緩やかな孤を描く大堂津の浜の北端に、砂浜から防波堤で区切られて大堂津港がある。すぐ北側には
猪崎鼻が海に張り出しており、その根元に抱かれるようにして大堂津港は横たわっている。大堂津の海は北の
猪崎鼻と南の虚空蔵島の間に挟まれ、さらに沖には大島をはじめとした大小の島々が浮かんで外海から隔たっているために、昔から天然の良港としての地形を得ており、大堂津の港も古くから漁港として栄えてきた。昔は大堂津漁港は独立した漁協があり、水揚げされる水産物が
大堂津の町を支えてきたが、1993年(平成5年)に油津、大堂津、鵜戸の三漁港が合併して日南市漁協が設立され、現在は日南市漁港に属する漁港のひとつだ。
1979年(昭和54年)に開催された宮崎国体の際に大堂津沖がヨット競技の会場となり、大堂津港はヨットの基地として整備されたが、今はもうその面影もない。最近ではマリンレジャーの基地としての役割も担っており、水上バイクなどを楽しむ人たちの姿を見ることもある。港湾の一角にはプレジャーボートの係留施設も設けられている。
夏のお昼過ぎ、漁港にはあまり人影もないが、防波堤の突端あたりで釣り糸を垂れる人の姿もある。岸壁に沿って歩くと、係留されている漁船の姿と
猪崎鼻や沖の島々との織りなす風景が美しい。繋がれた小さな漁船がふわりふわりと波に揺れる様子や、岸壁に無造作に置かれたままの錆びた錨やさまざまな漁具の風情もいい。観光地的性格は無いが、周囲の景観の美しさや漁港の佇まいはそれなりに旅情を誘われるものかもしれない。