日南線の旅〜駅の横側
南郷駅
南郷駅
油津から大堂津のあたりまで海岸沿いを走った日南線は、大堂津を過ぎて細田川を鉄橋で渡ると海から離れて内陸部へと向かい、南郷の駅に着く。南郷は目井津港や外ノ浦港を抱えた漁業の町で、かつては南那珂郡南郷町として独立した自治体だったが、2009年(平成21年)3月に日南市と南郷町、北郷町の一市二町が合併、南郷町は”新”日南市の一部になった。
南郷駅
野球ファンならよくご存知だと思うが、南郷町は西武ライオンズのキャンプ地である。2004年(平成16年)から春季キャンプが南郷町で実施されている。地域活性化のために当時の南郷町が誘致したもので、キャンプの時期には町を挙げて歓迎し、大いに盛り上がる。

そこで発案されたのが、南郷駅の駅舎の西武ライオンズカラーへの改修である。改修は2020年(令和2年)に竣工した。立案者は当時の日南市南郷町在住の高校生4名だったという。約400万円の事業費は地元企業の協賛金の他、募金やクラウドファンディングによってまかなわれた。
南郷駅
改修後の南郷駅は白と紺で塗装され、西武ライオンズのロゴマークがあしらわれている。「ライオンズ南郷駅」の愛称名も設定されている。名実ともに西武ライオンズキャンプ地への鉄路の玄関口となったわけだ。西武ライオンズカラーの駅舎をバックに記念写真を撮ろうと南郷駅を訪れるライオンズファンもいらっしゃるようである。
南郷駅
駅舎内はガランとした印象で、壁際にベンチが置かれ、隅の方にはガラスケースに収められた漁船の模型などが飾られている。駅舎内の床に野球のダイヤモンドを模した塗装が施されているのも「ライオンズ南郷駅」らしいところか。
南郷駅
南郷駅は単式ホーム1面1線の地上駅、ホームは駅舎から線路を挟んだ反対側に位置しているため、駅舎からホームへは線路を横切っていかなくてはならない。南郷駅から下り方面(串間方面)へ向かう線路は緩やかに右手に曲がっているため、ホームも緩やかな曲線を描いている。その曲線がなかなか美しい景色を織り成している。
南郷駅
南郷駅
駅前には国道220号が通っている。宮崎から南下してきた国道220号は日南線に沿うように榎原から串間方面へと辿っている。駅前の交差点で国道220号から国道448号が分かれている。国道448号はここから栄松、外ノ浦と繋いで、さらに海岸に張り付くように都井岬方面へと辿る。国道220号から都井岬方面への分岐は、昔は初めての来訪者にとって少々わかりにくかったものだが、今では大きな案内標識が交差点手前に設置されていて迷うことはないだろう。
南郷駅
南郷駅が開業したのは1936年(昭和11年)のことだ。1935年(昭和10年)に志布志から榎原まで延伸開業していた志布志線が、大堂津まで延伸したときである。その後、志布志線はさらに北へ延伸し、1941年(昭和16年)には北郷に至る。日南線が全線開業し、志布志〜北郷間の志布志線が日南線に編入されるのは1963年(昭和38年)のことである。それからすでに長い年月を経た。

南郷駅は2009年(平成21年)10月から運行を開始した観光特急「海幸山幸」の発着駅でもある。「海幸山幸」の運行に際して南郷駅の駅舎は改修を受けており、駅舎内は基本的にその改修による状態を保っている。時代の変遷と共に少しずつ姿を変えてきた南郷駅である。
南郷駅
南郷駅
INFORMATION
南郷駅
【所】南那珂郡南郷町中村
【開】1936年(昭和11年)3月1日
このWEBページは「日南海岸散歩」内「日南線の旅」カテゴリーのコンテンツです。
ページ内の写真は2020年夏に撮影したものです。本文は2022年8月に改稿しました。