佳景探訪
桜島フェリー
鹿児島市中心市街と桜島との間を桜島フェリーが繋いでいる。航行時間は15分ほど、24時間運行のフェリーだ。地元の人たちの日常的な交通機関だが、観光客の利用も多い。残暑の八月、桜島フェリーに乗った。



桜島フェリー

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鹿児島市の中心市街と桜島とは錦江湾によって隔てられているが、その距離はわずかに4kmほどしかない。それを桜島フェリーがひっきりなしに往復して繋ぐ。桜島フェリーは鹿児島市船舶局による運営、すなわち“市営”で、垂水市と鹿児島市を結ぶ国道224号の海上区間でもある。昼間は15分間隔、夜間は1時間間隔で、6隻の船舶が一日70往復(140便)の24時間運航を行い、年間の延べ数で500万人を超える旅客と150万台を超える車両を運搬している(2014年現在)。

人口の規模に比して輸送量が多いのは、鹿児島市中心部と大隅半島側とを繋ぐ最短ルートだからだ。桜島フェリーの航行時間はわずかに15分、特に大隅半島側の垂水市や鹿屋市、志布志市方面と薩摩半島の鹿児島市中心部周辺とを行き来する場合、桜島フェリーを利用した方が、陸路で錦江湾北岸を回るより圧倒的に近く、早いのだ。昼間は10〜15分間隔で運航しているから、出港時刻を気にすることなく、とりあえずフェリーターミナルに行けば、少し待つだけで(あるいは、ほとんど待つことなく)乗れるという気軽さだ。例えて言えば、都市圏で“とにかく駅に行って、来た電車に乗る”という、あの感覚に近い。

桜島フェリーは、そもそもは1934年(昭和9年)に当時の西桜島村の生活航路、通学航路として運営を開始したものという。1973年(昭和48年)に町制が施行されて桜島町となった旧西桜島村は2004年(平成16年)に鹿児島市に編入され、その際に桜島町(旧西桜島村)が運営していたフェリー事業が鹿児島市に引き継がれ、現在の鹿児島市船舶局運営の桜島フェリーとなったものだ。

現在の桜島フェリーは国道224号の海上区間として大隅半島と薩摩半島を繋ぎ、鹿児島県の交通の大動脈を担いつつ、観光客の利用も多く、鹿児島の観光にもなくてはならないものと言っていい。そしてまた、桜島フェリーは桜島の大噴火が起きた際の島民の避難船としての重要な役割も持っている。桜島島内には20ヶ所ほどの避難港が設けられており、そこへ集結した島民を鹿児島市街側へと避難させるための船舶として桜島フェリーも使用されるのである。

実際に車で桜島フェリーの定期航路を利用すると、料金の支払いも簡便で、航行時間も短く、一般的なカーフェリーの感覚ではなく、いわば“有料の動く橋梁”とでも言うべき印象だ。

乗船料金は桜島港での支払いだ。桜島港から乗船する場合は乗船前に、鹿児島港から乗船する場合は下船後に、通路上に設けられた料金所のゲートで、窓越しに(車から降りることなく)支払う。有料道路や駐車場の料金所の感覚に近い。一般的なカーフェリーでは出港時刻より早めに発着所に行って待機所に車を停め、待ち時間の間に車検証を携えて窓口へ行き、乗船券を購入しなくてはならないものだが、そうした手間は必要ない。何しろ昼間は10〜15分間隔での運航、手際よく乗船させなければ航送の量を処理しきれないのだろう。鹿児島港からの利用の場合、料金の支払いをすることなく乗船してしまうわけで、初めての人は戸惑うこともあるようだ。

航行時間はわずかに15分、地元の人たちは乗船中も車から降りず、運転席に座ったままでフェリーが着くのを待っている(その場合、フェリーの利用に際して一度も車から降りることがなく、まさに“動く橋梁”感覚である)。車から降りて船内客室に向かうのはもっぱら観光客だ。

観光客の立場で桜島フェリーを利用したなら、やはり船上からの眺めを楽しんでおきたい。船上から眺める桜島や鹿児島市街、そして錦江湾岸の景色は美しく、潮風に吹かれながら景色を眺めるのは旅の愉しみを感じるひとときだ。

鹿児島港から桜島に向かうフェリーに乗れば、眼前には桜島が徐々に近づき、振り返れば鹿児島港が遠ざかって、その周囲に鹿児島市街の景観が広がる。桜島港から乗れば、桜島に見送られるようにして鹿児島市街が近づいてくる。朝方に乗れば桜島はなかばシルエットになって、鹿児島市街は日に照らされて輝く。午後に乗れば桜島の姿がくっきりと浮かび上がり、鹿児島市街は逆光の中に霞み、錦江湾が日差しを弾いて煌めく。夕暮れになれば残照を浴びる桜島も美しく、薄闇の中に灯り始める鹿児島市街の街灯りが旅情を誘う。船上からの眺めは季節や時刻によってさまざまな表情を見せる。それぞれの魅力を味わっておきたい。

