幻想音楽夜話
Birdland / The Yardbirds
1.I'm not talking
2.Crying out for love
3.The Nazz are blue
4.For your love
5.Please don't tell me 'bout the news
6.Train kept a rolling
7.Mr. Saboteur
8.Shapes of things
9.My blind life
10.Over under sideways down
11.Mr. you're better man than I
12.Mystery of being
13.Dream within a dream
14.Happenings ten years time ago
15.A original man (A song for Keith)

Jim McCarty : drums, percussion and background vocals.
Chris Dreja : energy, rhythm guitar and precussion.
Gypie Mayo : lead and rhythm guitars.
John Idan : lead vocals, bass and rhythm guitars and background vocals.
Alan Glen : harmonica.

Guest appearances
Jeff 'Skunk' Baxter on "The Nazz are blue"
John Rzeznik on "For your love"
Joe Satriani on "Train kept a rolling"
Steve Vai on "Shapes of things"
Jeff Beck on "My blind life"
Slash on "Over, under, sideways, down"
Brian May on "Mr. you're better man than I"
Steve Lukather on "Happenings ten years time ago"
Martin Ditchum plays percussion on tracks 1,2,4,5,7,10,12,13 and 15
Simon McCarty plays percussion on track 9

Produced by Ken Allardyce.
2003 Favored Nations LLC.
Thoughts on this music(この音楽について思うこと)

 正直に言ってあまり期待はしていなかった。ヤードバーズが「復活」してアルバムを発表するというニュースを目にしたときのことだ。1960年代から1970年代にかけて活動した有名バンドの、時を経ての「再結成」に少々食傷気味になっていたということもあった。しかも今回は、「あの」ヤードバーズだ。エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジを輩出した重要バンドであるとは言え、彼らが復活したヤードバーズに参加するとも思えず、キース・レルフは既に故人となり、ヤードバーズの「復活」に何の意味があるのか。聞けばオリジナル・メンバーはジム・マッカーティとクリス・ドレヤのふたりだけというではないか。しかし、まぁ、それでも「ヤードバーズ」の名で発表される「新譜」ということであれば、手元に購入して聴いてみようかという気にはなった。期待外れなら期待外れで、それはそれでいいではないか、と。ところが、実際に購入して聴いてみると、これがなかなか悪くない。いや、悪くないどころではない。かなり、いい。

節区切

 ヤードバーズというバンドについて、ここでは詳しく述べない。1960年代に活動したブルース・ロック/ブリティッシュ・ビートのバンドで、若い頃のエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジが在籍したことで知られ、ロック・ミュージックの歴史に於ける最重要バンドのひとつと見なされているということだけ、ヤードバーズを知らない人たちのために記しておこう。ヤードバーズのメンバーたちのその後についてもさまざまなエピソードがあるが、それもここでは省略したい。

 ジム・マッカーティとクリス・ドレヤのふたりが「ヤードバーズ」を名乗る新バンド結成に向けて構想を温め、その実現に向けて動き出したのは1990年代に入ってからのことのようだ。この辺りの経緯はCDに付けられた大友博氏の解説に詳しいが、それに依ればこの「新生ヤードバーズ」がライヴ活動を開始したのは1996年のことだという。ということは、このアルバムが発売された2003年時点ですでに、この「新生ヤードバーズ」として7年のキャリアを積んでいたことになる。バンドのメンバーはジムとクリスの他、リード・ヴォーカルにジョン・アイダン、ハーモニカの担当としてアラン・グレン、リード・ギタリストにはドクター・フィールグッドに在籍した経験を持つジピー・メイヨというミュージシャンたちだ。ライヴ活動を開始した「新生ヤードバーズ」は次にはアルバムのリリースを目指すわけだが、しかしなかなかチャンスを掴むことはできなかったようだ。「ヤードバーズ」がかつての有名バンドだったとは言え、オリジナル・メンバーはリズム楽器を担当するふたりだけ、これといって話題性もなく、商業的な観点から見れば「商品価値」の高いバンドとは言い難い。レコード会社がアルバムのリリースに難色を示すのも無理はなかったろう。その「新生ヤードバーズ」に手を差し伸べたのがスティーヴ・ヴァイであったという。有名ギタリストたちの客演といったアイデアもスティーヴ・ヴァイの発案であったらしい。そうして出来上がった「ヤードバーズ」の「新作」はスティーヴ・ヴァイ自身のレーベル「Favored Nations」から2003年に発表されることになる。

