夏の朝、日南線を利用する地元の人がちらほらと駅に集まってくる。駅前ロータリーの片隅でタクシーが二台ほど客を待っている。駅舎の横に植えられたフェニックスや椰子などが、南国の風情を漂わせて夏の日射しに似合っている。空には雲が多いが、やがて日が高くなるにつれて青空が広がってくるだろう。
油津から大堂津のあたりまで海岸沿いを走った日南線は、大堂津を過ぎて細田川を鉄橋で渡ると海から離れて内陸部へと向かい、南郷の駅に着く。南郷は目井津港や外ノ浦港を抱えた漁業の町だが、最近では観光にも力を入れており、マリンスポーツや釣りなどの好適地として名を知られるようになった。
駅舎の一部を利用して南郷町観光協会の観光案内所が置かれて訪れる人々を出迎えている。最近では観光に訪れる人もほとんどが車で移動し、日南線を降りてバスやタクシーを利用する人は少ないように思えるが、車の人も駅に立ち寄って観光案内所を利用するのもよいかもしれない。
駅前には国道220号線が通っている。宮崎から南下してきた国道220号は日南線に沿うように榎原から串間方面へと辿っている。駅前の交差点で国道220号から国道448号が分かれている。国道448号はここから栄松、外ノ浦と繋いで、さらに海岸に張り付くように都井岬方面へと辿る。国道220号から都井岬方面への分岐は、昔は初めての来訪者にとって少々わかりにくかったものだが、今では大きな案内標識が交差点手前に設置されていて迷うことはないだろう。
駅前から国道220号を宮崎方面へと辿ると道は緩やかな坂道で、丘とも呼べないほどの尾根を越えてほぼ真っ直ぐに目井津港の入口へと至る。南郷駅前から目井津港まで国道沿いには商店などが並ぶ。目井津港周辺の町並みから駅周辺にかけての辺りが南郷町の中心と言ってよいだろう。
駅から目井津港までは少々距離があるが歩けない距離ではない。目井津港自体は特に観光名所というわけではないが、細田川河口に浮かぶ虚空蔵島の亜熱帯樹林などは知られているものかもしれない。大島へと繋ぐ連絡船の発着所も目井津港にある。目井津港は周囲を取り巻く岬や島々が織りなす景観も美しく、古くからの港町としての佇まいもまた、来訪者にとっては旅情を誘われるものかもしれない。