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横浜市中区山下町
山下公園
May 2018
山下公園
山下公園は横浜の観光の中心、“みなとヨコハマ”の象徴的存在だ。市民の憩いの場である「公園」としてだけではなく、「観光地」としても「景勝地」としても成立していると言っていい。山下公園は大桟橋の入口から山下埠頭までのおよそ1キロメートルの長さで海岸に面しており、面積は約7万平方メートルを有する。中華街、元町山手など、横浜の有名な観光スポットにも近く、そういった意味でもまさに横浜の観光の拠点となる公園だ。
山下公園
山下公園が開園したのは1930年(昭和5年)のことだ。関東大震災からの復興事業のひとつとして整備された公園のひとつだった。震災被害の瓦礫や焼土で海岸部を埋め立てて造成、日本で最初の臨海公園として誕生したのだ。

1923年(大正12年)9月1日に起きた関東大震災は、横浜の市街、横浜港にも壊滅的な被害をもたらしたが、1925年(大正14年)に横浜市長に就任した有吉忠一によって復興事業が強力に推し進められたという。道路の整備、河川運河の整備、橋梁の整備、学校・病院の新設・改築と並んで、公園事業もまた復興事業の急務とされ、神奈川公園野毛山公園横浜公園、山下公園の四公園がこの時に整備されている。

山下公園
山下公園の開園はまさに震災からの復興を象徴するものだったのだろう。開園から五年後の1935年(昭和10年)には震災からの復興を祝う復興博覧会が盛大に行われた。園内には数々の展示物が建ち並び、公園中央部の舟溜まり(現在はバラ園となった沈床花壇は開園当時、舟溜まりだった)にはクジラが入れられたりして、大いに賑わったのだという。

山下公園
第二次世界大戦後はアメリカ軍によって接収されたが、1954年(昭和29年)から少しずつ返還され、整備・改良を経て、1961年(昭和36年)には再整備が完了、ほぼ現在の姿となった。1988年(昭和63年)に行われた横浜博覧会の際には東側の地下駐車場とその上部の「世界の広場」などが整備、2002年(平成14年)春には公園西側に残っていた旧臨港鉄道高架跡を利用して「山下臨港線プロムナード」が整備され、これによって山下公園と新港地区とが遊歩道で結ばれ、周辺の散策がより楽しめるものになった。またこのプロムナードは臨港部を辿る「開港の道」という散策ルートの一部で、山下公園もまたこのルートに含まれることになった。2016年(平成28年)には沈床花壇が「未来のバラ園」と名付けられた本格的なバラ園としてリニューアルされるなど、以後も園内の随所で改良が続けられて今日に至っている。
山下公園
山下公園
山下公園は有名な横浜の観光名所とあって、休日はもちろん平日であっても多くの人出で賑わっている。家族連れやカップル、修学旅行らしい学生たちと訪れる人も多種多様だ。近年は海外からの旅行者も少なくない。平日のお昼時から午後などには地元らしい人の散歩する姿や休憩中の会社員の姿などがあるのは、やはり市民の憩いの場としての公園の役割を担っているからだろう。気軽な服装で散策を楽しむ外国人の姿も少なくないのは、横浜という土地柄か。

山下公園
横浜港を臨む山下公園は、何と言ってもその旅情を誘うような風情がいい。潮の匂いを感じながら岸壁に沿った園路を辿れば山下公園の魅力を存分に味わうことができるだろう。園路脇には海に向かってベンチが並んでいる。ベンチに腰を下ろし、港を行き交う船の姿を眺めながら時を過ごすのもいい。西側に視線を向ければみなとみらい地区のビル群が見える。いかにも横浜らしい風景だ。岸壁に立って少し右手を見れば横浜ベイブリッジの姿を望み、その右手には氷川丸の美しい姿がある。

山下公園
西側には広くはないが芝生の広場があり、芝生の木陰にシートを広げてくつろぐ人の姿も多く、いかにも「公園」的雰囲気だ。東側には氷川丸が係留され、その横手にはシーバスの発着所があり、マリンタワーや元町にも近く、観光地的な雰囲気が色濃くなるが、そうした雰囲気もまた賑やかで楽しい。東端には水の流れを組み合わせた階段があり、その上は「世界の広場」で、特徴のある造形が楽しい。

山下公園
氷川丸は山下公園の一部であるかのように風景の中に溶け込んでいるが、日本郵船株式会社の経営による施設で山下公園とは管理が異なる。氷川丸とマリンタワーは45年間に渡って氷川丸マリンタワー株式会社が経営していたが、同社は2006年(2006年)12月31日付けで解散となり、マリンタワーは横浜市へ、氷川丸は前述のように日本郵船株式会社へ譲渡されている。氷川丸は2008年(平成20年)4月25日に「日本郵船氷川丸」として、マリンタワーは2009年(平成21年)5月23日、横浜開港150周年に合わせて「横浜マリンタワー」としてリニューアルオープンを迎え、現在に至っている。

山下公園
氷川丸の前辺りには以前からあった沈床花壇を利用して「未来のバラ園」と名付けれたバラ園が設けられている。沈床花壇は開園当初は舟溜まりだったところを後に埋め立てて花壇としたもので、四季の花々を楽しめる花壇として長く親しまれてきたが、2016年(平成28年)にリニューアルされ、本格的なバラ園として生まれ変わっている。園内を埋め尽くすように咲き誇るバラは見事なもので、横浜のバラの名所のひとつとして人気を集め、見頃の時期には多くの観賞客で賑わっている。

山下公園
園内には有名な「赤い靴はいてた女の子」像をはじめとして、園内にはさまざまな野外彫刻やモニュメントが点在しており、それらをそれぞれのエピソードとともにひとつひとつ見て歩くだけも楽しい。また随所に花壇が設けられ、バラの他にもさまざまな花を楽しむことができるのが嬉しい。

山下公園
横浜港を眼前に臨む臨海公園としての風情に、横浜という土地柄の持つ情緒が加わり、山下公園の魅力は唯一無二、他では味わうことのできない魅力を持っている。横浜の観光名所であり、風景の美しさは景勝地としての魅力も第一級、横浜観光の際には必ず訪れておかなくてはならないところだと言っていい。もちろん観光目的以外で訪れてもいい。何度訪ねても、飽きることはない。足早に園内を巡るのではなく、のんびりと時を過ごすのがお勧めだ。散策を楽しんだ後はベンチに腰を下ろし、港を行き交う船や、湾の向こうに見えるベイブリッジを眺めて時を過ごそう。それが山下公園の魅力を最も堪能できる方法だからだ。
山下公園
最寄り駅はみなとみらい線の元町・中華街駅で、1番出口、あるいは4番出口から徒歩約3分だ。みなとみらい線日本大通り駅の2番出口や3番出口からでも徒歩10分かからずに着く。JR根岸線の関内駅や石川町駅からは、どちらも徒歩で20分ほどだが、のんびりと散策を楽しみながら来れば距離を感じることはないだろう。駐車場は公園駐車場をはじめ、近隣にも多く点在している。市営バスを使うのなら「山下公園前」というバス停だ。横浜駅からシーバスで訪れるのもまたお勧めしたいコースだ。

中華街にも近く、他にも公園近くにさまざまなレストランがあるので食事には困らないが、芝生の広場でお弁当を広げるというのもまた楽しい。決して静かではないし、自然溢れる公園というわけでもないが、山下公園の広場での“青空ランチ”は他では味わえない魅力があってお勧めだ。
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