埼玉県吉見町の「さくら堤公園」はその名のように桜並木の堤を公園としたものだ。その堤の斜面に、初秋には彼岸花が咲き誇り、鮮やかな景観を見せる。彼岸花が見頃を迎えた九月の下旬、さくら堤公園を訪ねた。
彼岸花の咲くさくら堤公園
彼岸花の咲くさくら堤公園
埼玉県吉見町東部に位置する「さくら堤公園」は約1.8kmに渡って延びる堤が桜並木となっており、春には圧巻の景観を見せてくれる。この堤は江戸時代初期に洪水の被害を軽減するために築かれたものという。その堤の斜面に、初秋になると彼岸花が咲き誇る。

さくら堤公園の彼岸花は約1.8kmの公園のほぼ全域に渡って見ることができる。この彼岸花はおそらく植えられたものだろう。自生していたものもあったのかもしれないが、人の手によって増やされ、これほどの規模になったのではないかと思える。場所によって密度濃く咲いていたり、疎らであったりもするが、堤の両側斜面に咲き誇る彼岸花の風景は圧巻と言っていい。
彼岸花の咲くさくら堤公園
彼岸花の咲くさくら堤公園
九月も半ば過ぎ、夏の暑さもようやく退いて堤を渡ってゆく風も心地良い。桜並木はそろそろ秋の支度を始め、その下には彼岸花が鮮やかな紅い帯を成して延びる。彼岸花に彩られた堤の上を歩くのは何とも爽快な気分だ。堤の上から見下ろせば斜面を染めて彼岸花が咲き、その向こうには実りの時期を迎えた水田が見える。美しい初秋の風景だ。ときおり腰を屈めて彼岸花を間近に眺めたり、堤の下の道路に降りて下から見上げたり、彼岸花の咲く風景はさまざまな表情を見せて飽きない。

そもそも彼岸花は田圃の畦道に咲く様子など、田園風景によく似合う花だ。さくら堤公園も周囲は広大な水田地帯で、長閑な田園風景が広がっている。その中に紅い帯となって延びる彼岸花の堤が何とも良い興趣を醸している。“彼岸花の咲く風景”としてお勧めのところだと言っていい。
彼岸花の咲くさくら堤公園
彼岸花の咲くさくら堤公園
さくら堤公園はちょうど中央部分を道路が横切っているために南北に分断されている形だ。今回訪れたとき(2015年9月)、その南側部分の中央寄りの彼岸花が特に見事だった。もちろんそれ以外の場所も決して劣るものではない。場所によって周辺の景観が変わり、それによって彼岸花の見せる表情も違う。それぞれに味わいのある風景を見せてくれる。時期によっても見頃の場所は変わるだろう。

さくら堤公園は北端部から南端部まで約1.8km、普通に歩けば往復1時間ほどだが、ただ歩くだけではもったいない。景観の美しさを味わいながらのんびりと歩き、堤の下に降りたり、時には少し離れて遠景を眺めたり、時間をかけて楽しみたい風景だ。九月後半、初秋の風情を楽しむのにお勧めの散歩道である。
彼岸花の咲くさくら堤公園
彼岸花の咲くさくら堤公園
参考情報
本欄の内容はさくら堤公園関連ページ共通です
さくら堤公園にはこれといった施設は無いが、トイレは設けられている。トイレは北側、中央部、南側の三カ所に設置されている。

交通
さくら堤公園は鉄道の駅から距離があり、バス路線も便利ではなく、来訪には車を利用するのが賢明だ。

遠方から訪れる場合は圏央道川島ICや関越自動車道東松山ICを利用し、吉見浄水場を目指すのがわかりやすいだろう。川島ICからは県道76号を北上、6kmほど辿って吉見浄水場南側の道路へ右折すると公園の桜並木が見えてくる。東松山ICからなら国道254号を東方向へ進み、「下野本」交差点で県道27号を北へ左折、「道の駅いちごの里よしみ」を過ぎた辺りで吉見浄水場南側の道路へ移ればいい。国道17号を利用する場合は鴻巣市の「天神2丁目」交差点から県道27号を西進、国道407号を利用する場合は東松山市の「新宿小(南)」交差点から県道27号を東進するのがわかりやすい。

吉見浄水場南側の道路沿い、公園の東側、道路南側に町営の無料駐車場が用意されている。100台分ほどが駐車可能のようだ。さくら堤公園の南端部にも無料駐車場があるが、少し場所がわかりにくい。土地勘の無い人は吉見浄水場南側道路沿いの駐車場をお勧めする。

飲食
さくら堤公園には飲食店や売店などはない。のんびりとお花見を楽しむのならお弁当とレジャーシートを持参しよう。

公園周辺は水田の広がる田園地帯で、近くに飲食店はほとんどない。県道沿いなどに飲食店が点在しているようだが数は少なく、車で走りながら飲食店を探すより、「道の駅いちごの里よしみ」まで移動した方が賢明かもしれない。道の駅まで行けば、その近辺にも飲食店がある。

周辺
さくら堤公園から西へ3kmほどで「道の駅いちごの里よしみ」がある。休憩や食事のときに立ち寄ると便利だ。「道の駅いちごの里よしみ」の北東側の下細谷耕地では7haほどの農地にコスモスを植え、10月半ばに「よしみコスモスまつり」が開催される。その季節には訪ねてみるといい。

さくら堤公園から西へ7kmほど移動すれば有名な吉見百穴がある。吉見百穴周辺も桜の名所として知られている。北西の方角へ辿れば八丁湖公園にも10km足らずの距離だ。

南東へ向かって荒川を渡れば北本町、北本自然観察公園まで5kmほどしかない。北本自然観察公園内には樹齢200年ほどというエドヒガンの大木もある。周辺には城ヶ谷堤や「石戸蒲ザクラ」など、桜の季節ならではの見所が点在している。

南へ下れば川島町、6kmほど辿れば平成の森公園という美しい公園がある。日本一という「バラのトンネル」があり、バラの花期に訪れるのがお勧めだ。
彼岸花散歩
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