸
石波海岸
「幸島入口」の駐車場脇に建つ商店には「浜の駅」という看板が掲げられているが、正式な名は「幸島浜の店」という。店はカレーライスややきそば、うどん、おにぎりなどの軽食や、夏場はかき氷などを商っている。

店主の岩本佳子さんがこの店を始められたのは1980年代の初め頃という。昔は幸島も都井岬も大勢の観光客で賑わっていたものだと、岩本さんは語る。今はすっかり観光客の姿も減った。店内には昔の幸島の写真なども飾られている。色あせた写真に残された昔の風景が懐かしさを誘う。

しかし、この店は、実は岩本さんが始められる以前からあった。おそらく昭和40年代頃にはすでにあったはずだが、店がいつできたのか、もはや正確にはわからない。先代の店主が高齢のために閉店し、店が無くなるのを惜しんだ岩本さんが店を引き継ぐ形で経営を継続、今に至っている。昔のことを知る身では、今も店が存続していることに不思議な安堵感を覚えるが、さまざまな苦労もあるに違いない。

近年、市木には他から移住してきた人が増えているという。「浜の駅」と記された看板も、そうした移住者の方による手作りだそうだ。
石波海岸
石波海岸
INFORMATION
石波海岸
【所】串間市大字市木
【問】串間市観光物産協会
このWEBページは「日南海岸散歩」内「日南海岸風景」カテゴリーのコンテンツです。
ページ内の写真は2000年夏、2006年夏、2017年夏に撮影したものです。本文は2018年4月に改稿しました。