横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市中区山手町
港の見える丘公園
May 2018
港の見える丘公園
港の見える丘公園は横浜観光に欠かすことのできない、横浜の代表的観光地のひとつだ。同じく横浜の代表的観光名所として知られる山下公園と同様、市民の憩いの場である「公園」としての性格と横浜を象徴する「観光名所」としての性格を併せ持つ公園だと言っていい。港の見える丘公園はその名が示すように横浜港を見下ろす高台にあり、その眺望が最大の魅力だが、端正に整備された園内の景観そのものもたいへんに美しい。四季を問わず多くの来園者を迎えて賑わう、素晴らしい公園だ。
港の見える丘公園
港の見える丘公園はかつて横浜開港期にイギリスとフランスの軍隊が駐屯した場所としてよく知られている。横浜開港と同時に横浜に多くの外国人が暮らすようになると、当然のように日本人との間にトラブルも発生するようになった。生麦事件の例を出すまでもなく、外国人に対する傷害事件も少なくなく、居留地襲撃の噂さえあった。そうした状況の中で自国居留民の安全と財産を守るためという名目で自国の軍隊が日本に呼ばれたということだが、横浜港を一望する高台に軍隊が駐留したのは名目以上の意味があったことは間違いない。現在の公園中心部あたりに駐屯したイギリス軍と、現在の「フランス山」に駐屯したフランス軍とが隣り合い、さらに当時の幕府の対応も絡んで、さまざまな逸話も残されているようで、港を見下ろすこの場所が当時軍事的に大きな意味を持っていたことを窺わせる。

戦後、この場所は米軍に接収されたが、接収解除後に公園用地として取得、1961年(昭和36年)から整備され、1962年(昭和37年)に「港の見える丘公園」として開園した。後にフランス領事館が置かれていた跡地を「フランス山」区域として公園に併合、イギリス総領事官邸は「横浜市イギリス館」として開館した。

港の見える丘公園
その後も園内の整備は重ねられ、1978年(昭和53年)には大佛次郎記念館が、1984年(昭和59年)には神奈川県立近代文学館が開館、同年には横浜人形の家とフランス山を結ぶ「フランス橋」が、1986年(昭和61年)には大佛次郎記念館と神奈川近代文学館とを結ぶ「霧笛橋」が完成している。さらに1991年(平成3年)5月にはバラ園がオープン、このバラ園は1999年(平成11年)に「ローズ・ガーデン」として再整備された後、さらに2016年(平成28年)に「イングリッシュローズの庭」や「バラとカスケードの庭」などとしてリニューアルされている。フランス山区域は2002年度(平成14年度)から2004年度(平成16年度)にかけて改修工事が行われ、旧フランス領事官邸跡などの遺構を見学できるようになった。2014年(平成26年)4月には公園本園入り口から山手本通りを100mほど西へ辿った交差点の角、横浜地方気象台の南側に、港の見える丘公園の拡張部分として「ブラフ99ガーデン」が開園している。
港の見える丘公園
港の見える丘公園
現在の港の見える丘公園は横浜有数の観光名所として広く知られ、ベイブリッジを含めた横浜港の様子を一望する展望台には連日多くの観光客が詰めかける。港湾地区の光景は少々雑然としてはいるが、眼下に見下ろす横浜港の風景は旅情に富み、特に夜景は素晴らしく、日暮れからの時間帯は若いカップルのデートコースの定番となっているようでもある。

公園は展望台を中心部分として、北西側の斜面に「フランス山区域」、南東側に沈床花壇や横浜市イギリス館山手111番館などを配する構成になっている。沈床花壇の南側には大佛次郎記念館が建ち、さらに南東側へ霧笛橋を渡れば、県立神奈川近代文学館が建っている。

港の見える丘公園
展望台から見下ろす横浜港の眺望は、やはりこの公園の最大の魅力と言っていい。眼下には山下埠頭や本牧埠頭を見下ろし、ほぼ正面に横浜ベイブリッジが見えている。ベイブリッジが繋ぐのは大黒埠頭だ。北側に目を向ければみなとみらい地区の風景も見え隠れする。それらが眼前にパノラマで広がる。まさに「港の見える丘公園」である。潮の匂いのする風に吹かれながらのんびりと横浜港の風景を眺めていると、時の経つのを忘れる。常に多くの観光客が展望台を訪れ、その眺望を楽しんでいる。展望台そのものも、弧を描く長いパーゴラが印象的な美しいデザインで整備され、公園を象徴する風景と言っていい。この展望台こそが「港の見える丘公園」、この展望台からの眺望を見ておかなくては、“港の見える丘公園に来た”とは言えない。

