大堂津の駅前から少しばかり南へ歩き、
郵便局の前の踏切を渡ると大堂津海水浴場だ。北側には
猪崎鼻が、南側には虚空蔵島が海に張り出し、沖には大島があり、それらに囲まれた入り江であるために普段は波も穏やかだ。昔は地元の商店の営む「海の家」があるだけの素朴な海水浴場だったが、現在では整然と整備され、洒落た外観のビーチハウスが建ち、小さな子どもたちのためのプールまである。
緩やかな弧を描く砂浜と緑の松林、沖合いに浮かぶ島々など、周囲の景観はとても美しいのだが、そうしたことが語られることは少ないような気がする。海水浴場としての設備も整っているのに、日南海岸の観光スポットとして紹介されることも少ない。昔は観光に訪れた若い人たちの姿を見ることも少なくなかったが、今では大堂津海水浴場の利用客のほとんどは地元の人たちや帰省してきた家族連れだ。ちょっと寂しく感じたりもするが、いつまでも地元の人たちのための海水浴場としてひっそりとした雰囲気を保って欲しい気もしないではない。
ビーチハウスは白い外観の現代的なものだが、基本的には昔ながらの「海の家」だ。二階部分は休憩所になっていてお昼時には家族連れがお弁当を広げていたりする。一階部分には地元の商店が入っていて、浮き袋の貸し出しや軽食などを商っている。軽食のメニューはうどんやラーメンなどといった海水浴場の「海の家」としては一般的なものだが、それらの昔ながらのメニューがかえって楽しい。
大堂津海水浴場は、実は日南市の中心市街から最も近い海水浴場だ。夏の旅行で日南市を訪れる機会があったなら、大堂津海水浴場で過ごす一日を予定に入れるのも楽しいかもしれない。地元の人たちに混じって、地元の人のふりをして、のんびりと夏の海辺を満喫するといい。