東京都中央区の浜離宮恩賜庭園は江戸時代に将軍家の浜御殿、明治期には皇室の浜離宮だったところだ。美しい大名庭園の姿を残す園内を、春には桜が彩る。桜が見頃の四月上旬、浜離宮恩賜庭園を訪ねた。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
東京都中央区の浜離宮恩賜庭園は、江戸時代には将軍家の「浜御殿」があり、明治期には皇室の「浜離宮」として使われた。25haほどの広い庭園は見事な大名庭園としての佇まいを今に残し、常に多くの観光客で賑わっている。その浜離宮恩賜庭園を、春には桜が彩る。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
浜離宮恩賜庭園の桜は、一般的な“桜の名所”のように、辺り一面を覆い尽くすほどの桜が咲き誇るわけではない。どちかと言えば数は少なく、園内のところどころで春の景観を見せてくれるだけだ。しかし、そもそも景観の美しい庭園だから、そこへ桜の色が加わったときの、“春の風趣”という点では実に味わい深いものがある。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
浜離宮恩賜庭園の桜は、「延遼館」跡の園路脇や「花木園」、「野外卓広場」北側の園路脇、「潮入の池」の岸辺など、あちこちで見ることができる。のんびりと園内を巡りながら、桜の咲く景観との出会いを楽しむのが、この季節の浜離宮恩賜庭園の楽しみ方としてお勧めだろう。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
「野外卓広場」北側の園路脇には数本の桜が並んでいる。“並木”というほどではないが、やはり複数の桜が並ぶ景観というものは見応えのあるものだ。東側から眺めると、桜の背後には高層ビル群が並び、その景観も都心ならではの興趣というものだろう。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
「花木園」にも桜がある。「花木園」にはハナモモも咲いており、ハナモモの濃いピンクとユキヤナギの白、常緑樹の緑と、色彩のハーモニーが美しい。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
“風趣”という点では、「潮入の池」の岸辺に咲く桜が素晴らしい。大名庭園の美というものを象徴するような池の景観に桜が春の風情を加え、実に味わい深い景観を演出してくれる。桜の近くから池を眺めるのもいいが、少し離れて池と桜とが織り成す景観の美しさを楽しむのがお勧めだ。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
「延遼館」跡のやや南側部分、園路脇に印象的に桜が咲いている。北側から眺めれば緑の木々を背景に逆光を浴びて輝き、近寄って眺めれば陽光を浴びる姿がさらに美しい。見事な景観である。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
桜咲く浜離宮恩賜庭園
この季節、庭園北側部分に設けられた「お花畑」には菜の花が植えられて、一面黄色一色の景観に染め上げる。東側から眺めれば「お花畑」の向こうには汐留地区の高層ビル群が林立する。この景観もまた浜離宮恩賜庭園を象徴する景観のひとつと言っていい。

春の浜離宮恩賜庭園は、桜や菜の花の咲く庭園内をのんびと散策し、春の庭園が見せる表情を楽しむのがお勧めだ。常緑樹の多い庭園内はこの季節にも緑濃く、庭園そのものの美しさも存分に味わうことができるから、初めて訪れるのにこの季節を選んでもいいだろう。他の季節に来園したことのある人なら、この季節ならではの興趣を探しに出かけてみるといい。
桜咲く浜離宮恩賜庭園
参考情報
本欄の内容は浜離宮恩賜庭園関連ページ共通です
浜離宮恩賜庭園は入園料が必要だ。ペット連れの入園はできない。その他、開園日、開園時間、注意事項については東京都公園協会サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
浜離宮恩賜庭園はJR新橋駅や東京メトロ銀座線新橋駅、都営地下鉄浅草線新橋駅、ゆりかもめ新橋駅、都営地下鉄大江戸線の汐留駅や築地市場駅などが近い。どの駅からも距離は1km足らず、徒歩で10分ほどで行ける。JR浜松町からは「中の御門橋」の入口へ1kmほど、東京モノレールを利用して来園するなら浜松町でJRに乗り換えるより歩いた方が早い。

浜離宮恩賜庭園には水上バスの発着所もあるから、水上バスで来園するのも楽しい。

車で訪れるなら国道15号を辿って新橋駅を目指せばいい。浜離宮恩賜庭園には一般来園者用の駐車場は用意されておらず、周辺の民間駐車場を利用しなくてはならない。新橋駅付近から汐留駅付近にかけて民間の駐車場が多数点在しており、規模の大きなものも少なくない。そうした駐車場に車を置き、徒歩で浜離宮恩賜庭園に向かえばいい。

首都高速道路を利用する場合は、東京高速道路(KK線)の新橋出入口や都心環状線の汐留出入口が至近だが、新橋出入口で降りることができるのは西銀座JCT方面から汐留JCT方面へ向かう方向のみ、汐留出入口では都心環状線内回り(浜崎橋JCT方面からの北行き方向)のみとなるので注意が必要だ。都心環状線外回りを利用して訪れる場合は銀座出入口で降りるといい。

飲食
庭園内の「中島の御茶屋」で菓子と抹茶のセットを楽しむことができるが、食事の可能なレストランなどはない。食事は新橋駅方面へ移動して店を探そう。

お弁当の持ち込みも可能とのことなので、お弁当持参での来園もお勧めだ。「内堀広場」や「野外卓広場」ならシートを敷くことも可能のようだ。

周辺
新橋駅の東側には旧新橋停車場鉄道歴史展示室がある。鉄道に興味のある人、日本の近代史に興味のある人なら訪ねておきたい。

「大手門口」から新大橋通りを東へ辿れば1km足らずで築地場外市場、さらに銀座や月島へも充分に歩ける距離だ。さらに少し足を延ばせば日比谷公園、皇居へも遠くはない。

「中の御門口」から南へ1kmほど(「大手門口」からも1.5km足らず)で旧芝離宮恩賜庭園だ。併せて訪ねて庭園巡りを楽しむのもお勧めだ。旧芝離宮恩賜庭園から西へ1kmほどで芝公園、足を延ばしてみるのもいい。
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