横浜線沿線散歩街角散歩
横浜市中区元町〜山手町
初夏の元町から山手本通り
May 2010
初夏の元町から山手本通り
風薫る五月、横浜元町から山手へと目的を決めずにのんびりと歩いてみよう。2009年夏に開園した「アメリカ山公園」にも立ち寄ってみたい。ちょうどバラの美しい季節だ。いろいろなところでバラの花に出会うことができるだろう。
初夏の元町から山手本通り

初夏の元町から山手本通り

初夏の元町から山手本通り

初夏の元町から山手本通り
元町商店街は2004年の「みなとみらい線」開業に合わせるように街路の改修工事が施された。改修工事が終わった後の元町も何度か歩いたが、昼間の元町をカメラを片手に歩くのは今回が初めてだ。改めて言うことでもないが、元町商店街の街路は美しい。建ち並ぶ店々の佇まいも美しいし、道路そのものも美しい。車道と歩道との境には無粋なガードレールなどを設けず、夜になると足元を照らす街路灯と花の植えられた円形のプランターが並べられている。陽光を浴びる花々が季節を演出する。通り抜ける車両の速度を控えさせるために敢えて設けてあるのだろうと思われる車道部分の“曲がり”も、道路の景観に柔らかさを加えている。何ともお洒落な佇まいの商店街である。この雰囲気を味わうためにだけ訪れることもある。目的もなく、ただ元町商店街を歩き、カフェで一休みする。そんなひとときがあってもいい。

今回訪れたのは週末土曜日、元町商店街は車両の通行が禁止され、いわゆる“歩行者天国”となっている。元町商店街の通りは車両通行禁止なのだが、通りと直交する「代官坂通り」などには車両の通行があるわけで、買い物客で賑わう元町商店街を横切らなくてはならない。そこで交通整理が必要になるのだが、元町商店街で交通整理を行うスタッフは若い女性たちだ。このスタッフの女性たちは「元町ライトフェニックス」と呼ばれ、交通整理だけでなく、観光客への道案内もしてくれる。「元町ライトフェニックス」という名称は“光”の「ライト」と、元町のシンボルとして商店街の入口に設けられたウェルカムゲート上にも飾られている「フェニックス」に由来するものらしい。

今や休日の元町の“名物”にもなっている「ライトフェニックス」、誕生したのは1980年代半ばのことだ。それまでは男性警備員が交通整理を行っていたが、客のほとんどが女性で、観光客も多い元町では警備員に道を訊ねる人も少なくなく、堅苦しい男性警備員の姿は街の雰囲気にそぐわなかった。そこで、女子大生にやらせてみてはどうか、という案が浮上する。女子大生による交通整理という、前代未聞のアイデアだった。実行に移すために企画会社が設立され、フェリス女学院の女子学生がスタッフとして集められ、制服が作られ、1987年2月の「元町チャーミングセール」で「ライトフェニックス」はデビューする。もちろん初めから順調だったわけではない。始まった頃には車のドライバーから罵声を浴びせられることも少なくなかったという。しかし地元の警察署の協力もあり、その存在がメディアで紹介されることもあって認知度も増し、「ライトフェニックス」は次第に受け入れられてゆく。それから20年余、「ライトフェニックス」はすっかり元町に定着した。地元の人たちの車も出入りの業者の車も、彼女たちの指示にしっかりと従ってくれる。まるで彼女たちの指示を重んじることが、元町を愛する心の現れだとでもいうように。

交通整理という仕事は責任も重く、危険でもあり、たいへんな仕事だと思うが、仕事中の彼女たちは頼もしく、その姿はとても凛々しい。お洒落な元町でお洒落な制服に身を包み、観光客に道案内をし、交通整理を行う、その仕事に誇りを持っているのだろう。現在、「ライトフェニックス」は立ち上げた企画会社の手を離れ、別の警備会社によって運営されている。フェリス女学院の学生たちを集めて始まった「ライトフェニックス」も、今では他の大学の学生からのアルバイト希望も少なくないという。
初夏の元町から山手本通り

初夏の元町から山手本通り

初夏の元町から山手本通り

初夏の元町から山手本通り
元町の散策を楽しんだら、緑濃い山手へと上ろう。2009年夏に開園した「アメリカ山公園」に立ち寄りつつ、山手本通りへと向かうことにしよう。アメリカ山公園には初めて訪れる。公園の位置する山手97番地は横浜開港期にアメリカ公使館の予定地となったところであるらしい。実際にはアメリカ公使が住まうことはなかったが、そうした由来からの「アメリカ山公園」という名となったもののようだ。この公園は山手の丘陵地の端部とみなとみらい線の「元町・中華街駅」の駅舎屋上部とを一体化した敷地に造られているのも特筆すべきことだろう。2004年(平成16年)に改正された都市公園法による「立体都市公園制度」を活用したものだそうだ。公園は元町・中華街駅からエレベーターで上がってくることができ、観光客にとっては「山手」への玄関口のひとつとして機能することになるだろう。広い公園ではないが、端正な庭園風に整備され、園内随所でバラの花が咲いている。“山手の玄関口”としての役割を充分に担ってくれそうだ。

アメリカ山公園から横浜地方気象台の横を抜けて山手本通りへ出る。外国人墓地横の交差点だ。左に向かえば港の見える丘公園、この季節はローズガーデンのバラが見事だろうと思うが、今回は立ち寄らずに右へ折れよう。土曜日ということもあって山手本通りには観光客の姿が多い。シーズンオフの平日の静かな山手本通りも素敵だが、観光客で賑わう様子もまた良いものだ。山手資料館の前庭でもバラが美しく咲き誇っている。おや、と思った。以前は山手資料館の庭にバラは植えられていなかったのではないだろうか。後日、昔の写真を見てみると、2002年に撮影した写真にはバラが植えられている様子はない。それ以後に整備されたものなのだろう。

観光客で賑わう「えの木てい」の様子を眺めながら歩いて行くと元町公園、右にはエリスマン邸、左には山手234番館が建っている。瑞々しい緑の木々に包まれるようにして建つ姿がとても美しい。エリスマン邸の前の花壇で少しばかりバラが咲いている。横の広場ではスケッチを楽しむ人の姿も少なくない。そんな光景を楽しみながら、やがてベーリックホール、今回は館内には入らないが庭を通り抜けてゆこう。建物の前では、ここでもバラが少し咲いている。バラは横浜市の花、やはり初夏の横浜にはバラの花がよく似合う。ベーリックホールを出て山手本通りを少し西へ辿れば「代官坂上」交差点だ。代官坂を下りて元町へ戻り、そろそろ帰路を辿ることにしよう。
初夏の土曜日、元町からアメリカ山公園山手本通り元町公園付近だけを巡った。ほんの少しだけの散策だったが、バラの花も堪能することができ、爽やかな五月の風を感じながらの散策は気持ちのよいものだ。観光に訪れた人なら、これに港の見える丘公園を加えて、それぞれの場所に時間をかければ、初夏の横浜山手を充分に堪能できるだろう。
初夏の元町から山手本通り