桜島フェリーの定期航路は地元の人たちにとっては錦江湾を横断するための日常的な交通機関だが、観光に訪れた人たちにとっては鹿児島市街と桜島とを結ぶという航路自体がひとつの観光の対象と言っていいのではないか。錦江湾を往くフェリーの上から眺める桜島を、鹿児島に訪れたときにはぜひ楽しんでおきたい。たった15分の船旅だが、素敵な船旅である。
参考情報
桜島フェリーの運賃は車での利用も旅客のみの利用も桜島港での支払いになる。桜島港から利用する場合は運賃を支払って乗り込み、鹿児島港ではそのまま外へ出て行く。鹿児島港から利用する場合は、そのままフェリーに乗り込み、桜島港へ降りた後に支払う形だ。

桜島港に設けられた車両用の料金所は有料道路や駐車場の料金ゲートのようなシステムと同じで、ゲートで停車して窓越しに支払う。車から降りる必要はない。一般的なカーフェリーのように待機所へ車を停めておいて車検証を携えて発券窓口へ行き、料金を支払って乗船券を購入した後に乗船する、という利用方法ではない。ちなみにETCには対応していない。

旅客のみの利用の際も、桜島港フェリーターミナルに設けられた料金ゲートで、乗船時に、あるいは下船時に支払う。路線バスなどの運賃の前払いと後払いに似ているかもしれない。

桜島フェリーは定期航路の他、観光客向けの「よりみちクルーズ」や「納涼観光船」などの運航も行っている。貸切も可能のようだ。その他、利用方法等の詳細、運賃、時刻表等については鹿児島市船舶局による公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

鹿児島港のフェリーターミナルは鹿児島市街の北寄りに位置している。旅客のみでの利用の場合、鹿児島中央駅前から市電や路線バス、周遊バスを使うといい。市電なら「水族館口」電停で下車、徒歩5分ほど。バスは「水族館前」で下車すれば目の前がフェリーターミナルだ。車での利用の場合は、乗船口へのアプローチが初めての人には少しばかりわかりにくいので注意されたい。遠方から車で訪れる場合は国道3号線や国道10号線、九州自動車道などを利用して鹿児島市街へ向かい、フェリーターミナルを目指せばいい。

桜島港のフェリーターミナルは桜島の西岸に位置している。桜島南岸を辿る国道224号線を西進すればいい。車で利用する場合も乗船口はわかりやすいので迷うことはないだろう。宮崎県側から車で訪れる場合は国道10号線や国道220号線を辿って錦江湾の東岸を経由し、桜島へ向かうのがよいだろう。

フェリーターミナルまで車で行き、フェリーには旅客のみ乗船する場合は、フェリーターミナル近くの駐車場へ車を駐めておけばいい。

飲食

桜島フェリー内には「やぶ金」という有名な立ち食いうどんの店がある。約15分の船旅なので急いで食べなくてはならないが、利用してみるのもいい。

桜島港のフェリーターミナルには飲食店はなく、「桜島レストハウス」や「道の駅桜島」、「国民宿舎レインボー桜島」などのレストランなどへ足を延ばさなくては食事のできるところがない。鹿児島港のフェリーターミナルには小さな飲食店が2、3軒入っているが、フェリーターミナルを出て「ドルフィンポート」などへ足を延ばせば選択肢が増えるだろう。

周辺

鹿児島港のフェリーターミナルのすぐ横には「いおワールドかごしま水族館」がある。フェリーターミナルから南へ少し歩けばウォーターフロントパーク、パーク内からの桜島の景観が素晴らしい。水族館前の道路は周遊バスの路線に当たっている。周遊バスを利用すれば、鹿児島市内の観光に足を延ばすにも便利だ。

桜島港フェリーターミナル近くには桜島ビジターセンターや「溶岩なぎさ公園」、「溶岩なぎさ遊歩道」などがあり、これらは徒歩で巡ることのできる範囲だ。サクラジマアイランドビューと呼ばれる市営周遊バスを利用すれば烏島展望所や湯之平展望所も巡ることができる。車で訪れたならさらに行動範囲が広がるから、桜島東岸に位置する黒神埋没鳥居を訪ねたり、桜島を一周してみるのも楽しい。
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