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 発売された「ヤードバーズ」の35年振りの「新作」、「Birdland」を聴いて驚いた。「こりゃぁ、ヤードバーズだよ」と。当たり前じゃないかという声が聞こえてきそうだが、考えてもみて欲しい。ジム・マッカーティとクリス・ドレヤというふたりのオリジナル・メンバーが中心になって結成されたとしても、リード・ギタリストとヴォーカリストという、いわばバンドの「顔」とでもいうべきメンバーに新しいミュージシャンを迎えたバンドだ。そしてまた、かつてのヤードバーズからは30余年を隔て、ジムとクリスのふたりもそれなりに年齢を重ねている。たとえ「ヤードバーズ」を名乗るバンドであったとしても、まったく新しい別のバンドに生まれ変わり、その音楽性も大きく違っているだろうと考えるのが当然ではないか。ジムとクリスが重ねた年齢に相応しく、「枯れた」味わいのブルース・ロックを聴かせるバンドであるかもしれない。あるいはジムとクリスのふたりは「裏方」に徹して若いミュージシャンたちにリーダーシップを任せた現代的なバンドであるかもしれない。そんな勝手な想像があった。ところがそうではない。ヤードバーズである。これはもう、ヤードバーズの音以外の何物でもない。もちろん細かな事を言えば1960年代のオリジナル・ヤードバーズとの違いはさまざまにある。しかしその音楽の佇まいそのものは、紛れもないヤードバーズなのだ。

 そのことを否定的に考えるファンももちろんあるだろう。この「新生ヤードバーズ」を、ジムとクリスによって造られた、「オリジナル・ヤードバーズのコピー・バンド」だと見なすこともできるだろう。30余年を経たというのに何の進歩も見当たらない、懐古趣味的な時代錯誤のバンドだと見なすこともできるだろう。しかし、それでいいではないか。この「新生ヤードバーズ」は、「ヤードバーズらしく在る」ことにこそ、意味があるのだ。そうした在り方の根底には、1960年代の「オリジナル・ヤードバーズ」に対する限りない敬愛の念があるような気がする。かつてヤードバーズのヴォーカリストだった故キース・レルフ、プロデューサーに転身したポール・サミュエル=スミス、そしてリード・ギタリストを歴任したギタリストたち、アンソニー・トッパム、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、そうしたミュージシャンたちへの、そして何よりヤードバーズというバンドそのものへの敬愛の念が、この「新生ヤードバーズ」の音楽の奥底に脈打っている気がする。スリーブに記された「The Yardbirds would like to dedicate this album with affection to Top Topham, Eric Clapton, Jeff Beck, Jimmy Page, Paul Samwell-Smith and the late Keith Relf.」の一文がすべてを物語っているではないか。

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 このアルバムの制作に当たって、現在の著名なギタリストたちの客演による往年の有名曲の再演が行われているが、これには商業的な観点からの話題作りの意味合いもあっただろうが、それ以上にオリジナル・ヤードバーズに対する「Tribute」的な意味合いが大きいに違いない。客演したギタリストたちも、彼らの参加によって再演された楽曲も、錚々たるものだ。ジェフ・バクスターの参加した「The Nazz are blue」、ジョー・サトリアーニによる「Train kept a rolling」、スラッシュが参加しての「Over, under, sideways, down」、「Mr. you're better man than I」にはブライアン・メイ、スティーヴ・ヴァイ自身も「Shapes of things」に参加、さらにスティーヴ・ルカサーが参加して「Happenings ten years time ago」まで演奏している。どの楽曲もヤードバーズを代表する有名曲、ちょっとした「Best of Yardbirds」といったところだ。皆、きっとこれらの楽曲の演奏は楽しかったに違いない。そんな様子がこちらにも伝わってきて聴き応え充分、どの楽曲も素晴らしく「かっこいい」仕上がりだ。

