佳景探訪
六義園
東京都文京区本駒込六丁目に六義園という日本庭園がある。徳川綱吉に仕えた柳沢吉保が築いた庭園だという。池や築山を配した回遊式庭園はたいへんに美しく、国指定の特別名勝にもなっている。新緑が日増しに濃くなってゆく五月の下旬、六義園を訪ねた。



六義園

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六義園
六義園は五代将軍徳川綱吉に仕えた側用人柳沢吉保によって築かれたものだ。「六義園」は「りくぎえん」と読む。「ろくぎえん」ではない。柳沢吉保は学才に長けた人物であったらしく、六義園の名も中国の古い詩の分類法を紀貫之が和歌に転用した「六義」に由来するものらしい。

柳沢吉保は1658年(万治元年)、館林藩に生まれている。当時の館林藩主だった徳川綱吉に小姓として仕え、1680年(延宝8年)、綱吉が五代将軍の座につくと吉保は小納戸役となり、その後も綱吉の寵愛を受けて出世を続けていった。1698年(元禄11年)には左近衛権少将の任に就き、事実上幕府権勢を掌握するまでになる。1709年(宝永6年)、綱吉が死去、後ろ盾を無くした形の吉保は潔く役職を辞して隠棲した。1714年(正徳4年)、57歳で没している。

余談だが、「生類憐みの令」によって「犬公方」と揶揄された徳川綱吉と、その寵愛を受けて異例の出世を続けた柳沢吉保、後世になって語られる二人はあまり良い印象ではないことが多い。しかし実際には二人とも学才に優れ、政治的手腕にも長けていたようだ。柳沢吉保が綱吉の寵愛を受けたのも、吉保を信頼に足る参謀として重用したということなのだろう。

六義園は、その柳沢吉保自らが設計、造営を指揮したのだという。もともとは平坦だった土地を掘って池を造り、土を盛って山を築き、庭園の完成には7年の歳月を要したという。吉保が役職を退いて隠棲した後も庭園の造営は続いていたことになる。この土地は綱吉が吉保に下屋敷として与えたもので、綱吉もたびたび吉保の屋敷を訪ねていたらしい。

柳沢吉保の死後、残念ながら庭園は次第に荒れていったようだ。明治期になって三菱財閥創業者の岩崎弥太郎の所有となり、1938年(昭和13年)に東京市(現在の東京都)に寄贈され、一般公開されるようになった。1953年(昭和28年)、国の特別名勝に指定されている。都内の代表的な日本庭園のひとつとしてよく知られ、常に多くの観光客が訪れている。

六義園六義園
六義園

六義園

六義園
庭園は9ヘクタール近い面積を有し、その中心に池を据えて樹林が囲む。池の辺や築山の麓を巡って散策路が辿り、いわゆる「回遊式庭園」として造られたものだ。紀州の景観や和歌に詠まれた名勝などが織り込まれた設計という。池の中央には「中之島」が据えられ、その横には特徴的な形状の「蓬莱島」が浮かぶ。池の岸辺の要所は「出汐の湊」や「玉藻の磯」、「吹上浜」といった名が与えられ、そこからはそれぞれに美しい景観を望むことができる。北側の築山に設けられた藤代峠に登れば正面に池を見下ろし、素晴らしい景観が眼下に広がる。たいへんに繊細な美しさを持った庭園で、園内の小径を辿ってゆけば、一歩進む毎に景観の表情が変わると言ってもいいほどだ。ゆっくりと時間をかけてその美しさを味わいたい庭園だ。池の北西側の岸辺に設けられた「吹上茶屋」では抹茶や和菓子などを楽しむことができる。のんびりとお茶を味わいながら眼前に広がる美しい景観を堪能しつつ、ひととき日々の喧噪を忘れるのもいいものだ。

今回訪れたのは五月の下旬、六義園は日増しに色濃くなる新緑に覆われ、輝くばかりの美しさだったが、ツツジや秋の紅葉なども見事だという。そうした季節を選んで訪れるとより楽しめるに違いない。冬には「雪吊り」も行われるという。四季折々に訪ねてみたい庭園だ。
参考情報
本欄の内容は六義園関連ページ共通です
六義園は入場料が必要だ。またペット連れの入園はできない。料金や開園時間など、詳細については東京都公園協会のサイト(「関連するウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

六義園にはJR山手線駒込駅、東京メトロ南北線駒込駅が近く、徒歩で数分といったところだ。都営三田線千石駅からも徒歩で十分前後と、これも歩くのが苦になるほどの距離ではない。

駐車場は設けられておらず、車で来園するなら近辺に点在する民間駐車場を利用しなくてはならないが、小規模のものがほとんどだ。車での来園はお勧めしない。

飲食

園内には本格的な食事のできるレストランなどはない。「吹上茶屋」では抹茶や和菓子などを扱っており、また「出汐の湊」近くの休憩所を兼ねた売店でも飲み物などを販売しているから、ちょっとした一休みのティータイムを楽しむのは可能だ。ツツジや紅葉の季節など、来園者の多い時期には特設の売店や休憩所も設けられるようだ。

園内には随所にベンチが設けられており、ベンチに腰を下ろしておにぎりを頬張るなどの簡単な食事は可能だが、園内は敷物やアルコール類の持ち込みは禁止とのことで、通常の公園のように木陰にシートを広げてお弁当を食べるという楽しみ方はできない。

外に出れば駒込駅近くにさまざまな飲食店が点在しているから、それらを利用するのもいい。

周辺

公園東側の本郷通りを北へ20分ほど歩くと旧古河庭園がある。少し距離があるが併せて訪ねてみるといい。六義園と旧古河庭園の双方に入園できる「園結びチケット」というものも販売されており、これを購入すれば別々に入園料を支払うより割安になる。

旧古河庭園の南側には霜降銀座商店街という下町風情漂う商店街がある。商店街散歩の好きな人なら訪ねてみたい。
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