日南海岸散歩
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日南海岸風景海と緑の風景
青島神社

青島神社
宮崎の観光地として広く知られる青島のほぼ中央に、青島神社が鎮まっている。創建の年代ははっきりしないということだが、平安の頃にはすでに「青島大明神」の名が文書の中に見られるというからすでに千年以上の歴史を持つのは間違いないだろう。今では青島には多くの観光客が訪れ、そのほとんどが青島神社に参拝してゆくが、昔は島内全域が神域として島奉行や神職以外の一般の人々の入島が禁じられていた時代もあったという。現在でも青島の島内全域が青島神社の境内であるらしく、その意味では「青島の島内に青島神社がある」という表現は正しくないのかもしれない。

青島神社は彦火火出見命(ひこほほでみのみこと)、豊玉姫命(とよたまひめのみこと)、塩筒大神(しおづつのおおかみ)を祀る。日本神話に語られる「山幸彦と海幸彦」の物語で広く知られる神々である。

邇邇藝命と木花之佐久耶毘売の子である彦火火出見命(またの名を火遠理命という)は「山幸彦」として山で狩りを行うのを生業として暮らし、兄の火照命は「海幸彦」として海で漁をして暮らしていた。ある時、山幸彦は互いの道具と仕事を交換してみることを申し出る。嫌がる兄を説き伏せ、漁に出た山幸彦だったが、慣れぬ仕事で成果は無く、兄から借りた釣り針を亡くしてしまった。

浜辺で途方に暮れる山幸彦の前に塩筒大神(塩椎神ともいう)が現れ、「綿津見神(わだつみのかみ)の宮にゆけ」と助言する。潮の流れに乗って往くと、海原の直中の宮に辿り着く。山幸彦はそこで綿津見神の娘であった豊玉姫を妻として三年の月日を暮らすが、やがて地上のことが気にかかり、亡くした釣り針を探し出して地上に戻る。この時、山幸彦が上陸したのが青島の浜辺であったという。

地上に帰還した山幸彦は綿津見神から授かった「塩満瓊(しおみつたま)と塩涸瓊(しおひるたま)」という潮の満ち引きを司る玉を使って兄の海幸彦を服従させる。やがて山幸彦の子を身籠もっていた豊玉姫が出産のために山幸彦のもとへとやってくる。豊玉姫が子を産んだ産屋が現在の鵜戸神宮である。
青島神社
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例祭は秋だが、一年を通じてさまざまな祭事が行われる。特に新春の裸参りや夏の祭事などは有名で、宮崎の風物詩として地元のニュースで取り上げられるなどして、よく知られている。

新春の裸参りは成人の日に執り行われるもので、男女二百人ほどの裸の人々が海で禊を行って神社に参拝する。かつて彦火火出見命が海原から地上へ戻ってきた際に人々が着衣の暇も惜しんで裸のまま急ぎ出迎えたという故事から起こったものだという。

夏の祭礼は二十二歳、二十三歳の若者による御輿の渡御で、家内安全や豊漁祈願の他、若者たちが「一人前」として認められるための意味合いもあり、該当する年齢に達した地元の若者たちは万全の準備を重ねて祭事に臨むのだという。夏祭は旧暦六月十七日と十八日の二日にかけて執り行われ、見物の観光客も多い。青島神社を出て地区内を練り歩いた御輿は白浜の浜辺から船によって青島へ渡る。そのことから夏祭は「海を渡る祭礼」と呼ばれている。御輿を乗せた「御座船」を先頭に数十艘に及ぶ漁船が大漁旗をはためかせて隊列を組んで海を渡る様はとても壮観なものだ。
青島神社
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海原の中に突き出した島の、南国の植物が茂る中に建つ青島神社は、彦火火出見命が赴いた海原の宮はこのようであっただろうかとの想いを抱かせる。新年には数多くの初詣客を迎えるが、夏も観光を兼ねた参拝の人の姿は多い。ビロー樹の茂る林に包まれるようにして建つ朱塗りの社殿が夏の陽射しに輝く様子は、荘厳さとともに明るい躍動感を感じさせて独特の風情を醸している。
青島神社
拝殿前から右手に林の中に延びる小径がある。まるで亜熱帯の植物園のような雰囲気の小径を辿ると、ぽっかりと広場があり、小さな社が建っている。青島神社の元宮である。弥生式土器や獣骨などが出土したというから、その頃から青島は一種の霊場で、祭祀の場であったのだろう。
青島神社元宮
社務所の傍らに「玉の井」という井戸がある。傍らの解説によれば、「玉の井」とは古事記に於いて海神の宮で豊玉姫の侍女が彦火火出見命と出会う場面に描かれる泉のことであるという。

塩椎神の助言に従って海神の宮へ着いた彦火火出見命は、これも助言の通りに宮の門の傍らにある泉のほとりの桂の木の樹上で待っている。やがて豊玉姫の侍女が泉へ水を汲みにやってきて、樹上の彦火火出見命に気付く。彦火火出見命が水を求め、侍女は器を差し出すが、命は水を飲まず、器の中に自らの勾玉を入れる。勾玉は器から離れず、侍女はそれを携えて豊玉姫のもとへと戻ってゆき、勾玉に気付いた豊玉姫が侍女に「外に誰かいるのか」と問う。彦火火出見命と豊玉姫の出会いのきっかけとなる場面である。「玉の井」の「玉」は勾玉のことだろう。

「玉の井」の水は浄めの水として使われ、この水を汲みに来社する人が絶えないと解説には記されている。四方を海に囲まれた標高もほとんど無い島の直中の井戸であるのに、水には全く塩分が含まれていないのだという。解説板に依れば、対岸の山頂に海水の湧く場所があり、水源が入れ替わっているのだという伝説があるという。

参道入口の横には「日向神話館」がある。天孫降臨から神武東征までの神話の世界を十二の場面で構成し、蝋人形で再現している。宮崎には日本神話に縁の地が多いことからの観光客向けの施設だが、神話に興味のある人は見学してゆくとよいかもしれない。
青島神社青島神社−玉の井
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青島神社は、その伝説を考えれば当然のことながら、縁結びや夫婦和合などの御利益で人々の信仰を集めている。かつて宮崎が「新港旅行ブーム」に湧いた時代には多くの新婚カップルが青島神社に参拝していったものだった。今でも訪れる観光客の中には若いカップルの姿がある。神妙な様子で手を合わせる後ろ姿が、少しばかり微笑ましくもある。
青島神社−手を合わせる若いカップル
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INFOMATION
青島神社
【所】宮崎市青島
【問】青島神社
【問】宮崎市観光協会
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ページ内の写真は2015年夏に撮影したものです。本文は2015年10月に改稿しました。
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