日南線の旅〜駅の横側
谷之口駅
谷之口駅
細田川河口の鉄橋を最後に海岸を離れた日南線は、国道220号と併走するように西へ向かう。やがてその両者に南郷川が沿い、南郷川をさかのぼるように榎原方面の山間部へと辿っている。国道220号と日南線が寄り添うように山間部へと入ってゆく、ちょうどその入口に当たる辺りに谷之口駅がある。

駅名ともなっている「谷之口」という地区名は、このあたりの地理的特徴をそのまま言い表したものだ。谷之口駅の近辺には特に観光名所などもなく、のどかな風景の中に民家が点在しているだけで、駅も谷之口地区に暮らす人々の一部がわずかに利用しているに過ぎない。

谷之口駅は小さな無人駅で、片側使用のホームが山肌に張り付くようにして設けられている。わずかな面積の駅前の広場に屋根付きの自転車置き場があり、ホームには簡素な待合所があるが、駅舎は無い。谷之口駅のホームから下り方向を見ると、緑濃い山間へと潜り込むように線路が延びている。ここから下り方向へ、日南線は川沿いの谷間を抜けてゆく。
谷之口駅
谷之口駅
谷之口駅周辺の国道220号は沿道にサルスベリが植えられており、夏には美しい紅色の花を咲かせる。特に駅東部の田園風景の中をまっすぐに国道が延びる部分の並木は景観も見事で、走る車からの眺めも美しい。サルスベリは南郷が「南那珂郡南郷町」だった頃の「町の花」だったから、国道沿いの景観を彩るために植栽されたものなのだろう。
谷之口駅
夏の夕暮れに近く、駅に人の姿はない。線路と川との間の細い道を軽トラックが走り去ってゆく。農作業の帰りだろうか、年老いた女性が軽く会釈して南郷川に架けられた人道橋を渡っていった。無人の駅を蝉時雨が包んでいる。
谷之口駅
INFORMATION
谷之口駅
【所】南那珂郡南郷町谷之口
【開】1949年(昭和24年)1月15日
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ページ内の写真は2001年夏に撮影したものです。本文は2009年8月に改稿しました。