長野県松本市の中心市街、女鳥羽川の北岸に「縄手通り」が東西に延びる。土産物店や雑貨店などが軒を並べ、風情ある景観を見せる通りだ。夏の暑さも退いた九月上旬、縄手通りを訪ねた。
松本/縄手通り
長野県松本市の中心市街の一角、女鳥羽川の北岸に「縄手通り」と呼ばれる通りが東西に延びている。通り沿いには土産物店や雑貨店、飲食店などが長屋のように軒を並べ、「なわて通り商店街」を成している。昔ながらの面影を残して風情溢れる景観を見せる通りだ。
松本/縄手通り
松本/縄手通り
「縄手」は江戸時代末の町名に由来する。女鳥羽川北岸の辺りは江戸時代には松本城の総堀があったところで、女鳥羽川に沿って土手が延びていた。土手が“縄のように”細長く延びていたというので、「縄道」が転じて「縄手」の名が生まれたものという。

縄手通りにはさまざまな店が並んでいる。特に女鳥羽川の河岸側は長屋風の建物が並んで風情ある景観を見せており、散策の楽しい通りとして訪れる観光客も多い。通り沿いに並ぶ土産物店や雑貨店を覗き見ながらの散策は楽しい。女鳥羽川を渡って川の南側へ移動すれば、これも観光客に人気の高い中町通りで、中町通りと縄手通りとを併せて散策を楽しむ人が多いようだ。
松本/縄手通り
松本/縄手通り
縄手通りを歩いていると、そこかしこに蛙をモチーフにした事物を目にする。通りの一角には蛙大明神も祀られている。かつて女鳥羽川には河鹿蛙(カジカガエル)が数多く棲息し、美しい鳴き声を響かせていたという。しかし時代が進むに連れて川は汚れ、河鹿蛙は姿を消してしまった。それを惜しんだ地域の人々が1972年(昭和47年)、蛙大明神を祀り、川と通りを昔ながらの美しい姿によみがえらせようと取り組みを続けてきた。残念ながら女鳥羽川には今も河鹿蛙はいないが、今では「カエルの街」としても知られるようになった。蛙が縄手通りに賑わいに一役買っているというわけだ。
松本/縄手通り
通りの風情を味わいつつ、目にとまった店を覗いたりしながら、のんびりとそぞろ歩きを楽しむのが縄手通り散策のお勧めだろう。通り沿いのカフェでゆっくりとティータイムを楽しむのもいい。足早な観光ではなく、ゆったりと縄手に流れる時間に身を置くのがお勧めだ。
四柱神社
縄手通りの西端部に近い辺り、通りの北側に四柱(よはしら)神社が鎮座している。天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高皇産霊神(たかみむすびのかみ)、神皇産霊神(かみむすびのかみ)、天照大神(あまてらすおおみかみ)の四柱の神々を主祭神として祀ることからその名がある。天之御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神の三柱の神々は天地創造の神々であり、天照大神は伊勢の神宮にも祀られる最高神である。

四柱神社は比較的新しい神社で、1872年(明治5年)に(当時の)筑摩県松本に設置された神道中教院に四柱の神々を祀ったことが起源である。1879年(明治12年)、現在地に社殿を造営、遷座した。1888年(明治21年)に起きた火災で類焼し、現在の社殿は1924年(大正13年)になって再建されたものという。毎年10月、1〜3日に例大祭が執り行われる。地元では神道祭と呼ばれ、松本市を挙げて盛大に行われるそうである。

神徳の高い四柱の神々を主祭神として祀る神社というのは全国でも珍しいのではないか。立ち寄って参拝し、旅の無事を願っておきたい。
松本/四柱神社
松本市道路元標
縄手通りの西端部、千歳橋の袂に松本市の道路元標がある。道路元標というのは道路の起終点を示すものとして建てられている石柱等のことだ。

1873年(明治6年)、各府県に道路の里程調査を命ずる通達が出された際、里程を正しく把握するために道路元標を定めたのが始まりで、1919年(大正8年)には旧道路法によって道路元標の設置が法制化され、各市町村に一基を設置することが義務づけられている。1952年(昭和27年)制定の現行道路法に於いては道路元標はただの道路付属物であり、記念碑的な意味合いで設置されていることが多い。

松本市の道路元標は小さな石柱で、千歳橋の親柱の横にひっそりと建っている。道路マニアの人は当然のことながら、マニアでなくても“話のタネ”に見ておくといい。
松本市道路元標
参考情報
交通
縄手通りは松本駅(JR中央本線、アルピコ交通上高地線)の「お城口(東口)」から1km弱、徒歩でも15分足らずの距離だ。

松本市街地は周遊バス「タウンスニーカー」が巡っているので、これを使うと便利だ。「北コース」の「大名町」や「東コース」の「中町・蔵シック館」、「はかり資料館」、「龍興寺」などのバス停で降りれば縄手通りに近い。

車で訪れる場合は周辺に点在する有料駐車場を利用するといい。縄手通りは車両進入禁止なので注意されたい。

遠方から車で訪れる場合は、長野自動車道松本ICから国道158号を西進すればいい。松本ICから縄手通りまで3km足らず、道路状況にもよるが10分ほどで着く。

飲食
縄手通りや女鳥羽川南側の中町通り、さらにその周辺にさまざまな飲食店やカフェが点在する。散策の途中で好みの店を見つけて、ランチを楽しむのもお勧めだ。

周辺
縄手通りから女鳥羽川を挟んだ南側、東西に延びるのは中町通りだ。善光寺街道の宿場として栄えたところで、明治期に建てられたなまこ壁の土蔵などが今も残り、風情ある景観が楽しめる。併せて散策を楽しむのがお勧めだ。松本市はかり資料館や中町・蔵シック館(松本市中町蔵の会館)にも立ち寄っておこう。

縄手通りの東端部から北へ上土通りが延びている。上土通り沿いにも古い建物が残っている。散策の足を延ばすのもいい。

縄手通りの西端から南へ千歳橋で女鳥羽川を渡ると、西側に松本市時計博物館が建っている。昔の珍しい時計などが展示されており、興味深く見学できる。

縄手通り西端から大名町通りを北へ300mほど辿れば松本城だ。松本城は松本観光で欠かせない。必ず訪ねておきたい。

松本城公園を北へ通り抜け、さらに数百メートル北へ辿れば開智学校だ。開智学校は2019年に国宝に指定されている。隣接して建っている旧司祭館と併せて、ぜひ見学していこう。

縄手通りの西端から日の出町通りを経由し、県1丁目交差点を右折すれば、1km強で旧松本高校だ。旧松本高校の校舎が残されている。これもぜひ見学しておきたい。

また、松本市は湧水に恵まれた土地柄で、市街地いは数多くの湧水がある。「まつもと城下町湧水群」として「平成の名水百選」に選定されているものだ。のんびりと湧水巡りを楽しむのもお勧めだ。

松本城や開智学校、旧松本高校などを効率良く巡るなら、周遊バス「タウンスニーカー」を利用するのが便利だ。松本城や開智学校は「北コース」、縄手通りや旧松本高校は「東コース」が辿っている。観光で訪れた際には一日乗車券を購入しておくとお得だ。車で松本を訪れたときも、車を駐車場に置き、「タウンスニーカー」と徒歩を組み合わせて巡るのがお勧めだ。
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