港の見える丘公園
この展望台とは別に、霧笛橋の近くにもベイブリッジを正面に望む展望所がある。展望所には港側に向けてベンチが置かれている。ベンチに腰を下ろし、のんびりとベイブリッジを眺めて時を過ごすのもいいものだ。もちろん霧笛橋の上からもベイブリッジがよく見える。春には霧笛橋の上から桜の向こうにベイブリッジが見えるスポットもあるから、機会があれば探してみるといい。霧笛橋の周辺は公園の南東側の隅という場所であるためか、行楽シーズンにもほとんど訪れる人もいない。一人で、あるいはカップルで、静かに眺めを楽しみたいという人にはお勧めの場所だ。

港の見える丘公園
展望台の南側には沈床花壇、横浜市イギリス館山手111番館などが配置され、公園のメインとなる部分を構成している。横浜市イギリス館の前は「イングリッシュローズの庭」として、山手111番館の東側は「バラとカスケードの庭」として整備されており、美しい景観を楽しみながらの散策が楽しい。特に初夏にはバラが鮮やかに咲き誇り、“バラの名所”の形容に恥じない景観を見せてくれる。初めて港の見える丘公園を訪れるという人なら、バラが見頃となる5月中旬から下旬を選ぶのがお勧めだ。園内の木々も新緑に輝き、美しい風景に包まれて散策を楽しむことができる。

港の見える丘公園
園内に建つ横浜市イギリス館山手111番館は、館内も無料で自由に見学することができる。横浜市イギリス館は1937年(昭和12年)に英国総領事公邸として建てられたもので、2002年(平成14年)から一般公開されている。山手111番館は1926年(大正15年)に横浜で両替商を営んでいたラフィンの居宅として現在地に建築された建物で、1999年(平成11年)の公園再整備に伴って一般公開されたものだ。どちらも貴重な建築物であり、近代建築に興味のある人はもちろん、一般の人でも楽しく見学ができるだろう。これらの洋館ではハロウィンやクリスマスなどに併せて館内の飾り付けが行われるから、それらの開催に合わせて訪れるのもお勧めだ。

港の見える丘公園
山手111番館横の広場の中央には噴水が設けられている。この美しい意匠の噴水は水道創設記念噴水塔のレプリカだ。水道創設記念噴水塔はその名が示すように日本で初めて近代水道が創設されたことを記念して建てられたもので、1887年(明治20年)に横浜停車場(現在の桜木町駅)前の広場に建てられ、現在は横浜市保土ケ谷区の横浜水道記念館に展示されている。この水道創設記念噴水塔レプリカも、港の見える丘公園の象徴的景観と言っていい。陽光の中に水の滴を煌めかせる噴水の姿は美しく、フォトジェニックだ。噴水を背景に記念写真を撮るのも楽しいだろう。

バラの名所として名高い港の見える丘公園はバラが咲き誇る初夏に訪れるのがいちばんのお勧めだが、春の桜も美しく、六月には紫陽花が園内を彩る。紅葉に染まった秋の公園も良い風情がある。四季折々、何度も訪れたくなる公園だ。園内の景観は美しく、また丹念に時間をかけて巡ればいろいろな発見もできるだろう。
港の見える丘公園
港の見える丘公園から山手本通りを西に辿れば外国人墓地や元町公園も近い。港の見える丘公園から横浜山手の観光散歩に出発するのもお勧めだ。また港の見える丘公園は2002年(平成14年)春に横浜の港湾地区の名所を繋いで設定された散策ルート「開港の道」の東側の起点を担っている。港の見える丘公園から「開港の道」を辿ってみるのも素敵な横浜観光だ。

港の見える丘公園は「みなとみらい線」の元町・中華街駅が最寄り駅だ。駅を出て東側へ道路を渡れば「フランス山」地区下の広場だ。JR根岸線石川町駅から元町商店街を通ってくるのも悪くない。石川町駅から歩けば15分から20分といったところだ。周遊バス「あかいくつ」も停車するから観光で訪れた際は「あかいくつ」を利用するのも楽しい。

谷戸坂を上って山手本通りと交差する丁字路の交差点の角には時間貸し駐車場があるが、行楽シーズンの休日には終日満車だ。近隣では元町商店街周辺に民間駐車所が点在しているが、道は狭くわかりにくいから土地勘のある人や慣れた人以外にはお勧めしない。不慣れな人は港湾地区の広い駐車場に車を駐め、バスや電車を利用したり、徒歩で散策を楽しみつつ来園することをお勧めする。
港の見える丘公園