横浜線沿線散歩公園探訪
八王子市片倉町
片倉城跡公園
Visited in June 2020
片倉城跡公園
八王子市の中心市街の南方、片倉町に位置して片倉城跡公園という公園がある。その名が示す通り、片倉城跡の丘を整備して公園としたもので、1972年(昭和47年)に開園している。園内には鬱蒼と木々が茂り、林の中を縫うように園路が辿っている。丘の麓には湧水もあり、湧水を集めた湿地や池もある。豊かな自然を身近に楽しめる場所して広く市民に愛される公園だ。
片倉城跡公園の彫刻−江里敏明作1989年「ダンシング・オール・ナイト」(第10回西望賞受賞作品)
公園東側、国道16号に面して公園のメインエントランスが設けられている。入口から園内に入ったところは「彫刻広場」と名付けられた広場だ。その名の通り数々の彫刻作品が常設展示されている。八王子を愛した北村西望氏ゆかりの「西望賞」の受賞作品を市が購入して展示しているのだという。

八王子市は「彫刻のまちづくり」を謳い、「彫刻を設置し、都市空間を利用したオープンギャラリーとする」「彫刻をとおした市民のコミュニケーションを図る」ことを目的とした“まちづくり”を行ってきた。「彫刻のまちづくり」は1978年(昭和53年)にスタートし、1998年(平成10年)に設置数100基を達成して終了した。現在は103基が設置され、その保存と活用が継続している。「彫刻のまちづくり」では市内の公園や駅の周辺、文化施設などに彫刻が設置されたが、片倉城跡公園に展示された彫刻もその活動の一環によるものだ。
片倉城跡公園の彫刻−久保浩作1991年「アテネの戦士」(第12回西望賞受賞作品)片倉城跡公園の彫刻−桑山賀行作1992年「風景-海-」(第13回西望賞受賞作品)
こうした彫刻作品の好きな人にとってはもちろん魅力的なものだが、特に彫刻に興味が無くても、それぞれの作品を鑑賞しつつ、素人なりに自分の好みにあう作品を探してみるのは楽しいひとときだ。
片倉城跡公園−住吉神社
彫刻広場から急な階段を上ると住吉神社だ。この住吉神社は、室町時代の城主長井氏が1372年(応安5年)に城の鎮守として、摂津国(大阪市)住吉大社を歓請したものだという。1851年(嘉永4年)に川幡元右衛門泰言とその門人により「数学の実力がつきますように」と祈願された算額が奉納されている。御祭神は上筒男命、中筒男命、底筒男命、例祭日は8月第4日曜日である。

境内は深い木立に囲まれて神域らしい静けさに包まれており、とてもすぐ下を国道16号が通っているとは思えない。普段はほとんど人の姿も無いが、ときおり参拝に訪れる地元の人の姿を見ることがある。散策の途中で立ち寄って参拝しておくのもいいだろう。
片倉城跡公園−二の丸広場
住吉神社の背後、丘の上には「本丸広場」と「二の丸広場」がある。その名の通り、片倉城の本丸跡と二の丸跡を広場として整備したものだ。公園内の案内板によれば、片倉城は室町時代に大江広元を祖先とする長井氏によって築かれたという。歴史的には不明な点が多いらしいが、堅固な山城であったようだ。

「本丸広場」は木立に囲まれてひっそりとした印象だが、「二の丸広場」は「本丸広場」より広く、さらに北西側が開けているために開放感がある。レジャーシートを広げてピクニック気分でランチタイムを過ごすには絶好の広場だ。それぞれの広場の外縁部には桜が植えてあり、春には見事な景観が楽しめる。地元では“お花見の名所”として知られ、桜が見頃を迎える頃には花見客で賑わうところだ。

「二の丸広場」から西に出ると丘陵地の上に畑地の風景が広がる。それらの畑地は私有地だが、脇の小径を辿れば片倉つどいの森公園も近い。片倉つどいの森公園は2010年(平成22年)4月に開園、開放感溢れる丘の上の広場が人気を集めている。片倉城跡公園から歩いてもほんの数分、余裕があれば併せて訪ねてみるのもお勧めだ。
片倉城跡公園−雑木林
広場の北側、すなわち丘の北側斜面は鬱蒼と木々の茂る雑木林だ。木々の間を縫うように斜面を小径が辿り、気軽に雑木林散歩を楽しむことができる。揺れる木漏れ日の中の散策は実に清々しいものだ。時折聞こえる野鳥の声も楽しみながらのんびりと歩きたい。

この雑木林は早春にはカタクリ、新緑の頃にはヤマブキソウ、さらに夏を迎える頃にはヤマユリが咲き誇り、名所として知られている。それぞれの花期に訪れてみるのもお勧めだ。
片倉城跡公園−湿地
林の中には湧水がある。「八王子湧水めぐり」に選定された8つの湧水のうちのひとつだ。湧水は「片倉沢」や「奥の沢」と呼ばれる小さな流れを作っていて、それを受ける形で丘の北側の裾部分に湿地や池がある。

池の中には鯉の姿もある。睡蓮の花と、その下を悠然と泳ぐ鯉も組み合わせもなかなか風情のあるものだ。湿地の中を横切る木道などの遊歩道も整備されており、気持ちの良い散策を楽しむことができる。脇にはベンチを設えた東屋や、奥の方には水車小屋などもあり、穏やかなひとときを過ごすことができるだろう。この湿地部分では5月下旬から6月にかけては花菖蒲や睡蓮の花を楽しむことができる。
片倉城跡公園−いこいの広場
湿地の北側、湯殿川の河岸には「いこいの広場」と名付けられた広場がある。この場所は1972年(昭和47年)の開園当初は公園の区域外だったところだが、現在は公園の一部として親しまれている。緩やかな起伏を伴って河岸に沿って細長く延びる広場で、河岸の開放感と木々に囲まれてひっそりとした印象が同居しており、まさに“憩い”の広場である。

広場の河岸側、河岸の舗道に沿ってソメイヨシノが並んでいる。公園が拡張された際に植栽されたもので、現在は大きく育って春には見事な景観を見せてくれる。お花見を楽しむ人たちの多いところだ。
片倉城跡公園は八王子市の市街地から比較的近く、またJR横浜線の片倉駅や京王高尾線の京王片倉駅からも徒歩圏内という立地の良さも手伝ってか、四季を問わず多くの来園者を迎えている。中世の山城跡という由緒や、四季折々の花々が楽しめる点など、少し遠方からでも訪れる価値のある公園だと言っていい。それぞれの花が見頃となる時期に、何度も訪れたくなる公園である。

片倉城跡公園には来園者用駐車場が設けられているが、優先スペース2台分を含む22台分と、公園の規模に対して決して充分とは言えない。前述したように駅から歩ける距離なので電車での来園をお勧めする。
片倉城跡公園
片倉城跡公園
片倉城跡公園