 この他に「I'm not talking」と「For your love」の2曲を再演している。「For your love」にはグー・グー・ドールスのジョン・レズニックがヴォーカルで参加しており、「I'm not talking」だけが「新生ヤードバーズ」のメンバーのみによる再演だ。この「I'm not talking」がとてもいい。有名ギタリストたちを迎えての名曲群の再演ももちろん素晴らしいものだが、「新生ヤードバーズ」のメンバーのみによる「I'm not talking」こそは、このアルバムの中でもある意味で最も注目に値する一曲であるかもしれない。

 再演された1960年代の楽曲群はどれもほぼオリジナルに忠実なアレンジで演奏され、特に新たな解釈やアレンジが施されているわけではない。それもまた魅力的だ。ゲスト参加したギタリストたちがそれぞれに何を思いながら演奏したのか、想像以外に知る術はないが、案外エリック・クラプトンやジェフ・ベック、そしてジミー・ペイジになりきって、彼らに憧れていた少年時代を思い出しながら演奏していたのかもしれない。聴いていても、そんな楽しさがある。それぞれのギタリストの演奏の「はじけっぷり」が、何とも楽しい。

 そして何と、このアルバムには他ならぬジェフ・ベックも参加している。ジェフ・ベックが参加しているのは「My blind life」、新曲である。新曲のレコーディングにジェフ・ベックが参加するというのはスティーヴ・ヴァイの采配だろうか。なかなか心憎いという気がする。かつてジェフ・ベックがヤードバーズに在籍していた当時の楽曲の再演にジェフ・ベックが参加というのでは、やはり少々興醒めだったろう。この「My blind life」がなかなかいい。ジェフ・ベックのギターは控えめなほどだが、あくまで「新生ヤードバーズ」に対するサポートに徹したと見るべきか。

 それらを除く楽曲群、「Crying out for love」、「Please don't tell me 'bout the news」、「Mr. Saboteur」、「Mystery of being」、「Dream within a dream」、「A original man (A song for Keith)」が「新生ヤードバーズ」のメンバーのみによってレコーディングされた新曲だ。これらの楽曲がなかなか素晴らしい。現代的でありながら往年のヤードバーズの佇まいを持っている。徒に時流に迎合することなく、彼らの信じるに足る音楽を演奏しているのだという自負が感じられて、聴いていてもその潔さが伝わってくる。アルバムの最後に収録された「A original man (A song for Keith)」はそのタイトルからもわかるが、故キース・レルフに捧げられた楽曲だ。そのせいか、少々沈痛な表情も見せる曲想だが、キース・レルフに対する想いが伝わってきて聴き応え充分だ。

節区切

 このアルバムに対する評価はそれぞれにあるだろう。特に1960年代の「オリジナル・ヤードバーズ」を愛するファンにとって、もしかするとあまり歓迎したくないものであるかもしれない。あるいはまったく興味の持てないものであるかもしれない。そうした気持ちもわかるし、その理由も想像に難くないが、敢えてここではそれについて言及しないし、反論もしない。ただひとつ助言めいた提案がある。あまり難しく考えることはないのではないか、と。例えばこのアルバムを車に持ち込んでドライブのBGMとして聴いてみるといい。これがなかなか楽しい。聞こえてくる楽曲に合わせて、思わず一緒に口ずさんでいたりする。そんな楽しみ方でよいのではないか。

 新生ヤードバーズとして活動するジム、クリス、そして新しいメンバーたちによる新曲群、ゲスト・ミュージシャンを迎えて再演された有名曲、どの楽曲もおそらく演奏する彼ら自身が楽しんでいたのではないかと、そんなふうに思う。そうであれば、それを聴く我々もまた、一緒に楽しめばよいではないか。「Train kept a rolling」や「For your love」を一緒に口ずさみながら、そして魅力的な新曲の数々を聴きながら、思う。がんばれ、ジム、クリス、がんばれ、ヤードバーズ、応援するぜ、と。