佳景探訪 - 紅葉の日比谷公園（東京都千代田区）

晩秋の日比谷公園を象徴するものは、やはりS字を描いて延びる散策路のイチョウだろうか。中でも「草地広場」の南側部分のイチョウ並木が素晴らしい。歴史の古い公園だけあってイチョウの木はどれも大きく、日差しを浴びて黄金色に照り輝く姿は見事なものだ。

散策路はS字を描いているから、辿ってゆくと日差しの向きが変わり、イチョウの黄葉も表情を変えてゆくのが楽しい。少し遠くから眺めるのも美しく、青空を背景に見上げる姿もいい。散策路脇に立つ日比谷パレスも黄葉のイチョウに包まれて良い風情だ。落葉が進めば散策路は黄金色の絨毯を敷き詰めたようになり、その様子も晩秋の公園の景観の愉しみのひとつだ。園内には散策を楽しむ人の姿も多いが、散策路の脇でスケッチを楽しむ人も少なくない。この見事な黄葉の景観は絵心をくすぐるものに違いない。見事に黄葉したイチョウの背景にビル群が見え隠れするのも都心の公園の風景というものの、ひとつの興趣かもしれない。

園内には「首賭けイチョウ」と呼ばれるイチョウの大木がある。元々は日比谷交差点にあったもので、それを日比谷公園の設計者である本多静六博士が園内に移植したものという。博士は”自分の首を賭けても移植を成功させてみせる”と移植に臨んだといい、そこから「首賭けイチョウ」の名がある。この「首賭けイチョウ」、訪れたときにはすっかり落葉してしまっていたのが残念だった。

散策路のイチョウ並木と共に見逃せないのが、「雲形池」北側のモミジだ。「雲形池」の北側の岸辺に植えられたモミジが晩秋には見事な紅葉を見せる。岸辺に沿った散策路を辿れば逆光を浴びて透過光に輝くモミジを間近に眺めることができる。紅葉のモミジの向こうには「雲形池」が横たわり、場所によってはモミジの枝の隙間に「鶴の噴水」の姿を見ることができる。真っ赤に染まったモミジと池と噴水とが織りなす風景が何とも良い風情だ。

通りかかって足を止め、しばらく紅葉の景観を楽しむ人の姿も少なくなく、最も美しい景観を臨めるところでは人だかりができている。カメラのレンズを向ける人の姿も多い。一眼レフのカメラを構える人、コンパクトカメラをバッグから取り出して撮影している人、携帯電話のカメラ機能を使う人とそれぞれだが、誰もが写真に撮りたいと思うほどに美しい景観だということだろう。

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東京都の中心部に位置する日比谷公園だから、近くにはさまざまな駅がある。その中でも公園北東側の東京メトロ千代田線の「日比谷駅」が最も近く、駅を出れば目の前が日比谷公園だ。東京メトロ日比谷線、都営地下鉄三田線の各線の「日比谷駅」も充分に近く、徒歩で二、三分ほどだ。公園西側には東京メトロ丸ノ内線、日比谷線、千代田線の「霞ヶ関駅」があり、こちらからなら徒歩数分、公園南側には都営地下鉄三田線の「内幸町駅」があり、こちらは徒歩二、三分といったところか。JR山手線の「有楽町駅」や東京メトロ有楽町線の「有楽町駅」からも徒歩数分で行ける。

車で来園する場合には公園地下に設けられた「日比谷自動車駐車場」を利用するといい。特に公園利用者用の駐車場というわけではなく、民間の運営管理による公共の有料駐車場だが、公園の地下という立地が便利だ。その他にも公園東側から南側にかけて多くの民間駐車場が点在しているが、都心であるからいずれの駐車場も相応の駐車料金が必要であることは了解しておきたい。

平日のお昼時になれば公園内で思い思いにランチタイムを過ごすビジネスマンやOLたちで賑やかだ。園内随所に設けられたベンチで、あるいは「草地広場」にシートを敷いてお弁当を広げるのもお薦めだ。都心の立地だが公園内は緑に溢れ、快適なアウトドアランチが楽しめる。

園内に建つ「日比谷茶廊」や「松本楼」、「日比谷パレス」、「南部亭」といったレストランで、贅沢な気分でランチタイムを楽しむのも悪くない。公園を出て有楽町方面に足を延ばし、街中のレストランなどを利用するのも一案だ。

日比谷公園の北側は皇居だ。皇居外苑の散策に足を延ばしてみるのも楽しい。

公園東側は有楽町周辺の繁華街で日比谷シャンテや東京国際フォーラムなどの施設がある。JR線の向こうへ足を延ばせば銀座だ。銀座から築地、月島辺りまで、ひととき街歩きを楽しむのもいい。さらに新橋方面へ足を延ばし、旧新橋停車場や浜離宮恩賜庭園などを訪ねてみるのもお勧めだ。

日比谷公園西側は霞ヶ関の官公庁街だ。経済産業省や財務省、外務省などの建物が並ぶ中、国会議事堂前辺りまで散策してみるのも一興かもしれない。